短編小説

エゴサーチ

もう、やめなよ。おかしいよ。

何もおかしくない。いいからエゴサさせろよ。

ずっとエゴサしてんじゃん。この土日。私といる間もずっと。前はこんなんじゃなかったよ。もうおかしいよ。

いいから黙れよ。お前に俺の何がわかるんだよ。エゴサさせろよ。

もうやめてよ。怖いよ。エゴサしないでよ。

エゴサするんだよ。俺からエゴサとったら何が残るんだよ。

色々残るよ。もうやめて。頭おかしいよ。お願いだからエゴサやめてよ。

エゴサさせろよ。エゴサしてないと気が狂いそうなんだよ。落ち着かないんだよ。エゴサしてないと自分が自分じゃないみたいなんだよ。

明日病院いこうよ。お医者さんにみてもらおうよ。

バカ言うなよ。なんて説明するんだよ。エゴサがやめられないんですって言うのかよ。

そうだよ。この人エゴサがやめられないんですって言うんだよ。それで病名つけてもらうんだよ。お薬出してもらうんだよ。エゴサは禁止してもらう。一緒に行くから行こう？

おい、こら、返せよスマホ。返せよ俺のエゴサ。お前に俺の何がわかるんだよ。エゴサ返せよ。この糞野郎。

もう十分にエゴサしたでしょ。

もっとだよ。足りないんだよそんなんじゃ。本気出したいんだよよ。命かけさせてくれよエゴサに。おい、エゴサさせろよ。エゴサし足りないんだよ。エゴサしたいんだよ。エゴサしたい……説教すんな俺に。エゴサさせろ！　俺に指図すんな。エゴサさせろ！

もうやめてよ。エゴサなんかしてる暇があったら、他にすることがあるでしょう。仕事とか、プロモーションとか。

そんなことよりエゴサさせろよ！　いいか？　そんなの意味ないんだよ。無意味なの。全部。お前にはわかんないんだろうけど。そんなことするくらいならエゴサしてた方が有意義なんだよ。

エゴサの方が無意味だよ。

お前にエゴサの何がわかるんだ。

エゴサの何も分かりたくないよ。いいからエゴサやめて。

お願い、三十分でいいからエゴサさせて。お願いします。何でもするから。

長すぎるよ。やらなくていいよ。ずっとエゴサばっかりして、もうずっと寝てないし、寝ずにエゴサばっかりして、奇声発して、暴れて、その度に私も起こされて、どうかしてるよ。

俺だって暴れたいわけじゃない。ただ、エゴサしてると、勝手に体が暴れだすんだよ。俺だってエゴサしてなかったらもっと普通にしてられる。

だったらエゴサしなければいいじゃない。

それは無理だよ。もう、一度エゴサを始めたら元の自分には戻れない。

大丈夫だから。エゴサしなくても。私がついてるから。今日はもう寝よう？　睡眠薬飲もう？

だめだ。うるせえ。俺に必要なのは薬じゃねぇ。エゴサだ。睡眠薬飲んだらエゴサできなくなる。俺はエゴサがしたい。エゴサさせろよ。エゴサ、エゴサさせろ、エゴサ！！

わかった。わかった。じゃあ、セックスしよ？　ね？

セックスよりエゴサがしたい！

え？

セックスなんかより俺はエゴサがしたいんだよ！！

頭おかしいよ！！！

いいからエゴサさせろよ、お前、エゴサどこに隠したんだよ、エゴサさせろ、エゴサ！！！

いい加減にしろよお前、エゴサ、エゴサ、エゴサ、エゴサばっかり

エゴサしてないと不安なんだよ！　何が書いてるか知りたいんだよ！　世界中の言語で、あらゆるプラットフォームで、自分について何が書かれてるか知りたいんだよ！

そんなに毎秒毎秒エゴサしなくてもいいでしょ、一日一回で十分だよ。

一瞬で消える書き込みだってあるんだよ！　その全てを俺はスクショして脳裏に焼き付けて生きていきたいんだよ。俺のエゴサを止める権利なんか誰にもない！！！！

もうやめてよ。エゴサやめてよ。ひどいよ。エゴサのことばっかり。前はこんなんじゃなかったのに。エゴサに人生壊されてるよ。

エゴサするために生きてるんだからいいんだよ。エゴサで壊れるなら人生も本望だよ。俺のエゴサどこだよ。エゴサさせろよ、エゴサ！！　エゴサさせろよ！！