3-06

 ………さて、今この場では、情報量が密集し、大渋滞している。


「う、うう、ん……あ、あれ……ぴゃっ?」

「ふう……あ、大丈夫だったか? っと……そっか、それが、キミの素顔なんだな」

「………―――」


 兜が外れ、露わとなった《剛地不動将》の素顔は――剛健な重装からは信じられない、印象が真逆と言えるほど、儚いまでの美しさを持つ絶世の美少女だった。


 そんな彼女の目の前で、ナクトは彼女を守るため、マントを大きく広げている。守るため、守るためなのだ。真実だもの。


 ある種の攻めの姿勢で守られている儚い雰囲気の美少女は、焦点のあっていない目を白黒とさせ、呆然と絶句し続けている……が。


「………あっ!? わ、わたしの、兜、っ……――ッ!」


 転がっていた兜を拾い、慌ててかぶり直し、元の《剛地不動将》の重装姿に戻る。


 すると、ナクトの後方から、二人の仲間の声が聞こえてきた。


「ナクト師匠ーっ、《剛地不動将》殿ーっ。ご無事ですかーっ!?」

「お二人とも~、お怪我はありませんか~?」


 レナリアとリーンが駆け寄ってくるのを、《剛地不動将》が見とめると。


「! ッ……ッ、ッ――!」


 兜に覆われた顔を、これまた籠手ガントレットに覆われた両手で覆いながら、ドドドドド、と駆け去ってしまった(内股で)。


「きゃっ? 《剛地不動将》殿? ど、どうしたんでしょう……あ、っと」


 その後ろ姿を、ぽかん、と見送ったレナリアが、気を取り直してナクトに話しかける。


「ナクト師匠っ。あの山……ナクト師匠の能力、ですよね? ま、また凄い力で、敵を倒しちゃったのですねっ」

「ああ。山っていうか、爆発の影響で丘くらいになったけど。でもまあ、北から向かってくる魔物に対しては、多少なり障害になるはずだ。土台もしっかりしているし」

「め、目の前の敵を倒すだけでなく、そこまで考えて……さすがナクト師匠ですっ♪」


 子犬のように目を輝かせてくるレナリアに、「そうでもないと思うけどな」と、ナクトは軽く頭を掻く。

 一方、リーンは顎に指を軽く当てながら、少しばかり難しい顔をして――


「《全裸神丘陵ナクト・ゴッドヒルズ》……メモメモ、ですわっ」


「リーン、何か変なコト言ってなかったかリーン」

「うふふっ、変な事なんて全く言っていませんわ、ナクト様っ♪」

「本当か? 《世界》が俺にもっと疑えと囁いているんだが、本当に本当か?」


 詰め寄るナクトに、「うふふ♪」と笑って誤魔化すリーン(強者)。

 多少引っかかりはしたが、何はともあれ、《魔軍》は無事に撃退し。


《城塞都市ガイア》に到着、および――救援完了である――


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