第3話 出会い!

 東雲香夏とは同じ高校だった。


 俺が三年生の春の日、日直だった俺は放課後に担任から呼び出されて、とてつもない量の雑用をやらされていた。


 そんなことをしていたら、部活の生徒達が帰り始める時間になってしまった。


 最後に、体育館の横にあるゴミ捨て場にゴミを捨てて帰ろうとした時に、体育館の方から声が聞こえる。


「あんたさ、もうちょっと周りのことも考えてよ!」


 はっきりとは聞こえないけど、部活の事で揉めているようだ。


 部活に入っている人達は大変だなーなんて思いながら俺は雑用がすべて終わったことを報告しに行った。


 やっと帰ってゲームが出来るとウキウキで下駄箱に向かうと一人の女の子がぼーっと外を見つめていた。外は生憎の天気で土砂降りだ。


「どうした?傘ないのか?」


 気になって声をかけてしまった。


「え?ああ、そうですね。どうしようかなーって思ってたところです。へへ」


 無理に作る笑顔と、乾いた笑い。


「嫌じゃなければ一緒に入るか」


 自分で言っといて恥ずかしくなり、顔をそらしてしまう。


「ぷ、はははは。なんですかそれ?キモイですよ?ははは」


 めっちゃ笑うじゃん。恥ずかしいだろ。めっちゃ失礼だなこいつ。


「嫌ならこれ、使えよ」


 俺の傘を差し出す。


「あ、いや笑っちゃってすみません。途中まででいいんでお願いします」




 帰り道。


 女の子は少し暗い表情を浮かべていた。


「なんかあったのか?」


「え?あ、はい。部活でちょっとありまして」


 あー、さっきのやつかな。


「言ってみろよ、聞くことしかできないかもだけどな」


「えーと、私バスケ部なんですけど、本気でバスケをやりたくて、部活の練習頑張ってたんです。頑張って練習して出来るようになったら、バスケしてるとめちゃくちゃ楽しいんですよ。けど頑張りすぎて、空回って、今日もみんなに迷惑をかけちゃいました。へへ」


「別に迷惑かけてもいいんじゃねえか?」


「え?」


「自分のやりたいことしてりゃ、迷惑かけることのなんてよくあることだろ?

 そんなこと気にしてるくらいなら目一杯やりたいことやって、上手くなって認めさせてやればいいんじゃね?俺は頑張って何かに取り組んでいる奴は好きだぞ。」


 女の子は暗い表情から一転して明るい表情で微笑む。


 女の子の表情とシンクロしたかのようにさっきまで降っていた雨が止み、雲間から光がさす。


 傘から出て俺より先をてくてくと歩きながらこちらに振り向く。


「ありがとうございます、気持ちが少し楽になりました」


 光に照らされた彼女は今日一番の笑顔を見せる。


「こんなに優しい人ならこれから練習付き合ってくれますよね?」


 悪い笑みを浮かべる。


「え!?」


 まじかよ、帰ってゲームしたい。


「そういえば自己紹介がまだでした。二年の東雲香夏です、よろしくお願いいたします。」


 頭を下げ、手を前に出し握手を求めてくる。


 これは逃げれなさそうだ。


「よ、よろしく」


 苦笑いで答える。


 帰りたい、厄介な娘を慰めてしまった。


 この日から、俺が香夏に振り回される日々が始まった。

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