第24話 吊り橋に気をつけろ!


 夜空いっぱいの星空の下で焚き火を前にみんなでこれからどうするかを話し合っていた。


「ふむ、私はとりあえずマサ君の両親探しに同行するつもりだ」


「アッシも得意の魔法で我が主人のお供しますニャ」


「ほうやな………ワイはせっかくの異世界やし店がやりたいねん、アイテムボックスの能力スキルを上手に使うてこの異世界でごっつう美味いお好み焼き屋でも目指そうかいな!」


 クリフさんはここから北西にあるスタロ・リベリオという町をすすめて来た。


「我が主人あるじ、あっしも噂を聞いた事がありますニャ! そこの町は獣人や亜人も分け隔てなく受け入れてくれるとか」


 2人の話によるとそこの領主がなかなかの人格者なのだとか————


「ほんなら決まりやなその町を目指そうか」





 ◇






 早朝、鳥のさえずりを聞きながら気持ちよく目を覚ました。


「何やマサ坊おまえ今起きたんかい」


 ヨッシーはすでに朝飯を食べ終わり、ミネラルウォーターが入ったペットボトルを片手に歯を磨いていた。


「アレ、そういやクリフさんは?」


「おう、アイツやったら朝のお祈り済ませて狩に出かけてもうたわ。アイツが1番の早起きやで」


 ヨッシー曰くクリフさんはものすご——く早起きらしいよくわかんねーけど………


「マサ坊、まあとりあえずお茶でも飲めや」


 沸いたお湯に茶葉を入れてお茶を作る。

 山の中にいると体が冷えるので朝から暖かいモノが飲めるのはありがたい。本当、ヨッシーの能力スキルってマジで便利だよな。


「良かったらおにぎりもあるで」


 ヨッシーが虚空庫アイテムボックスからコンビニ定番のシャケおにぎりとレトルトの味噌汁を出してきたのでオレは遠慮なく頂いた。


「ああああっ美味い!」


 異世界に来て初のみそ汁と米の飯、最高ッス♪

 この感動はおそらくオレの中に流れるDNAが異世界へ来てからずーっと米の飯を求めていたのだろう。

 そう考えるとやっぱり自分は日本人なのだと実感する。


 クリフさんが戻ってきたので俺たちはまた山道を歩きだした。

 森林生茂る山道を2時間ほど歩くと高い山にかこまれた深い谷、そして吊り橋が見えてきた。


 うわぁすげえ所だな! マジかコレを渡るのかよ。

 オレはみんなの様子が気になったのでチラッと見るとクリフは特に変わりはなかった。

 そりゃ狩人だもんな

 ただヨッシーが何故か妙に挙動不審なんだけど……


「みんな悪いけど先行ってくれや! ワイこうみえて高い所はアカンねん。」


  何だよそれ? いきなりどうしたんだよいつもの勢いは一体どこにいったんだ?


「なるほど、それならばヨッシー殿はあっしらと共にまいりましょうニャ。我が主人あるじもよろしいかニャ?」


「ああ、たのんだよニーヤ」


「よし、ならばワタシが先頭を務めよう。マサ君たちは足元に気をつけてな」


 クリフさんが先頭に立ち、次にオレ、そして最後はヨッシーとニーヤたちの順番で渡る事にした。

 とりあえずゆっくりと足を進めてみる……

 足場となる木の間隔が広いので、足元から谷底の川がはっきりと見える。こりゃ高い所ダメな奴は死んだな。そして一歩踏み出すたびにゆらゆらと揺れるので真っ直ぐに立っていられない。一見大した事無さそうとか思っていたけれど実際に渡ってみると超怖えぇっ! 


「うわぁ! 揺らさんといてくれ〜っ!」


 後方が超うるせえ。マジでウザいんだけど……


「出た〜!」


 何だよ。オッさん小便でも漏らしたのかよ?

 後ろを振り返るとこの間のクリフの矢が刺さった熊がコチラに向かって近づいて来ているのが見えた。

 な……何でまたこのタイミングで現れんの?


「アカン腰が抜けてもたーっ!立たれへんわ」


 ニーヤを掴んでしゃがみ込むヨッシーだったが

 ニーヤは小さな体でヨッシーを背負うと足から魔法を発動させた。


「———炎疾走魔法フレアアクセル


 ドギューン!と凄まじい音を立ててニーヤは爆炎と共に加速し、オレやクリフを追い抜いて行った。


「我が主人あるじ、クリフ殿ちょいと伏せといて下さいニャ!」


 

「――炎弾魔法ファイアボール!」 


ニーヤが右手を高く挙げると、頭上に炎の玉が現れた。スゲエなこの炎を出したのはニーヤなのか?


 ニーヤは炎の球を投げるが熊は危険を察知したのか身をかがめて炎の球をよけた。


「あまい! 爆発エクスプロージョン


 何と炎の球が爆発して熊は背中から炎をもろに浴びるとヴェェァァーッ!と大きな声で叫びながら自ら川へと飛び込んで行った。


「なんと、魔法の付属効果か」


「た……助かったんやな、もうホンマにアカンか思うたわ」


 みんなが吊り橋を渡り終えてしゃがみこんでいた。その表情には不安、緊張から解放されて安堵の表情を浮かべていた。


「しかしニーヤはすげえな! そんな魔法が使えるんだったらさっきの熊なんて楽勝で倒せたんじゃねえのか」


「違います我が主人あるじよ。名を頂き、進化クラスチェンジしたからあの熊を撃退できたのですニャ」

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