第16話 婚約者ととうとう結婚します

 私の体調はすっかり回復して結婚準備を始め、ドレス合わせや仕上がりを待ち、そういえば婚約指輪貰ってないことに気付いて私が死んだ目になると慌てて買ってきたケヴィン様は謝罪して指に嵌めた。


「何と言うか…普通プロポーズの時に用意するものなのに…」

 と文句を言うと死んだ目になり


「だって、私前世女だったから…指輪を自分で買ってあげるって発想忘れてたのよね」


「ええ?忘れます??」


「じゃあ、エルも来世男に生まれ変わってみなさいよ…忘れるって。普通女は貰うものなのよ」

 うーん…そういうものかな?


「それにあの時エルガリガリだったから指輪のサイズも先にあげたらまた後で調整することになるでしょ?」


「あ、確かに」

 とキラリと光る指輪を見た。


「あら嬉しそうね、羨ましい」

 とケヴィン様は言う。まぁ女の子の憧れの一つですしね。


「ふふふ…好きな人から貰う婚約指輪なんて嬉しいに決まっていますわ」


「…………」

 するとケヴィン様は私を抱き寄せて


「そういう事を言うとかなり…クルからやめてくれエル…結婚まで待てなくなるよ」

 と軽いキスをする。それから額を合わせて


「すみません、ケヴィン様…。野獣になるのは結婚後にしてくださいね…」

 と言うと死んだ目になられました。


「雰囲気台無しなんだけど…人をケダモノ呼ばわりする婚約者がどこにいるのよ」

 と女口調に戻った。


「はぁ、ここにいますよ?このケダモノ」

 と言ってやるとこいつめ!と言われてくすぐられた。女の子同士がよくやるじゃれあいの一つだった。

 結局女の子のケヴィン様も好きだし男のちょっとかっこつけて本能剥き出しのケヴィン様も私どっちも関係なく好きですわ。


「ウェディングドレスもね、前世で私着ること無かったのよね…だからエルが着て幸せになってね?」


「幸せにするのあなたですけどね」


「ええそうだったわ…ゴホン…幸せにするよエル…きちんとね……じゃあちょっと胸触っていい?ドレスのサイズ本当に大丈夫かどうかチェックを…」

 と言うから頰をぶっ叩いておいた。

 死んだ目になり


「酷い…服の上からならと思ったのに」


「見えすいた痴漢ですわ…」


「恋人なのに痴漢は酷い」

 と言い合い最終的に一回だけモミっとさせてやったら


「やっぱり小さくてかわ…」

 と言ったからもう一回ぶっ叩いておきました。

 小さいは余計です!


 *

 結婚式当日はゴット様も笑い、お父様は泣き、お姉様二人もそれぞれの婚約者と夫と参列し笑顔で祝福し、私はケヴィン様とヴァージンロードを歩いていく。


 死んだ目をした婚約者様といろいろありましたがこの日を迎えられて私は嬉しいです。

 ケヴィン様の目は今日は死んでなくて参列者の女性たちも色気溢れるケヴィン様に釘付けですから、結婚してもこりゃ、媚薬盛られないように気を付けてほしいですわ。


 誓いの宣誓が終わり、指輪を交換して軽くキスをして私達は皆から拍手されて披露宴の席に着く。ケヴィン様はお父様からお酒をどんどん注がれていく。そして死んだ目になり青くなる。

 まさか、と思いつつ、ちょっと二人でお色直しと席を外すと案の定酒に弱くめっちゃ吐いていた……。


「ええ?何で断らないんですか!?」


「だって…お義父様に注がれて断れないよ…後、そんなことしたらうちのクソ親父にも殴られる。あいつなら披露宴でも遠慮なく息子を殴る」

 と言い出した。


「今は二人だし無理して男言葉じゃなくともいいのですよ?」


「いや、今日はずっと男の方で行くから…終わったら初夜だし…」

 とニヤリと言われて赤くなる。


「このドスケベ」

 と言うとケヴィン様は


「いや、それに関しては違うよ、結婚してる人は皆同じことしてるね、皆ドスケベになる」

 と正論を言われて


「ぐうっ…」

 と言うと笑われてお色直しを済ませてまた披露宴に戻り皆と騒いだ。


 ようやく披露宴も終わりお部屋でぐったりしているケヴィン様。疲れ果て目が死んでいます。


「お疲れ様です、紅茶をどうぞ」

 と差し出すとガブガブ飲んで、


「緊張した。今日一日中…エルは最高に綺麗だったし」

 と言うから照れました。ケヴィン様もとてもカッコ良かったのに。絶対今日で敵ができました。


「そう言えばラウラ様はやはり来なかったですね」


「そりゃねぇ…あいつらエルが衰弱してた時もイチャイチャしてて節操ないし薄々お父様も気付いていたらしい。本当ならラウラはどこか他に嫁に出すか…私がもしエルを気に入らなかった時の保険で用意してた娘だった。出てってくれて良かったよ」

 と真相を話した。


「では…もし私がケヴィン様と結ばれなかったらラウラ様と結婚してたのですね……」

 まぁ、ラウラ様は美少女だしお似合いだし、産まれてくる子もきっと見栄えは良いだろう。遺伝子的に?対する私は…ケヴィン様似の子を期待するしかない。


「もし子供ができて私似だったらゴット様はがっかりなさるかしら?」

 と言うとケヴィン様はコツンと額を軽く叩いた。


「そんなことでお父様はがっかりしないさ。私はいつもお父様からお前の死んだ目は気持ち悪い!呪われてる!子供までお前に似たら最悪だからな!!とよく言ってるから大丈夫だよ」

 と言う。そう言えば私が病んでた時も呪われたか?とか言ってたものね。


「んん…エル…そろそろ私は我慢出来ないから早く初夜の準備をしておいでよ…」

 と言うとタイミングよくノックされ、侍女が


「奥様、お風呂が整いましたのでこちらへ」

 と連れて行かれて同じようにケヴィン様の従者も現れてそれぞれ一旦部屋から出た。


 奥様…と呼ばれて本当に結婚したんだと言う実感が湧いた。お風呂から上がると侍女に髪も綺麗にされたが、初夜用のいやらしいネグリジェが用意されていてこれは旦那様がご用意なさりましたよと聞いて私は死んだ目になる。


 しかし侍女は


「私も結婚した時はこんな様なものでしたから大丈夫ですよ、大体皆同じです」

 と言われて赤くなる。


 それからこのネグリジェで寝室で待ってるとケヴィン様が色気たっぷりに現れてにこりと照れて


「想像以上にそそる!!」

 とか言い出したのでまたぶっ叩いてやろうと手を出したらその手を掴まれて押し倒されちゃいましたわ…。


 *


 それから……幾月…


 トントンと扉をノックするとくぐもった声が聞こえる。扉を開けると朝が弱い綺麗な顔の息子ロビンが死んだ目でこちらを見つめていた…。

 髪は私と同じ栗色だけど目が死んでいる。


 ゴット様は孫が呪いに!

 と言ってたけど私はロビンを抱きしめると聞いた。


「どうしてお部屋からあまり出ないの?皆お外で遊んでいるわよ?」

 と言うとロビンは…


「お母様……お父様はおかしいよね?使用人達には隠してるけど時々女口調になるしそうかと思えばいやらしいことを僕に教えてくるし…」

 と死んだ目で言う。

 まぁうちの旦那様ったら少しは自制してほしいものです。


「後でお母様がお父様をぶっ叩いておきますよ…」


「ええ…お母様ってなんでお父様と結婚したの?なんかおかしくない?僕おかしい夫婦の子供だよね?」

 と死んだ目になる息子。

 私は思わずロビンの背中をぶっ叩いた。


「痛っ!」


「そんなわけないでしょう?お父様とお母様はまともですよ?ロビン?」


「ええ…何か違うような…」

 とブツブツ言っていましたが


「早く支度なさい?今日は貴方の婚約者様と初めてお会いするのでしょう?」

 と言うとロビンは肩を竦めて


「別にこんな小さい頃から婚約者なんて決めなくても…」

 とブツブツまた言っていましたが


「気に入らなければ別に無理矢理とは言いませんよ?形式的ですからあまり気負わなくともいいですわよ」

 と言うと息子はうなづいて支度を始めた。

 ケヴィン様もやってきて


「ロビン、くれぐれも失礼なことをしてはダメだよ?」


「失礼なこと?」


「そう…いきなり胸揉んだり」


「そんなことするのお父様だけだ」


「そうですわね」

 と私と息子は死んだ目になる。


 そしてロビンと私とケヴィン様は従者達と共にロビンの婚約者の待つ伯爵家へと行って、ロビンは自分の婚約者様を見た。

 そこにはでっぷりと太った豚…いえ、ロビンの婚約者のご令嬢がいて、私とケヴィン様は目が死んで…


((流石にないわーーー!!!))

 と同時に思った。

 だが息子の死んだ目がこの時キラキラと輝き出した!!


 えっ!?なっ!なんなのこの子は!?


 もう豚みたいな令嬢も複雑な顔をしている。

 そしてロビンは言った。


「き、ききき君のそのお腹!触っていいかな!?」

 と弾力のありそうなお腹を見つめて失礼極まりない言葉を放った息子は豚婚約者様からぶっ叩かれていた。


「………流石ケヴィン様の血を引いていますこと」


「いや、皆そんなものだよ…ロビンは胸じゃなくて腹フェチだっただけだ」

 と死んだ目で言ったのだった。

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