「渡辺さんの大学受験」作者より

稲兎谷ぴょん

渡辺さんの受験と、渡部くん。

 渡辺さんは、大学受験の会場に足を向けていた。鞄に、お守りがつけられている。自分のものではない、渡部くんが大宰府で祈願したものらしい。


「まあ、渡部くんは、お調子者だから、本人からではないと思うけど。」


 そして、受験会場に着き、会場を見まわした。

「203,203。!! あっ、私の席、渡辺席だ!!」


「お前の偏差値見たぜ、ぎりちょんやろ。」

 渡部くんの言葉を思い出す。

「あなたも、バカね。偏差値って意味が分からないみたい。で、このお守りは?」

「何事も信心やろ、思てな。」


 渡辺席に座れることに安心した渡辺さんは、「よし、今日はいける。」

 


 そして、後日、見事合格発表が届いた。

 高校へあいさつに行く途中、公園に渡部くんがいた。

「どうやった? ワイのお守り。」

「渡辺席になるのは必然だもん! 必然の勝利よ!!」

「な。ま、渡辺席だったん?」

「まあね。」

「よし、俺もいく!」

 と、ブランコから飛んで降りた。


「そか~、渡部席か~。」

「その言い方やめて頂戴。」

「事実やし。」

「違うわよ。」

 高校に着くまで、これが繰り返された。

 だが、渡部の進路は、まだ未定である。


おしまい

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「渡辺さんの大学受験」作者より 稲兎谷ぴょん @usapyon

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