第3話

 好きの反対は無関心だと、誰かが言ってた。その通りだ。


 俺は昔から、誰かに、いや、何かに特別な感情を抱いたことがない。


 ピアノを始めたのは3歳の時だった。当時の俺にはその鍵盤は重くて、沈めて浮かべて沈めてを繰り返す作業が苦手だった。


 でも別に嫌いではなかったし、先生も褒めてくれるしでそこそこ真面目に続けてた。


 確か6歳か7歳だった時に大きな賞を貰って、両親がすごく喜んでくれてた。


 高校に上がる前にピアノ教室はやめたけど、その代わり曲を作るようになった。


 「俺とバンドを組んでくれ」


 そんな時、片瀬 一歩と出会った。


 俺はピアノしかやってこなかったから、てっきりキーボードをやらされるんだと思ってたけど、片瀬は兄貴の古くなったベースを持ってきて貸してくれた。


 「ピアノって正確なリズムとか割と大事なイメージだし、零はベースっぽい。」


 一歩は俺に、熱中できるものをくれた。


 一歩は、たまに屋上でキーボードを弾いてる俺をよく見てた。


 でも俺は、お前のために曲を書いたことはないよ。


 1度もないよ。

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