逃げる君に「僕かっこいい?」

名無しのポチ

 口裂け女

 「私綺麗?」

 僕はそう聞かれても判断できなかった。

 「ねぇ聞いてる?」

 聞いてる聞いてる。あえて無視してるの

 コンビニの帰りに変なのに絡まれた。なんで僕はこんな面倒なことが起きるのか。もしかしてお化けがまとわりついてる?

 「私が言うのもなんだけど、君変だよ?」

 いやお前よりかはマシだろ。急に私綺麗?ってどんだけ自分に自信あるの?すごいね本当に。

 「ずっと下向いて。前を向けないの?」

 向けないよ。僕は前を向けない。理由は人間が怖いから。だってそうじゃん。みんな何考えてるかわからないんだよ?表情では許していてくれたと思ったのに裏で悪口を言われた。人間の顔は仮面でできている。思ったことを表情に出さずに裏で言う。それを知ってからは人の表情を見るのが怖くなっていた。偽りの笑顔を見たら吐き気がする。思ってないことを笑顔で言ってるんだぜ?気持ち悪くてみてられない。 

 なら下を向こう。

 みんなからは気持ち悪い、不気味など色々言われた。嫌な気持ちにはなったが顔を見るよりも楽だった。

 「何それ気持ち悪」

 は?何が?何のこと?

 「あなたの心の声が見えてるの」

 なんで?まって?おかしくない?

 「あなたは自分を高くあげすぎ。人間みんなそうよ。表情通りに言葉は出ない。そんなの当たり前。自分は違うと思ってた?君もだよ。君もしてることを相手には気持ち悪いと思ってる事を自分でもしてるんだよ?笑えるよね!君もだよ?あの気持ち悪い集団の一人!自分が気持ち悪いと思ったら死ねば?」

 なんだこいつ。僕もあいつらと同じ?違う僕はぼくは、ぼくは、、

 「はぁーーー、、私はね、君をそうした奴らも悪いとは思うよ。でも、君にも原因がある」

 違う。それはいじめられっ子を否定して、いじめっ子を肯定しているのと同じだ

 「私はいじめている奴の方が100%悪いとは思わない。自分より下のやつを見つけたらいじめたくなる。それは少し理解ができる。でもいじめをしてはいけない。いじめはあってはならないとは思うよ。でもなくならない。理由は簡単。いじめられてる方にも原因があるから。

 君は悪口を言われてから何か自分の行動を改善した?何かを変えた?努力をした?してないでしょ?相手が悪いと決めつけて何も努力をしなかったんでしょ?わかってるよ。いじめられてる方は相手が全て悪いと思ってる。だが悪いのは相手が全てではないんだよ。1%いや0.1%ぐらいの少しだけ自分の悪いところがあるのにそれを認めず、変えようとせず、努力もせずにのこのこと、人に頼りにいく。そりゃ続くよね。いじめは。なくならないよ。君みたいな逃げるだけのカスがいるから。」

 自然と僕の首は上に上がった。なんなんだ。急に出会ってボロクソ言いやがって。

 「やっとみてくれた」

 彼女は笑いながら言っていた。

 マスク姿をしていた彼女は以外ととても綺麗だった。

 「私綺麗?」

 顔の半分が見えない。吐き気はまだしない。

 首を縦に動かす。

 「じゃあ」

 彼女がマスクに手をかけてマスクを取った。

 「これでもか!!!」

 彼女の口は裂けていた。

 口裂け女というものだろう。

 

 「きれぇ」

 さっきまで顔を見るのも人と話すのも怖かった僕がはっきりと彼女の目を見て言った。吐き気もしない。何かわからないが彼女の顔は観れるらしい。

 「なんで?」

 さっきまでの人を脅かす顔じゃなく間抜けな顔で彼女は聞いてきた。

 「僕が聞きたいですよ。」

 「僕はあなたの話を聞いて全てを変えようとは思いませんでした。だって逃げた方が楽ですもん。ですが逃げ続けるのも少しダサいと思ったので、あなたの顔を見てみました。そしたら口裂け女だったって話ですよね。」

 「なんで冷静なの?」

 「口が裂けてるのはびっくりしましたが、人の顔を見れた事と中和して無になってしまって」

 僕はもう少し彼女と話したかった。

 「少し話せませんか?」

 彼女は泣き出した。僕は見守ることしかできなかった。彼女の涙は下に落ちず頬を伝って裂けた口に入る。僕はすこし気持ちがわかる気がした。彼女も逃げてきたのだろう。人間と友達になれないと。諦めていたのだろう。だから脅かしていてる時だけ人と話そうとしていた。それ以外人と話す事ができないからだろう。彼女の顔を見た瞬間みんな離れていく。さっき言っていた言葉は自分にも言っていたんだな。

 そうかわかった。彼女の顔を見れる理由が。

 彼女と僕が似た者同士だからか。

 彼女は泣き止み僕を見て言った。

 「私口裂けてるんだよ」

 「そうですね」

 「いいの?一緒に話して」

 「いいでしょ」

 そして僕たちは夜に待ち合わせをして会うようになった。誰もいない公園のベンチ。外灯は全てが光っていて虫がたまっている。酔っ払っていらじいさんも何度か見た。人を見たのはそれぐらいで夜の公園には昼にある子供の声と反比例してあと一つ聞こえない静かな所だった。君以外に他口裂け女はいるのか、お化けはいるのか、好きな男のタイプや色々聞いたり話したりした。お化けの彼女と話す時は顔を上げる事ができるようになった。人と顔を合わせて話すことはまだ難しいが、徐々に慣れていく事ができた。全て君のおかげだと口裂け女に言っても私は何もしていないというだけ。名前もまだ聞いていないし聞かれていない。理由は二人ともいつか別れが来る事がわかっているのだろう。別れたくないが多分会わなくなる事になると思う。理由は僕は人間で相手はお化けだからだ。君といたのは自分に逃げていた僕だったけどその僕が消えて、ちゃんとした人間になってしまった。そしたら他の人とも話せるようになり君と話す意味はなくなるだろう。そう思ってる。意味なんて関係ない。友達なら話して当然。今の僕たちはそう言えない。意味だけを追求してしまう。だけどその事についてはどちらも触れない。今は一緒に話しておきたい。これを邪魔するものは無視しておきたいと思ったのだろう。数か月後

 君は消えていった。僕が人の顔を見れる人間になったからだ。だが次に口裂け女が街にいると噂になった。その口裂け女と一緒にいたら僕がみんなから非難されて元通りになるのを避けけてくれたのだろう。やはり別れが来たか。悲しいよ、かなり。わかっていた。でもやはり二人とも逃げていた。別れる事から。わかっていたのに、永遠と続く事がないのに、その事実から逃げた。やはり立派な人間になっても僕は逃げ続けるんだ。二人でそれを理解していたら最後に別れの言葉が言えたのに。やはり僕たち似た者同士だな。君とまた話したいよ。そう思いナイフにを持つ。綺麗な君と、きみと、

 



       グサッ、、、



 いつも二人で集まっていた公園のベンチを横目に私は月の写る川の近くを歩く。月は綺麗に光っている。自分が発光していないのに、堂々と自分をアピールする月に少し尊敬をする。とにかく歩く私。逃げなくてはいけない。彼のために。一緒にいたら元通りになってしまう。彼は変わっていったんだ。彼が好きならそれを応援しなくてはいけない。私が近くにいたら彼も気持ち悪がられる。なら私がどこかいけばいいんだ。私の近くにいてなんて言えない。それはただのわがままだ。好きなら彼を幸せにしたいと思わなきゃいけない。でも私は違った。彼と二人きりでいいからもっといたいと思ってしまった。本当にダメだ私。彼は前に進んでるのに私は何も変わらない。この口のせいで、この口のせいで、、この口がなければ彼と今も、

 夜中歩く私。の前にマスクをした人が通った。と思ったら止まって話し始めた。

 「僕はねやっぱりいじめられっ子がさ、悪いとは思わないや。無理に弱い奴が変わらなくてもいい。弱い奴に手を差し伸べる弱い奴がいればいいと思うんだよ。」

 この声彼だ。どこかに行かなきゃ。彼のためにも。だが彼は私の手を握りもう片方の手で自分のマスクを外した。

 「なぁ、僕かっこいい?」

 私は彼の顔をみて一瞬驚いたが彼らしいとも思った。

 「えぇ、かっこいいよ」

 私たちはこれからも一緒にいられる。名前も知り他のこともいっぱい聞ける。

 だって私と彼は同じ口裂けお化けだもの。

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