第6話 ヒヤシンス

 最近、聖也の様子がおかしいです。

 珈琲を急に飲みだすし、最近一緒に帰ってくれないし。私に内緒で彼女でもできたのかな?

 いや、それなら応援するけど。

 もし彼女がいたら、幼馴染みの私って邪魔なのかな。

 距離、取った方が、いいのかな。


------------------- 巡る、思考


 「おーい!愛香ー!」

 聖也に合わないように帰るはずがまんまと追いつかれてしまった。

 「なー、今日空いてる?いいカフェ知ってるからいかね?」

 「え、ううん、行かない。」

 「え?なんで?紹介したいからさ!」

 「えー?んー、そこまで言うなら。」

 内心、まだ私が眼中にいるのだと知れて安心していた。

 でも聖也は優しいから、彼女がいたとしても私をこうやって誘ったりするんだろうな。


 「あ、見てあれ。」

 聖也が指さした場所を見るとたくさんチューリップが咲いていた。

 「チューリップって和名は『うこんこう』って言うんだぜ?なんか下品だよな!」

 「そう、かな。」

 たくさんのチューリップの中、一輪だけ白色の花弁があった。

 私には輝いて見えて、とても綺麗で仕方なかった。

 

------------------- 白色


 「着いた、ここだよ!」

 珈琲のいい香りに花の香りが混じっている。

 きっと聖也は何の花かわかって、いい匂いなんて思っているだろう。

 珈琲を飲み始めたきっかけはここにあったのか。余程美味しかったのかな。

 え?

 「おにぎり、カフェ?」

 「そう!それが肝だよ愛香!」


------------------- 割愛


 「美味しかったです!こんなに珈琲と合うなんて!」

 おかかときんぴらごぼうのおにぎりとカルボナーラ風おにぎり、どちらも絶品だった。

 食べ終わった後に飲む珈琲の満足感がたまらない、流石に聖也が薦めるわけだよ。

 「口に合ってよかった!まさか聖也くんが女の子を連れてくるなんてねー、私も7年前に戻りたいわー!」

 「やめてくださいよ七海さん!そんなんじゃないですから!」


------------------- 何その言い草


 「ほんとにー?お似合いだよ?」

 「いや、こいつとは幼馴染みで!ないですよ本当に!」


------------------- 本当に、


 「な?愛香!」


------------------- 私って、聖也にとって何なんだろ


 「ん?愛香?」

 「あ、ごめんごめん!ボーってしてたわ!そうだよね!本当ありえないわ!」


------------------- 後悔したって、知らないよ。私


 そういうことなんだ。女に生まれてよかったよ、恋愛に対しては鼻が効く。

 私は聖也とは恋愛対象になれない、聖也は好きになったんだね、あの人のこと。

 全然、嫉妬とかじゃなくて、悲しいよ。

 だって、あの人はさ。


------------------- 紫色、混ざる


 


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