第18話 バッドエンドのラウラとアーベル

 私は元々没落伯爵家の娘で平民落ちしてしばらくは平民として過ごしていた。私は美少女で何人もの異性に目をつけられたが皆不細工ばかりだしお金もない平民に身体を許すはずもなく徹底して純潔は守り通してきた。


 そこにファインハルス侯爵様の馬車に轢かれそうになり、侯爵様は手当てをし、私の身の上話を聞き、不憫に思い、


「それならば…一旦うちの養女になり…もし引きこもりの息子の婚約が上手く行かなければ君は息子の妻になってやってくれ…」

 と言われた。侯爵家の養女なんて!夢のよう!!なりますとも!!


 と私はちゃっかり養女になり何とかその引きこもりの義兄に会わせて貰うことにした!金持ちなら例え少しくらい変な顔でも仕方ないから我慢しなくてはね!!


 と思っていたが引っ張るようにお義父様に連れられて来たのはとても美しい顔をした方で…目は死んでいたけどそんなの気にならない。

 私は初めて恋をした。な、この方が将来私の旦那様になるんだわ!!と心が燃え上がった。

 だが、ケヴィンお義兄様は私を見て一瞥し、すぐになんの興味も無くした。


 え?私…かなり美少女よね?そんなはずないわ。きっと照れているんだわ。ふふ、奥手で可愛いお方!

 それからも私は他のメイド達を押しのけ扉の前で食事を持ち声をかける。

 全く返事がない。


 そんなお義兄様はある日婚約相手にとうとう会うことになりお義父様が無理矢理お義兄様を部屋からなんとか出して連れて行ってしまう!


 くっ!大丈夫!私の方が可愛いのよ!婚約相手なんかに取られないわ!私にも見向きもしないんだから他の女にもきっと…。


 しかしお義兄様はその婚約者と会われてからあんなに出なかった部屋を出ていそいそと公爵家へお茶会へ向かったりした。

 なんてことなの?きっと相手が公爵家のご令嬢だからだ!!くっ!!私の心は煮えたぎった。そしてお義兄様を手に入れるならと高い媚薬を買い、お料理に仕込み男の従者に持って行かせて扉の前に置いた。


 お義兄様は男の従者が運んだものは何とか口にしていたので油断しているだろう。そしてお義兄様は部屋から出なくなった。あの女の所にも行けないし後は私の声を聞かせ続ければ…と笑う。


 しかし我慢しているのかお義兄様が中々出てこない。そこへ…あの女がやってきた!何だやはり私の方が美しい!!こんな大したことない女を家に通すわけには行かない!!

 私は必死で止めるがあんなに部屋から出なかったお義兄様が階段上で


「エル!来い!突破しろ!」

 とか言ってあの女は私に体当たりしてお義兄様のところへ行ってしまい二人でお部屋に篭る。

 私は何度も扉を叩いた。枯れるまで叩き続けた。でも二人は何時間も出てこなくてようやく出てくると二人とも手を繋いで仲良くなっていたし私は青くなった。


 しかも私が手伝ったとか言われてショックだった。



 *

 あの女とお義兄様の仲はますます良いようだ。くやしい!お義兄様のハジメテを奪ったあの女が憎い!私は新しいお義兄様の従者を雇うことにした。この男…アーベルはお義兄様程ではないけど女遊びをして慣れていそうだった。私を見ると少しぼうっとなっていた。

 ふ、惚れたわね…。こうなると私はアーベルに


「ねぇアーベル。私とお義兄様が結婚したら貴方…私の愛人にならない?」

 そう持ちかけてお義兄様とあの女の旅行に同行させ、何とかあの女を強姦してくるように言いつけた。流石に浮気させてやればお義兄様の目も覚めるだろう!


 しかし…旅行から帰ってきて嬉々として聴くとお義兄様は行方不明でそれどころじゃなかったとアーベルが言い、悲しむ私に優しく肩を抱き寄せてなんと口付けしてきた!

 そして何かを口移しで飲ませる。


「アーベル!?何を飲ませっ…はっ…」

 どうしたことだろう?アーベルが…とても素敵に見えた。胸が高鳴る。


「……ラウラ様…私を見てください…貴方はどんな女より美しいのです!!」

 当然だわ。でもアーベルにそう言われて嬉しいと感じている…なんなのこれは?


「ラウラ様っ!お許しくださいねっ…」

 と言われてキスされそれがとても気持ちよくて私はアーベルに処女を捧げた。


 それからもお義兄様が見つからずあの女が弱っていってるのに密かに私とアーベルは愛し合いメロメロになっていった。

 もうお義兄様なんてどうでもいいわアーベルといられればと思ってしまう。


 アーベルと婚約もしてしまう。アーベルのお給料なら充分私を養えるだろうし。


 するとお義兄様は帰ってきたらしく、あの女とも仲直りしたようだ。結婚の準備を進めているらしい。勝手にしろ。私にはアーベルがいる。

 と今日はお義兄様自慢の温室がとても綺麗なので鍵を拝借してアーベルを誘った。


「不味いですよ!ここはケヴィン様の温室ですから、見つかれば怒られます!使用人仲間でもここは入るなと言われて…」

 しかしアーベルが何か言う前に口を塞ぎ愛し合い始めるとアーベルもどうでもよくなって愛し合う。

 するとその時突然冷たい水が私達に降りかかりお義兄様が怒りで立っている。後にはあの女。

 ああ、お義兄様もここで愛し合いたかったのに先に私達がいたから?

 地べたで怒鳴り声で説教してくるお義兄様に私は自分達も後でするくせに!と思った。


「アーベル続きはお部屋で…お義兄様ごめんなさい」

 と適当に理由をつけてアーベルと去ってお部屋で続きをする。情事の後の朝も朝ご飯を運んできたメイドから朝食を受け取り二人で食べると死ぬほど辛い味で死ぬかと思ってすぐお水を飲むとそれも物凄く辛くて


「ひっいっ!!!」


「うがあっ!!くっ!!」

 とアーベルと二人で苦しんだ。二人で床を転がる所をメイドが駆けつけて素っ裸だったのでもはや恥ずかしくて仕方ないし、直ぐに噂が立ってお義父様に呼び出され、申し訳ないが出て行ってくれと言われる。こんな恥さらしの娘は置けないと言われてアーベルもクビになり、私達は結局庶民へと戻った。

 しかしアーベルは私を捨てずに


「母の所に行きましょう!一生幸せにしますし、ちゃんと働き口を探します!貧乏でも私と一緒になってくださいますか?」

 と言われた。

 私は涙を浮かべた。


「ええ、お金なんてどうでもいいわ…ファインハルス家も。アーベルさえいれば何もいらないわっ!!」

 と私とアーベルは幸せに結ばれる。


 ……はずだったが、尻軽のアーベルは街に戻ると女と浮気しまくった。私に惚れていたんじゃないの!?私はアーベルとしか身体を許さなかったのに!!酷い!!お金を失い愛も失い私に残っているのはこの身体一つ…。

 もはやプライドは無く、私は少しでも金持ちを捕まえる為に高級娼館で働くことにした。

 なるべくお金持ちの相手しかせず、なんとか玉の輿を狙っている日々を過ごすのだった。

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