第6話 燃え上がる超宇宙

 今日も学校帰りにウー〇ーイーツを数件こなした後。


 同居するアスカちゃんさんの家に帰宅するべく、夜の帝国通り(道の名前ね)を歩いていたわたしに突然、


「ヴァッ!!」


 人ならざる声をあげながら、魔獣が襲いかかってきたんだ!


「またぁ!? ウーバー〇ーツは個人事業主だから、仕事帰りに襲われても労災下りないんだよ!?」


 わたしが世の無常を感じ、同志たちと労組を結成すべきか真剣に悩んでいると、


「ムーン・メガミック・パワー! ウドンアップ!」


 起動ワード=イグニッション・スペルとともに、白馬の王子さまのごとくサッソーと現れたアスカちゃんさんが、銀色の月光のようなキラキラに包まれて、アスカムーンに変身した!


「ステラは、離れたところで隠れてなさい」


「は、はい!」


 わたしが近くの茂みにステイ・ホームしたのを確認すると、


「灰は灰に、塵は塵に。そして物語は物語に――。うどんとノベルのセーラー服美少女女神、アスカムーン! 月見うどんにかわってオシオキよ!」


 アスカムーンは決めポーズ&決めゼリフをシュバっと決めてから、魔獣と戦いを始めた。


 キンキンキンキンキンキンキン――!


 離れたわたしのところまで、激しい戦いの音が聞こえてくる。


「くっ! なんて無慈悲なビーム攻撃なの!? これじゃウドンの距離まで近づけない――!」


 ノベラムーンの苦戦する声が聞こえた。


 どうも今回の魔獣は、卑劣にも遠距離ビーム攻撃を使うようだ。

 なのでウドンによる接近戦が得意なアスカムーンは、なかなか近づけずにいるみたい。


「アスカちゃんさんは大丈夫かな……?」


 わたしはしばらく隠れてたけど、戦いはすぐには終わらず、


「そわそわ、そわそわ……」


 わたしの不安は少しずつ高まってきて──。


「ちょっと覗くくらいならいいよね? 気になるし……」


 わたしは「ちょっとくらいなら大丈夫でしょ?」などという、根拠のない正常化バイアス満載の判断で、茂みから顔を出した。


 ひょこっ。


 ――って、わわっ!?

 いきなり魔獣と目が合っちゃった!?


「ヴァッ!!」


 そして魔獣は、目が合ったわたしに向かって、容赦なく無慈悲ビーム攻撃を放ってきたんだ――!


 あ、これ、ダメなやつだ――。

 近づいてくる無慈悲ビームを見て、わたしは本能的に自分の死を悟っていた。


「お父さん、お母さん、遠い異国で先立つ不孝をお許しください――」


 わたしが避けられない死を、これ以上なく覚悟した瞬間だった、


「危ない、ステラ!」

「え――?」


 わたしの目の前にアスカムーンが割って入って──、そしてその身体が大きく跳ね飛んだのは――。


 跳ね飛ばされたアスカムーンは、近くのコンクリートの壁に激しくぶつかって、そのままズリズリと崩れ落ちた。


「アスカムーン! あの、わたしをかばって――!」

 わたしは急いで駆け寄ったんだけど、


「ステラ……私のことはいいから、あなたは早く逃げなさい……」


 アスカムーンは、声を震わせながらそんなことを言ってくるんだ。


「でも、アスカムーンが――」


「私は大丈夫、これくらい平気よ……」


 アスカムーンはそう言って、無理やり笑顔をつくりながら、立ち上がった。


 だけどその動きはフラフラと頼りなく、まるで生まれたての小鹿のようにヒザがプルプルと震えていた。


 これじゃあ、とても戦えないよ!


 わたしのせいだ。

 わたしが隠れてなさいって言われたのに、顔を出しちゃったから。


 わたしのせいで、アスカムーンが!

 アスカムーンがやられちゃう――!


 なんとかしないと!!


 そう強く思った瞬間だった!

 わたしの心の中で、何かがはげしく燃え上がったのは──!


 それは、一度燃え上がったと思ったら、どんどんどんどんと、さらに激しく熱く雄々しく猛々たけだけしく燃え上がっていって――!


「ふえぇぇぇっっ!? な、何が起こってるの!?」


 自分の身に突如として起こった異変に、わたしがあたふたしていると、アスカムーンがビックリしたような声で言ったんだ、


「こ、これはM・E・Nめん超宇宙コスモス!? しかもものすごいまでの高まりを感じるわ!」


 ――って!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る