第2話 真の真名

 ステェータース、オォープゥーン。


 心の中で思いっきりエコーを掛けてみました。


 よし! ステータス画面、出ました。他人には見えないよね。うん、見えてないと思う。やった後で心配しても意味ないですけど。


     *     *


・名前/タロー ヤマダ

・種族/人間

・年齢/16

・職業/未定Lv.1

・生命力 6/6

・攻撃力 8/8

・防御力 5/5

・魔力 3/3


ーースキル


・生活魔法


ーーエクストラスキル


・アイテムボックスLv.1


     *     *


 うーん。数値の基準が分からんが、たぶん高くないよね、これ。しかも職業/未定だもん。スキルだって生活魔法のみ。やはり、俺は巻き込まれただけ! なんだろうなぁ。


 ハァ、悲しくなってきた……。とは、思わない事にした。これはきっと成り上がりのパターンなのだ。


 さあ、無限の未来を信じて、この異世界を生き抜くぞ!


 おっ。薄目の向こうから片桐先輩が、こちらに戻って来るぞ。話し合いが終わったらしい。ちょうど良い、張り切って起きることにしよう!


「知らない天井だ(棒)」


「何故うつ伏せなのに、天井が見えるのかしらね……」


 女王、御手洗聖子が俺をジト目で見る。これはこれで、ご褒美かもしれないが、気まずい。しかし俺的に、このセリフは決して外せないのだ!


「貴方。実はずっと前から目覚めてたんでしょう」


 ……何とか誤魔化せないものか!


 そうだ。御手洗会長は、こっち側の人間なのだ(たぶんきっと)。


「そんな事より会長、ステータスオープンできますぜ!」


キラリ! 貴方、もう開いたの? ……って、やっぱり起きてたのね」


 しまった! やぶ蛇だったか。と、そこに救いの使者が……。


 戻って来た片桐先輩が俺に話し掛けてくれたのだ。GJ。


「君、名前は?」


 君なんて言う人居るんだな。さすがは生徒会。


 俺は二人の信頼を得るためにも、誰にも明かしたことがない真名を名乗る事にした。


夢幻ムゲン 來斗ライトです」


「……君、名前は?」


 スルーですか、そうですか。


「タロウ ヤマダです。嫌いなんです、本名。せっかくなので、そのうち変えますから覚えおいてください」


「わかったわ。タローちゃん」


「ヤマダ君だね」


「せめてタローで、お願いします!」


 いきなり、大幅に変えたのがまずかったらしい。徐々に変えていくことにしよう。


 やれやれの表情の片桐先輩がキリッと真顔に変わる。


「それより会長、どうか驚かずに聞いて下さい」


 片桐先輩は、一度目を閉じ、意を決したように重々しく口を開いた。


「どうやら僕たちは、異世界に転移させられたようです」


 俺と御手洗会長がズッコケタのは言うまでもない。

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