第53話 ふたたび王都へ



 転移の杖を使いサンモルノ城内にあるエルサ王女の部屋へと転移すると部屋でキセルを吸っていたメイドは突然目の前に現れた王女を見て驚いて尻餅をついてしまった。


「わっ姫さま……コレは一体?」


「アハハッ驚かせてすまないな、たった今ジャングルから戻ったのですぐに彼らとともに陛下の元へ向かうと伝えて欲しいのだが」


「か……かしこまりました」


 メイドは突然現れたオレ達を見てオロオロと慌てふためいていたがすぐに気を取り直してオレたちに一礼すると走って部屋を出て行った。


「ふむ、王様のところへ行くのだな」


「ええ遺跡での事、あと推測ですがこの王宮内に

 クーデターを起こそうとしている連中に情報を送っている者がいると言う話をしておこうかと思いましてね」


 ああそうだ。悪魔をエルサに取り憑かせた奴がいるハズだ。



「それやったらちゃんと手は打っとるで!

 宰相に言うて各部屋や広間に盗聴器しかけさせてもろたんや」


 おおっマジか?

 何かシッポを掴めるかもしれねえな



 王様がいる部屋の扉を開くと守衛兵が左右に立っており、エルサの顔を見るとすぐに敬礼した。


「陛下、エルサただいま戻りました」


「おおおおおおおーっエルサ無事であったか?」


 正気に戻ったエルサを見るなり王様は彼女を抱きしめて大いに喜んだ。


「ありがとう、王女が元に戻って良かった」


 エルサは王様と顔を合わせやっと王宮に戻ってきた事を実感する


 王宮に戻るとヨッシーは王女の部屋、調理室、更衣室、メイドたちの休憩室などに仕掛けておいた盗聴機を回収して盗聴記録をパソコンで調べてみると、どうやら明後日の夜クーデターを起こすことがわかった。



 それとエルサ姫に悪魔を取り憑かせた犯人も掴めて来た。彼女が無事に戻って来て奴ら今ごろは慌てふためいているんだろうな…………ククククッ!

 おっさっそく向かうから来たよ、その犯人どもが!


 オレ達が王宮の庭に車を止めていると

 3人の執事服を着た中年男が兵士達の目をかいくぐり、門を開けて外へ出て行こうとしている。


「オイ、アンタどこへ行こうとしているんだ」


「ヒイイイ」


「ぐ…ちくしょう! もう少しだったのにぃぃっ」


「逃さねえよ!」


 オレ達が執事服の男を取り囲むと彼は持っていたナイフで自ら胸を突き刺しありったけの声で叫ぶ。


悪魔召喚サモンデビル――――!」


 刺した胸あたりから湧き出す黒い霧が彼を包み込んでいく。

 彼は自分の命と引き換えに上級悪魔グレーターデーモンを召喚した。

 それは肌が黒く、目は赤く、とがった耳を持ち、とがった歯を有する裂けた口を持ち、頭部にはヤギのようなツノがあった。


「グフフ、さあ闇よ、辺りを黒に染め、己の場とせよ、闇陣ダークエリア


 上級悪魔グレーターデーモンの放った魔法により闇が広がっていき、あたり周辺を闇のフィールドへと変えた。


「コレは闇属性の魔法かニャ?」


「何や、ま……真っ暗けやないかい」


 マズい仲間の位置がつかめなくなってしまった。


「くらえ、ファイアショット」


 クリフさんの弓スキル攻撃か、よしこれでイケるんじゃねぇか?


 上級悪魔グレーターデーモンは軽々と矢を避けると魔法の詠唱を始めた。


「闇よ、敵を押しつぶせ、闇重圧魔法ダークプレス


 上級悪魔グレーターデーモンが唱えた魔法により体が地面に押しつけられて立つ事さえ出来なくなってしまった。


「な……何だコレ地面から起き上がれねえ」


「おそらく重力魔法の類ですニャ」


「なんや……寝たきりで動かれへんやんけ」


 マジでヤバいぞこの状況、クリフさん達どころかリンクやニーヤまで動けない……

 このままじゃ全滅しちまうんじゃねえか?

 どうする? 何か策は? 考えろ?



 バキンッ————と何かが音を立てて崩れていった。

 みんなは自らの口、手足が動くことに気付くと目の前の敵に対して即座に身構え、重力魔法を解いてくれたオルタへと駆け寄る。

 

「助かったニャ」


「それにしても、なんでオルタがココにいるの?」


「……水竜王様の指示でお前達の協力に来たんだ」


 うわぁ、マジで最強の助っ人じゃねえか!


「バ、バカな我の技を破っただと————」


 上級悪魔グレーターデーモンはオルタをギロリと睨み、雄叫びをあげた。


「グオォォォォァァァッ!」


 オルタは僅かに身構え、踏み込む。


剣技ソードスキル『闇斬り』」


 一瞬、オルタが目にも止まらない速さで剣先を

 スパッと走らせると、上級悪魔グレーターデーモンは真っ二つに一刀両断され、塵となって消え失せた。


 その一連の動作があまりにもはや過ぎて、スゴ過ぎてオレ達は言葉を失った。


「フン、上級悪魔グレーターデーモンといっても大した事なかったな」


 オルタの参戦により、アッサリと片付いた。

 さてあとはテロ阻止だな。


 ヨッシーが盗聴機を仕掛けたことによってやつらがジハールの酒場という所を根白にしている事が判明したので夜遅く彼らが集まっている所に武装した兵士たちとオレ達で奇襲をかけて一網打尽にする事にした。




 -ジハールの酒場-


 サンターナの飲み屋街の一角にあり、昼間は生演奏が聴ける洒落たカフェなのだが夜になると酒場へと変わるのだ。


 夜21時頃、店はピアノの音と酒に癒しを求める人々で溢れかえっていた。


 カランカランと音を立てて頭にターバンを巻いた男がドアを開けて入って来た。


 深夜、町は

 客の出入りが徐々に減り、近くの店の灯りが少しずつ消えていった。


 客がいなくなると奴らが人目を凌いでゾロゾロと集まり出した。


「サンターナ警備隊だ! そこを動くな!」


 突然、彼等の前に警備部隊が突撃すると店内は

 乱闘騒ぎになっていた。


広範囲眠魔法スリープサークル


 ニーヤが魔法で奴らを眠らせてくれたので警備部隊が捕縛していった。アレ、ウーサがいないぞ?

 コレは裏から逃げたかな?







 ◆






 -路地裏-


 間一髪で警備部隊の突入から逃れたウーサだったがその表情にはもはやのような余裕はなかった。

 必死ので裏路地を走り抜ける。


「アイツら、何でアジトが分かったんだ?」


 危険を察知したのか素早く裏から逃げたウーサだったがその路地でオルタが待ち伏せていた。


「へっジャマするんじゃないよ」


 彼女はジリジリと間合いをつめ、刃物で刺そうとしたがオルタは腕を押さえ極めるとウーサは暗示をかけようとした。


「させません、反射リフレクト


 突然現れたエルサの反射スキルが彼女の暗示を跳ね返し、ウーサは廃人のようになってしまった。


「ヤッタナエルサ!」


 隠れていたガガとハッサンがエルサに駆け寄る

 そして少し離れた所で彼らを見守るオレ達……


「なんとか上手くいったね!」


「うむ、たいした王女様だな」


「コレでやっとテロ騒動も片付いたな」


 数日後…オレ達は王様から呼び出された。

 姫を悪魔から救い、クーデターの阻止に協力した事へのお礼としてオレ達の店をすぐに建ててくれるそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

転生した両親に会うため異世界に来た男の異世界探検記 ルイカ @994-9294

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ