第4話 お引越し

「ここがアスカちゃんさんの家ですか!? すごっ!? でかっ!?」


 荷物をまとめたわたしはアスカちゃんさんの家にやってきて、いきなりソッコー驚かされてしまった。

 だってそこにあったのは、勝ち組の象徴である一軒家だったから!


 だって一軒家だよ、一軒家!


 ウーバー〇ーツ的なスキマバイトをいくらこなしても、一軒家は買えないんだから……っ!!


「えっと……これくらい普通でしょう? あなた学園寮に住んでるのよね? あそこはそれなりに広かったと記憶してるけど」


「それがその、実は家賃9割引きで、使ってない天井裏の物置に住まわせていただいてまして……」


 わたしは正直に白状した。


 闇ブローカー、おっとスーパーウルトラエージェントに地球に渡航する段取りをしてもらうのに、貯金は全部使っちゃったから、お金がないのである。


「そ、それは大変だったわね……」


「ちなみに天井裏って、夜すごく寒いんですよ。エアコンはついてないし、屋根には断熱材がついてないから外気にものすごく影響されちゃうんです」


 だからこの先、季節が進んで夏になると、今度は逆に死ぬほど暑かったと思うんだ。


「そ、そう……本当に大変だったわね……」


「もう、わたしのことはいいじゃないですか。それよりも! もしかしてアスカちゃんさんは、ここに1人で住んでるんですか!?」


 わたしは鼻息をフンフンさせながら、興奮度マックスで目の前の一軒家を指さした。


「そうよ? この学園に入るにあたって、親に用意してもらったの」


「一軒家をポンと用意してもらうなんて、リアルお金持ちです……!!」


「まぁ、うちは代々正義の味方をしているからね。その界隈かいわいじゃうちの家系ってけっこう有名なのよ? 公安や警察とも仲がいいし」


「正義の味方にも界隈とかあるんですね……」


 ってことは、他にも正義の味方がいたりするのかな?


「まぁその話は今は置いておいて。2階に使ってない部屋があるから、ステラはそこを使ってちょうだい。もちろん自分の家と思って、気兼ねなく使ってくれて構わないから。冷蔵庫もキッチンもお風呂も、自由に使ってくれていいわよ」


「ほんとですか! 何から何までありがとうございます!」


 わたしは感謝のあまりアスカちゃんさんに抱き着いた。


「ふふっ、ステラは甘えんぼさんね? じゃあせっかくだし、晩は出前でも取りましょうか。近くにお勧めのうどん専門店があるの。もちろん好きなものを頼んでいいわよ」


「あ、ありがとうございます!」

 

 うどんかぁ。

 実はわたしはうどんよりも蕎麦派なんだけど、アスカちゃんさんがタダで出前をとってくれるっていうんだから、そこは文句言うところじゃあないよね。


「じゃ、そういうことで」


 アスカちゃんさんはそう言うと、スマホを取り出してうどんを2人前注文した。

 ウーバ〇イーツだった。


 試しにわたしもウーバー〇ーツの配達パートナー用アプリを立ち上げてみた。


 すると、ピコン!


 すぐに、近くにいたわたしに配達リクエストが来て、なのでわたしは自転車で2人分の注文うどんを取りに行って、戻ってきた。


「あの、これじゃあなんだか、私がステラをパシらせちゃったみたいなんだけど……」


 わたしから出前のうどんを受け取りながら、ものすごく気まずそうに言ったアスカちゃんさんに、


「お金をもらってるから問題ありません!」


 食事とともに日銭までゲットしちゃったわたしは、満面の笑顔で元気よく答えたのだった。

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