第13話 「銀河究極・蕎麦・荷電粒子砲!!」

「シャイニング・プリンセス・ステラ、聞きなさい。わたしはとっくに正義のために殉ずる覚悟を決めているのよ。それが正義の味方である四季咲しきざき家に生まれた私の宿命だから」


「そんな……宿命だなんて……」


「命なんて安いものよ、特に私のはね」


「…………」


 アスカムーンの見せた神風特攻隊に志願する若者のごとき裂帛の覚悟に、わたしは絶句してしまった。


「それに、今はあなたという素敵な後輩もいるしね。シャイニング・プリンセス・ステラ。短い間だったけど、あなたと過ごした日々は楽しかったわ」


「短い間って言うか、知り合ってまだ1週間ちょいですけど……」


「私が死んだら、あの家はあなたにあげる。私の部屋の机の、一番上の引き出しに、こんなこともあろうかと用意しておいた遺書があるから。相続のさいは顧問弁護士にそれを見せてあげてね。連絡先は遺書に一緒に書いてあるから」


「遺書!? 用意周到すぎませんか!?」


 あと微妙にドヤ顔するのやめてくれません!?


 あれでしょ、もちろん分かってますよ。

 「遺書に」「一緒に」がギャグになってるんでしょ!?


 でもでも、今はそんな風にうすら寒い親父ギャグを言ってドヤ顔するシーンじゃ、全然決してないですよねっ!?


 命を賭けて戦ってるシーンですよね!?


 なんでそこまでアスカムーンは、ボケに情熱を傾けるんですか!?

 ボケないと死んじゃう関西人なんですか!?


 たしかにうどんは西日本でよく食べられてますけど!


「だからはやく撃ちなさい。こいつを足止めするのも、くっ、そろそろ限界になってきたから――」


「アスカムーン……」


 ここに至ってわたしはついに覚悟を決めた。

 アスカムーンの正義を貫く熱い想いを、もうこれ以上は無下にすることはできないから――!


「ふふっ、どうやら心を決めたようね」


「はい、不肖ステラ。オペレーション・メテオ、完遂してみせます!!」


 そう宣言すると、わたしはシャイニング・バスターライフルをシュバっとかまえた。


「行くよ、必殺――!」


 シャイニング・バスターライフルに、ものすごい勢いでM・E・Nめん超宇宙コスモスが溜まっていく!


 なにがどうなるとか、そういう詳しい理論はちっとも分からない。


「だけど何をどうすればいいかは、M・E・Nめん超宇宙コスモスが教えてくれるんだ──!」


 わたしは燃え上がるM・E・Nめん超宇宙コスモスに、流れるプールに浮かんで流される時みたいに、この身を委ねていく――!


M・E・Nめん超宇宙コスモスよ、わたしを導いて――」


 燃え上がるM・E・Nめん超宇宙コスモスに同調するように、シャイニング・バスターライフルが、全てを撃ち抜く超絶無限な破壊力に満ち満ちてゆく――!


「チャージ完了! 充填率120%、150%、300%――10000%!! リミット・オーバードライブ! 最終セーフティ解除アンロック!」


 今まで撃った蕎麦・荷電粒子砲とは別次元の、ギャラクシー・アルティメット・スーパーウルトラ超絶パワーが、シャイニング・バスターライフルへと充填される。


「灰は灰に、塵は塵に、物語は物語に――! 一撃で決めるよ――っ! 銀河究極・蕎麦・荷電粒子砲!!」


 ジャキーン!

 わたしはシャイニング・バスターライフルをアバウトに構える!


 魔獣はアスカムーンと場所を入れ替えながら、それは激しく接近戦を繰り広げているけど、


「そんなこと構うもんか!」


 そもそも充填された超絶パワーが一部抑え込めてなくて、照準が震えてしまっている。

 精密射撃は元より不可能だもんね!


「だから、いっけー!!」


 わたしの気合マックスのかけ声とともに、シャイニング・バスターライフルに貯めこまれた荷電粒子・蕎麦粉が、一気に解放された!


 ピンク色の銀河究極・蕎麦・荷電粒子ビームが、シャイニング・バスターライフルから解き放たれる!


 そしてそれはまっすぐに「アスカムーンに向かって」突き進んでいく――!


「ううっ、やっぱり誤射っちゃったぁ!? ごめんなさーい!!」


 だけど――、


「いいえ、これも想定の範囲内よ! よくやったわシャイニング・プリンセス・ステラ! あとは任せなさい!」


 そう言うと、アスカムーンはギリッギリのタイミングで、自分と魔獣の立ち位置を、クルッと上手いこと入れ替えたんだ!


「わわっ! すごいです、アスカムーン!」


 そして位置を入れ替えたことで、アスカムーンに向かっていた銀河究極・蕎麦・荷電粒子ビームが、ものの見事に魔獣に直撃した!


「ヴァッ、ヴァカな……なんだこの力は……世界を征服するこの俺を、一撃で消滅させてしまうというのか……」


 その圧倒的な威力の前に、魔獣は一瞬で消し炭になろうとして、


なんじのあるべき物語に戻れ――ノベル・イン!」


 アスカムーンのその言葉で、魔獣は消える寸前にアスカムーンのウドンの中に、「シュワーン!」って吸いこまれていった。


 ふう、やれやれ。

 大ピンチを乗り越えて、またまたわたしたちは勝ったのだ!


「ありがとうシャイニング・プリンセス・ステラ。あなたのおかげで、命拾いしたわ」


「いいえ、結局わたしは誤射しちゃいましたから……すみませんでした、危うくアスカムーンを殺してしまうところでした……」


「ふふっ、可愛い後輩に殺されるなら本望よ」

「いや、それはどーでしょう……?」


 アスカちゃんさんってちょっとマゾなのかも?


「それに正義の味方は結果が全てなの。犠牲者を出さずに魔獣を見事に封印してみせた。これはあなたの行動のおかげよ、もっと胸を張りなさい。正義の味方シャイニング・プリンセス・ステラ」


「あ……はい!」


 こうして。

 わたしたちは、世界征服を企む魔獣を見事に討伐、封印することに成功したのだった。


 世界にひと時の平和が訪れたのだ――!

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