第17話 中国からの留学生、リャン・メンマちゃん!

 お昼休み。


「ねぇステラちゃん、お昼ごはんを一緒に食べるアルネ」


 わたしは中国からの留学生、リャン・メンマちゃんにそう声をかけられた。


 メンマちゃんはわたしと一緒の1年・紅バラ組で、同じ留学生ってことで最近仲良くなったんだ~。

 ええっと、たしかアスカちゃんさんと同居を始めたくらいだったかな?


 つややかな綺麗な黒髪で、すらっとしたモデル体型の美人さんなんだ。

 ちょっとだけ中国なまりがあるのが可愛くて、クラスの人気者なんだよ。


「あ、ごめん、今日は節約でお昼抜きなんだ~、えへへ」


「え、そうアルネ? たしか『先輩と同居することになったから、食費・家賃・光熱費もろもろ浮いたー!』って喜んでたアルヨネ?」


「うーん、そうなんだけど、朝と夜にしっかり食べさせてもらえるから、逆にお昼を抜きやすくなったかなーって」


 昼飯抜きは苦学生の基本であるからして?


「ふぅんアル……、なら今日はワタシがおごるアル。だから一緒にお昼を食べるアル」


「えっ、いいの? でも悪いし……」


「気にするなアル。ワタシは国費留学だから、お金には困ってないアル。お金を稼ぐ時間があれば代わりに全力で自分を高めることが、最終的に国家のためになるアルネ」


「あ、そうなんだ」


 留学生って言っても色々違うんだね。

 国からお金をもらってたり、自分じゃなくて国のためだったり。


「ステラはいいやつアルからね。今日は大好きな蕎麦をおごってあげるアルよ」


「あ、行く行く! ごちになります! ありがとうメンマちゃん!」


 アルファルド学園の学食の蕎麦は混ぜ物なしの十割蕎麦だから、美味しいんだよねぇ~(*'ω'*)


 噛んだ時に口の中ではじける格調高い風味が段違いなの。


 あれは間違いなく、本場・信州は長野県の蕎麦粉を使ってるね。

 わたしほどになれば食べればわかるんだ~。


 良質な蕎麦粉と、麺打ち職人の匠の技のシナジーによって生まれる、究極の一品――それが十割蕎麦なのである!


「ハハハ、正直者アルネ。じゃあさっそく行くアル。ご飯ついでに、また四季咲しきざきアスカ先輩のことを聞かせてほしいアル」


「いいけど、メンマちゃんって、いつもアスカちゃんさんの話を聞きたがるよね?」


 わたしがなんとなく気になって聞いてみると、


「えっ!? それは……その、アル、ね……?」


 なぜかしどろもどろするメンマちゃん。

 まるで隠し事の本質を言い当てられたみたいな反応だった。


「あ、わかったぁ……」

 その慌てる姿を見て、全てを察したわたしは( ̄ー ̄)ニヤリと笑った。


「うっ、それは、あの、別に四季咲しきざき先輩を調べようとしてたわけじゃ――」


「メンマちゃんってば、実はアスカちゃんさんの隠れファンなんでしょ?」

 わたしはズバリ指摘した!


「え? 隠れファン? あ、そ、そうアル! よくわかったアルネ! さすがステラは頭がいいアル! 天才アル!」


「やっぱりぃ~? もうバレバレだし~」


 ま、わたしほどになれば、これまた見ればわかるっていうか?


「ハハハ、そうアルか……さ、さすがアル……。それであの、できればこのことは、四季咲しきざき先輩には言わないで欲しいアルネ……」


「大丈夫、言ったりなんかしないから。安心して」


 本人が仲良くなりたいっていうのならわたしだって応援するけど、そうじゃないのなら、人の気持ちにあれこれ踏み入るのは良くないことだもんね。


 ステラ大人の対応である。


「ふぅ、良かったアル」


 メンマちゃんはすごくホッとしていた。

 今はきっと、遠くからアスカちゃんさんのことを眺めているだけで満足なんだろうね。


「じゃあ話も一段落した所で、そろそろ食堂に行かない? わたし、お腹ぺこぺこー」


「そうアルネ。行くアルよ」


「蕎~麦♪ 蕎~麦♪ いつもズルズルあなたのおソバにはいよる生粉打きこうち~♪」


 わたしはハッピーすぎて自作の蕎麦ソングを口ずさむ。


 もちろん自作なので、日本の音楽を守護する鉄壁の超ド級不沈空母JASRAC様の時に理不尽で苛烈な取り立ても怖くないんだもんねっ!


 わたしとメンマちゃんは学生食堂へと向かった――。


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