10 ゲームはみんなではしゃぐに限る!

 結ちゃんに本を買ってもらって、みんなの買いものも終わったところで、移動。

 次にきたのはゲームコーナーだ。

 平日だけど、同じ学校の子なのか、中高生の子がそこそこいる。

「なにしよう、いっぱいあって迷うなあ」

 ゲームコーナーにはたまにくるけど、毎回こうやって悩んじゃう。

 おもしろそうなゲームがいっぱい、音をぴこぴこ鳴らして誘ってくるのだ。

「まずはあっちのほうから……」

「直陽ー!!」

「おわあっ!?」

 急にお腹の横になにかがぶつかる。

 見てみると、月湖ちゃんがしがみついていた。

「ど、どうしたの月湖ちゃん」

「クイズゲームで勝負しないか? 負けたらジュースを相手におごるんだ」

「クイズかあ……」

 クイズ自体は得意ってほどじゃないけど、やってみたい。

 一応、テレビ番組のクイズはそこそこ正解できてるし!

 ……三択問題ばっかだけど。

「よっし、やろっか」

「絶対勝ってやるからな!」

 さっそくゲーム機の前に行く。ゲーム機は二つあって、画面に出る同じ問題を見て、早押しで答えるらしい。

「お。三択問題だ……よかった」

「どうした直陽?」

「う、ううん。なんでもない!」

 百円を入れると画面が変わって、少しの説明をはさんでからクイズに移る。

 緊張するなあ。

『問題! 二月の誕生石は、次のうちどれ!』

『一、アメジスト!』

『二、トパーズ!』

『三、ダイヤモンド!』

 う、う〜ん。

 ダイヤモンドはたしか春だったと思うけど……トパーズ、はいつだっけ? アメジストもはっきりしないなあ。

「よーし、オレはこれだ!」

 もう決めたの!? 早い……。

 ええい、カンでいってやる。一番だ!

『正解は一番! アメジストでした! プレイヤー二の正解!』

 プレイヤー二、ボクのことだ。よかったあ。

「さすがだな直陽。でも、今度はオレが正解してやる!」

 グルル、と獣のようにうなって画面をみる月湖ちゃん。

 けど、今のは偶然だったからな……今度はわかる問題がでますように。

『問題! この写真の花の名前は!?』

『一、ダリア!』

『二、コスモス!』

『三、菊!』

 えーっと、この形は、多分ダリアだよね。

 あれ、でも丸い感じが菊っぽいかも……。

 どきどきしながら、三番に決める。間違えてませんように!

『正解は三番! 菊でした! プレイヤー二の正解!』

 肩から力が抜ける。危ない危ない。

 月湖ちゃんは逆にがっくりとうなだれて、見るからに悔しそうだ。

「こ、こうなったら」

 ん? なにか言ったような……?

 ま、気のせいか。ボクは目の前の問題に集中する。

 でも、そこからというもの、月湖ちゃんの快進撃がすごかった。

 どんどん正解していって、スコアの差もどんどん広がっていく。

 ……なんか、おかしくないか?

『それでは最終問題! マレーシアの民族衣装は、次のうちどれ!』

『一、アオザイ!』

『二、バジュクロン!』

『三、チーパオ!』

 なにそれ!? 最終問題なだけあってさっぱりわかんないよ〜!

「ふふふ、オレはこれにするぞ」

 自信満々に月湖ちゃんはボタンを押そうとする。でも。

『湖上サマ。先ほどから不正をされてますね』

「えっ!?」

 レイニーが急に口を開く。

 スマホを見ると、無表情のままレイニーは話しだす。

『三問目から、ボタンを押すスピード、正答率等が不自然にあがっています。おそらく、湖上サマは自分のBSAIに答えを検索させ、教えてもらっているのかと』

「ず、ずるじゃん!」

 そう言って月湖ちゃんを見ると、明らかに焦っている。

「お、お、オレがずる? そそそんなことしししししてないぞ!!」

 嘘がつけないタイプにもほどがあるよ……。

 というわけで。クイズ勝負、月湖ちゃんの不正負け。

「うう、ずるなんてしなきゃよかった……」

『だから言ったジャン……もう』

 ジュースを買う月湖ちゃんを、月湖ちゃんのBSAI・アルノがなぐさめる。

『オレっちは乗り気じゃなかったんダ。次からはちゃんと勝負しろよナ』

「わかったよ」

 ぶう、とふくれながら月湖ちゃんは言う。なんかハムスターみたいだ。

「直陽」

「ん?」

「もうずるしないから、またゲームやろうな」

 そう月湖ちゃんは言って笑った。

「もちろん!」

 あ、そうだ。

「月湖ちゃん、今パトリスちゃんが音ゲーやってるから応援しに行こうよ!」

「おお、いいな!」

 そうと決まればさっそく、音ゲーコーナーに行こう。

 音ゲーのコーナーには、ドラムの形のゲーム機を叩くもの、ダンスするように足で操作するもの、いろんな種類があった。こっちにはあんまりきたことないけど、種類が豊富だなあ。

「あ、結ちゃん! 花袋!」

「あっ、直陽! おーいっ」

 そこにはすでに二人がいて、近くのクレーンゲームで落とした大きなポテトチップスを持ってた。

「お、二人とも! クイズはどうだった?」

「そ、それは聞くな花袋! それよりパトリスは?」

 月湖ちゃんはおどおどしながら花袋に聞く。

「あー、それがね」

「ん? どうしたんだ。結も花袋も、難しそうな顔して」

「いや、見てたらわかると思うよ」

 花袋がそう言って指をさす。そこには、パトリスちゃんがいた。

 パトリスちゃんの前のゲーム機は、丸い形をしたタッチ式のもの。手をすべらせたり叩いたりしてプレイするみたい。

「あれ、なんでパトリスちゃん軍手してるの?」

「手が動きやすいようにだって」

 へえ。なんかガチのゲーマーみたい。

「お。始まるよ」

 楽しみだな、とうしろから画面をのぞき見る。

 ……ん? 難易度、めちゃくちゃ高くないか?

「難易度、間違えたんじゃ……」

 その瞬間だった。

 パトリスちゃんの手が、あっちこっちに動きだした。

 流れてくるカラフルな模様を叩いて、叩いて、すごい早さでさばいてく。

 負けじと模様もどんどん早くなるけど、パトリスちゃんはそれを涼しい顔で叩く。

 画面いっぱいの模様は、なくなって増えてをくりかえして、ボクはぽかんとしながらそれをながめる。

 パトリスちゃん、めちゃくちゃゲームうまいじゃん……。

 ボクなんか、目で追いかけるだけでいっぱいいっぱい、というか、目でも追いきれない。

 そして、あっというまに。

『フルコンボ達成! パーフェクト!』

 うそお。

 気づいたら、パトリスちゃんの周りにはいっぱい人がきていた。

「すごいなー! 動画みたいなプレイだった」

「うまいねあの子」

 す、すごい……。

「パトリスちゃんおつかれ! すごかったよー!」

「ありがとー……流石に、つかれた」

 パトリスちゃんは大きくのびをしながらこっちにきた。

 へろへろと近くのベンチに座りこむ。

「めちゃくちゃ音ゲーうまいね。びっくりしちゃった」

「昔からこればっかやってるから。けど、他のゲームはそんなにうまくないよ」

「いやー、でもすごいよ」

 ボクなんか、どのゲームも普通ぐらいのレベルだし。

「次どうする? 他にやりたいのとか…」

「じゃあ、私プリクラ撮りたいな」

 結ちゃんの言葉に答えたのは、花袋だった。

「ほら、友だちどうしでよく撮るものじゃん」

「そうだねー。じゃあ撮ろっか」

 いいねいいね、とみんな賛成して、パトリスちゃんが回復してからプリクラ機のところに行く。

 何個か種類があるけど違いがわからないから、適当に選んで中に入った。

「五人でも入れたね、もっとぎゅうぎゅうになるかと思った」

「えーと、操作は……こうか?」

 前に背の低いボクと月湖ちゃん、中ぐらいのパトリスちゃん。うしろに結ちゃんと花袋が並んだ。

「よし、撮るぞ!」

 えっ、もう!? ポーズとかってどうすればいいんだろ。ピースとか?

 とりあえず、両方の手でピースをする。

『三、二、一……はい、チーズ!』

 パシャ、と白い光が小さな部屋にあふれた。まぶしい。

「……目つぶっちゃったかも」

「直陽、まだ撮るぞ」

「あっ、ポーズしないとっ」

 プリクラをそんなに撮ったことがないから、慌ててしまう。

 わりと枚数撮るんだな。

「よし、これで全部かな」

「じゃあ、デコレーションやりたい」

「オレもオレも!」

 何枚か写真を撮ったあと、画面が移ってデコレーションの画面になる。

 みんな、ペンをまわしあって、ネオンを光らせたり猫耳を頭に置いたり、自由に描いていく。

「ほら、直陽も」

 結ちゃんにペンをまわされて、少し考える。

 かわいいのがいいよな……よし。

「おっ、直陽ちゃんお花?」

「うん。かわいくていいかなって」

 パステルカラーの小さな花を、画面のすみに何個も咲かす。

 我ながら、いい感じなんじゃないかな。

「あっ、ボクの顔に鼻めがねつけたの誰さっ!」

「あはは! いいじゃんいいじゃん〜」

 みんなで笑いながらデコレーションしてたら、制限時間はすぐにきちゃった。

『またきてね〜』

 その音声と一緒に、受け取り口からプリクラが出る。

 何枚もいろんな写真があるけど、どれもみんないい顔だなと思う。

 ピース以外のポーズもしたらよかったな、と少し後悔はしたけど。

「すごくよく撮れたね〜。あたし、宝ものにしようっと」

 結ちゃんの言うとおり、これは宝ものだ。なくさないように、大事にしなきゃ。

「花袋、プリクラ楽しかったね」

「ふっふっふ、感謝してくれてもいいんだよ?」

 そう言って花袋は笑う。もう、からかって。

「そろそろお腹へってきたから、直陽ちゃんが言ってたクレープ食べに行こっか」

「そうだね。あ〜、楽しみだなあ。なににしようか迷っちゃう」

 ここのクレープ屋さんは、おいしいことで有名なのだ。

 みんなはなににするんだろうなと考えながら、エスカレーターに向かった。

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