コント いいねくれよ強盗

不燃ごみ

第1話 いいねくれ 強盗

場所 銀行


強盗 「大人しくしろお、このナイフが見えねえか」


行員「い 、今すぐ、お金は用意します」


強盗「いや、金が欲しくて強盗に入ったんじゃないんだ」


行員「え、何が目的で」


強盗「あのさあ、イイネ、おくれよ」


行員「え、何ですか」


強盗「だからあ、イイネおくれよ、俺が投稿した小説に」


行員「はあああああ、そんな目的で銀行強盗入ったんですか」


強盗「何だあ、文句あんのか」


行員「ち、ちなみにどんな内容ですか」


強盗「銀行強盗に入って、そこで嫁を見つけるってストーリーだ」


行員「ええっと、タイトルは」


強盗「出会い頭のバンクラブ」


行員「それはちょっと、ど、どうなんだろうなあ」


強盗「イイネしないならテメエから刺すぞ」


行員「もうちょい内容変えませんか」


強盗「既に最高のプロット何だよ」


行員「リアリティがないっていうか」


強盗「でも、俺ここで、本気で嫁見つけるよ」


行員「小説がそのまま現実なんだ」


強盗「ノンフィクションだからな」


行員「そういうの犯罪予告っていいません?」


強盗「さあて、どの人質と付き合うかなあ。おすすめいる?」


行員「それより、イイネすれば解放してくれるんですか」


強盗「お前何か文学音痴っぽいしなあ」


行員「いやいや、俺も小説書いてますから」


強盗「へえ、ジャンルはなに」


行員「恋愛小説です」


強盗「同士じゃん」


行員「そっちは犯罪予告でしょ」


強盗「いるんだよなあ、エンタメ馬鹿にする奴」


行員「犯罪予告エンタメじゃねえないかも」


強盗「お前純文よりの恋愛小説派だろ」


行員「そっちもコメディよりのサイコ派ですよね」


強盗「あ、むかつく、刺すか」


行員「い、イイネ、しますよ。サイト名教えて下さい」


強盗「ニャロゥってサイトだ」


行員「え、もう200イイネもらってるじゃないですか」


強盗「たったの200だよ。最低1万ないと書籍化しないからな、ちなみにお前の幾つだよ」


行員「3イイネです」


強盗「お前よく筆折らんね」


行員「い、一般受けしなくて、いいんですよ。分かる人が分かれば」


強盗「まあ、どうでもいいや。嫁探さないと」


行員「誰が強盗と付きあうかっての」


強盗「もう1人の行員とLINE交換したよ。小説読ませたら天才だって」


行員「嘘だああ」


強盗「彼女、お前の小説めちゃくちゃつまんないってよ」


行員「やめてえ」


強盗「才能ってのは、生まれながらのもんだからな」


行員「もうさっさと嫁見つけて帰れや」


強盗「ざっと読んだけどお前の小説に足りないのはリアリティだよ」


行員「ぎく」


強盗「お前恋愛経験ないだろ、童貞か?」


行員「そのナイフかせえ」


強盗「お前も同僚で好きな子いるだろ、コクってこいよ」


行員「この状況下で?」


強盗「そうやって言い訳ばっかするからイイネ三つなんだよ」


行員「それは飛躍しすぎでは」


強盗「おい、あそこの縛られてる可哀想なメガネの子いいじゃねえか」


行員「あんたが縛ったんだけどな」


強盗「彼女に言ってこいよ、君の人生にイイネ100捧げるって」


行員「お寒いだけでしょう」


強盗「とにかく行ってこい、じゃなきゃ刺すぞ」


行員「あ、うああ、分かりましたって」


強盗「どうだ脈あったか」


行員「解放してくれって泣かれました、もう完全に共犯者だと思われてます」


強盗「あの子にちゃんと言ってやりな。俺たちは文学の共犯者だって」


行員「消えて、夏のセミみたいに」


強盗「お前知らねえのか、人質ってのは犯罪者に恋愛感情抱きやすいんだって」


行員「ああ、ストックホルム症候群でしたっけ」


強盗「何でそんな言葉まで知ってんだよ。やる気満々だな」


行員「たまたま知ってただけですよ」


強盗「とにかく人質は強盗に惚れるんだよ」


行員「そんなこと言われても」


強盗「ああああ」


行員「何スカいきなり」


強盗「さてはお前俺に惚れとるな?」


行員「どーしてそーなる」


強盗「印税入ったら、大きな家に二人で住もうね」


行員「やっとられんわ」


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