第46話
「あの四隻のロケットと、このガメス丸を合体させて隕石に向かうぜ。俺たちが地球を救うスーパーヒーローとして戦いきってやる」
ハンド・メルト・マイトは強い決意の元に声を上げた。
「しかしそれには問題があるであります。あの四隻のロケットの素材は極秘裏に開発されたもので、どのような合金とも違い加工が大変難しいのであります。さすが地球の威信かけた最新鋭のロケットであります。放射線や熱をほとんど防ぐ脅威の新素材、ゴッド・ソウル・ノートそれと合体するのは……」
「この俺を、誰だと思ってる?」
ハンド・メルト・マイトは両手を広げていった。
「わかった! このカメちゃんの四本の手にロケットを一台ずつくっつけて巨大ロボットみたいにするんだ。そうすればシマちゃんが上手に操縦してくれるもんね」
サンシャイン・ダイナが頭上から落ちてきながら言った。
ハンド・メルト・マイトは四隻のロケットの上に亀が負ぶさるようになるイメージだったが、サンシャイン・ダイナの言葉にコバヤはまたしても涙を流しだした。
地球を救う巨大ロボット、悪くない。
「その通りだぜ。この俺の力、ダイダメの思い、そしてコバヤシマルの夢によって生まれたロボットが、地球を救うんだぜ」
「ゴボッ……ゴブボボボ……」
「ウケるー。シマちゃん涙で溺れてるんだけど。ありえなくない。ほら、吸い取って。涙吸い取って」
宇宙空間、ハンド・メルト・マイトはロケットとガメス丸の間を漂う。
気を抜くと意識が飛んでしまいそうだった。
特殊能力を使って二つの素材をくっつけるためには、素手で触れなければならない。
しかし宇宙空間に生身の手を出すというのは簡単じゃない。
宇宙は圧力のない状態だ。
人間がそこで生きられるのは宇宙服によって気密が保たれているからだ。
手だけを出すと、身体の部分の圧力と手の部分の圧力に差が出て手は膨れてやがて破裂してしまう。
そうならないために手を出せるのは一瞬。
そして今、限界まで宇宙服の方を減圧してある。
呼吸はダイバーのように直接口と鼻にポンプを繋いでいる。
コバヤがガメス丸を精密に操作する。
ロケットの底部にマニピュレーターの部分がピタリと合った。
ハンド・メルト・マイトは瞬間的に手を出して両面の材質を変化させる。
そのままくっつけると、すぐに手をカバーする。
コバヤは宇宙はマイナス270度の世界と言っていたが、冷たさは感じなかった。
むしろ熱く、痒くなってきた。
ガメス丸を移動させてもう一台のロケットに向かう。
コバヤの操作の後、また一瞬だけ手を出して両方の材質を変化させた。
その時に見えた自分の手に驚いた。
たった一瞬だったと言うのに、赤く腫れ、野球のグローブのような大きさになっていた。
二台のロケットがくっつき、三台目まで移動する。
「……ルト・マイトさん!」
コバヤの声で意識が戻った。
どうやら気を失っていたらしい。
「フッ……。思わず宇宙の美しさに心を奪われていたぜ」
そう言って三台目のロケットをくっつくのを確認した。
しかし限界だった。
もう手は動かない。
それどころか身体も動かず、ガメス丸に捕まることもできなかった。
ここまでか。
コバヤならば三本足のロボットでも上手くやってくれるだろう。
悪くはない、むしろどこを見回しても先の見えない広大な宇宙の中でこうして漂って終わるなんてのは最高だ。
「満足するのはまだ早いよ」
ハンド・メルト・マイトの耳に声が聞こえる。
聞き覚えのある声だ。
体力を使い果たしたはずの腕が勝手に上がる。
その手でガメス丸を掴んだ。
宇宙服のヘルメット内の小型モニターによく知った緑の頭が写った。
「うちは知ってるんだから。マイちんはやる時はやる男だって」
「あぁ、その通り。今がやる時だぜ」
力などないはずなのに思わず笑みがこぼれてしまう。
ザ・パーフェクトとの通信はわずかにラグがあるようだ。
それにしても宇宙の遥か彼方まで届く能力とは恐れ入る。
「うちが最後の美味しいところだけ持っていっていい?」
「まったくお前ってやつは、いつもそうだぜ。だが、嫌いじゃないぜ」
身体が勝手に動いていく。
四台目のロケットが前に流れて手が両方の素材に触れた。
ガメス丸に四本の手足がついたところで、小型モニターのザ・パーフェクトが潰れるような顔をして笑った。
「マイちん。あんた、格好いいじゃん」
「あぁ、もちろん知ってるぜ」
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