第26話 ~帰郷~真相を求めて

 ――なんだか、懐かしいな。


 久しぶりの実家の自室でくつろぎながら、サリュナは考えていた。


 人間に戻ってから、2日。


 アルーナ・ディアスから丸一日歩いたところにその隣町リンクル――つまりサリュナの出身地である――はあった。


 カルハジェルが再婚してしまった今、森湖古城フォレス・シャトーには戻れない。


 今頼れるのは実家しかない、そう判断したのだ。


 実家に着いた時、両親は驚きつつも涙を流して歓迎してくれた。


 何故なら、前シャリアール公が亡くなった報せとともに、サリュナも死んだ、とカルハジェルからの手紙にあったからだ。


 サリュナは所々ぼかしながら経緯を説明したのだが、普通なら到底信じて貰えないような話をすんなり受け入れてくれた両親には、感謝しかない。


 そして。


 ――ナルネア……まさか、そんな!!


 サリュナは両親に、カルハジェルとの婚礼の付近で亡くなった知り合いがいないか尋ねたのだが。


 親友だった彼女が。式にも参加したがっていた彼女が。もうこの世にいないなんて――


 しかも、呪いをかけた容疑者として浮上したことにもなる。


 思い返せば、彼女がカルハジェルを憎からず思っているのも薄々感じてはいた。感じてはいたけれど。


 ――あの子は、そんなことするような子じゃ……!!


 本心ではサリュナが妬ましかったのかもしれない。でも、だからといってそういう手段に出るような娘ではない、はずだ。


 しかし、他にあても手がかりもない。

 彼女の潔白を確かめるためにも、一度彼女の家に話を聞きに行った方がいいかもしれない。


 心が決まると、サリュナは客間に通されたトーヴァンの元へ向かった。


 トーヴァンが新しい伴侶であることは、流石に明かす勇気がなかった。今は、まだ。


 コン、コン。


 軽く扉をノックし、名乗る。


「トーヴァン、私よ。」


「入って。」


 トーヴァンからの返事を待って扉を開け、部屋に入る。


 サリュナはトーヴァンに事情を話すと、ナルネアの家へ向かうと告げた。


 トーヴァンはそれを快諾したものの、十分気をつけないと、と注意を促す。


 ナルネアの家は少し遠いとはいえ同じ町の中である。2、30分も歩けば着く。しかし、親友とはいえ容疑者の家だ。何が起こるかわからない。ひとまず万全を期すために明日訪ねよう、ということで落ち着いた。


 トーヴァンの部屋を出て、1人自室に戻ると、サリュナはナルネアに思いを馳せる。


 今夜はなかなか寝付けなさそうだ――

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