第4話 バスケ!

 真昼の炎天下。


 香夏の「バスケがしたい!」の一言で、近くのバスケットコートに連行されてきた。


 そこまではいつも通りでもう慣れたんだが、何やら先客達が揉めていた。


「僕たちが先に使ってたんだから邪魔しないでよ」


 小学生くらいの男の子3人くらいが先に使っていたらしい。


「下手くそはもっと隅でやってろ」


 そこに、中学生のいかにもバスケやってますって感じの男の子5人が割り込んで来たみたいだ。


 小学生たちが悔しそうにしながら隅に移動しようとしているのを見て、香夏が飛び出していった。


「待ちな、そこの小学生たち。おい、そこの中坊ども!ここのコートの使用権をかけて、私たちと勝負しないかい?」


 また勝手なことを言い始めたよ


「私たちってそこの小学生と合わせて5人ってこと?年上が二人いる時点でずるくない?」


 え?俺もやるの?


「大丈夫!このお兄ちゃん一人換算じゃないから!-1くらいだから!こっちのほうがちょっと不利なくらいだよ」


 じゃあ俺やんないほうがいいじゃん


「ふーん。まあいいや。じゃあやってあげるよ」


 俺の意見なんて聞かれないまま試合が始まってしまった。



 試合の終盤。


 点数は3点差で俺たちが負けている。


 もう言うまでもなく、おれはボロボロです。


 息切れ半端ねぇ。


「このままじゃ、負けちゃうなぁ」


 ボソッと呟いた香夏が一人で突っ込んでいく。


 スリーポイントライン手前でシュートを打つ態勢に入るが、無理に突っ込んだせいで態勢が崩れたままシュートを打つ。


「あ」


 奇麗な弧を描きスリーポイントを決めるが、着地に失敗して倒れてしまう。


「タ、タイム!」


 一旦試合を止めてもらう。


「大丈夫か⁉」


「少しひねっただけだから大丈夫ですよ」


 香夏はすぐに立ち上がって、飛び跳ねて見せる。


「無理そうだったらすぐ言えよ」


「こんなのに本気出して馬鹿じゃねえの?」


 中学生の一人が不貞腐れたように言う。


「…おい坊主、お兄さんから一ついいことを教えてやるよ。

 頑張ってる奴を馬鹿にしてる奴が一番かっこ悪いんだぜ」



 残り一分。


 次のシュートを決めたほうが勝つ。


 相手ボールからの始まり。


 香夏が相手のパスをすぐさまスティールして、突っ込んでいく。


 いや、さっき足捻ったんだからもっと大人しくしてろよ。


 俺も走って追いかけるが全然追いつけない。


 すぐにマークされた香夏が俺の方を見て、ニヤリと笑いながら俺にパスをする。


 パスを受け取った俺はスリーポイントライン手前にいて、周りに相手がいなく、ノーマーク状態だった。


「いけええええええぇぇ‼」


 香夏の声に答えるように俺も叫ぶ。


「うおおおおおぉおぉおぉお‼」


 俺の打ったシュートは一回リングに弾かれる。


 パサッ



 終わった。


 疲れすぎて、ベンチに座ったまま空をぼーっと見上げていた。


 コートでは小学生たちが元気にバスケをしている。


 小学生の体力半端ねーな。


 ぴとっ。


 ぽっぺにいきなり飲み物を当てられ、飛び跳ねる。


「ぷはははッ。お疲れ様です。


 今日は久々にバスケができて楽しかったです」


「おう、そうか。帰ったらちゃんと足冷やせよ」


「はい」

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