プロローグ007

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 シュッ――!!

 

 およそ距離として30メートルほど。

 木々が生い茂る森の中の、そこから銀色の矢じりが太陽の光を反射させながら矢は飛び出し、青空を飛翔するタカのような鳥に命中すると、矢が突き刺さったまその鳥は墜落する。

 

 俺は捕えた獲物を取るべく、弓を片手に墜落した場所へ走る。

 

 そうして見つけた獲物はソニックバード。

 タカのような茶色の胴に白い頭。大きさは10才の俺ほど。

 

 そう、俺は10才になった。

 

 魔法は以前よりも幾分も師匠の鬼のような教えで上達し、こうして弓や狩りなどを教えられてできることが増えた。

 無論、鍛冶も……。

 

 第一成長期で成長した体は教えられることを次から次へと吸収しできることを増やしてくれる。

 それと、成長してよかったというのはおかしいが、今の俺には一つ鍛冶のほかに生きがい見たいな楽しみがある。

 

「よしっ」


 仕留めたソニックバードをロールで縛り、背に担ぎ家へと帰ってくる。

 

「母さんっ!!」


 扉を開け、取った獲物を見せたく勢いよく叫ぶように母を呼ぶ。

 

「なんだ。騒々しい」


 椅子に座り客人と話していた母が、そっけない態度で入口の俺へと返してくれる。

 

「ジンさん。きてたんですか」


 俺は獲物を置き、母の迎えに座る客人を見ると一目で誰か分かった。

 

 筋肉質の俺一人ぐらいの太い腕。黒髪の短髪に薄い顎鬚。

 軽装だが、赤い啜れたマントの付いた鉄の銀色をした鎧を来て、腰には剣が鞘に納めれている。30半ばのおじさん。

 

 そんな客人のジンさんは俺を見ると声をかけてくる。

 

「おうボウス、邪魔してるぞ。なんだそれ?ソニックバードか。まさか、お前ひとりでとったのか?」

「はいっ」

「ほーう。そいつはすごい」


 担いでいるソニックバードをまじまじと顎に手を当て見て、そんな嬉しい事を言ってくれる。

 どうも、俺はこの人の前だと期待してしまいついつい子供のようにはしゃいでしまう。

 

「まったく、また勝手に取って来て。危ないからやめろと言ったのにお前は」

「まあまあ、ありえないだろ。10歳の子供が魔物を一人で狩ってくるなんて。それもソニックバードだ。それをやってのけるなんてすごいと思わないか?」


 そう、ソニックバードは子供に簡単に狩れるような魔物ではない。いや、そもそも猛獣である魔物を刈るなど子供でもできない。というよりも、そんな危険なこと、街に住む子供なら普通ならばしようとしないのだ。

 魔物は小型だろうが大型だろうが基本肉食で獰猛だ。その上、通常の動物と異なり魔法を扱う事が出来る。

 そんな生物に攻撃を仕掛け、もし怒らせでもすれば子供など簡単に殺されてしまうだろう。

 

 先の場合、弓で一発で射抜いたが、もし外れていたら?

 おそらくは間違いなく俺を標的に魔法でも放って来ただろう。

 

 それも、強力な。

 

 ソニックバードがその放つ魔法は風の魔法。

 高圧縮した風の刃を羽から放ち、簡単に太い木々でも根元から切り裂いてしまうほどの魔法だ。だから子供の体なんて一瞬で真っ二つ。

 そんな危険な魔物に普通はケンカを売って一人で狩ろうなんて思わない。

 

 それをこうしてやってのけているのだから、ジンさんが驚くのも無理はないし、母がきつく言うのも仕方はない。

 

 とはいえ、それだけの危険を冒す意味はある。

 ソニックバードの肉は高級。

 話しでは街の市場ではどんな鶏肉よりも根が張ると聞く。

 

 もちろん、味はその値段に見合う美味で俺はもちろんユリアが特に大好物だ。

 

 だからとこうしてたまに取ってくる。

 

 正直あの程度の魔物であれば一撃で仕留めれるし、仮に初激を外して魔法を撃たれたところでソレを回避もしくは防ぐことだってできるので、ソニックバード程度の危険度であればさほど問題ではない。

 

「処理をして台所に吊るして置け後でユリア手伝わせて晩飯にしてやる。ジン――貴様も食べるだろう?」

「あ……ああ」

「ホント?じゃあそれまで剣の稽古を」


 ソニックバードを置き、二人が挟む机に手を着き身を乗り出して俺はそれを期待して聞く。

 

 そうだ、俺の今の鍛冶以外の楽しみ。剣の稽古だ。

 

 もちろん。通常エルフは剣を握らない。

 扱う獲物は基本は魔法。何か使うとしたら先ほど俺が使ったような魔法の仕様を妨げない弓を扱う。けれども俺は無理言って剣の稽古をつけてもらっている。

 この国でもっともの大きな国、オーランド王国の精鋭騎師団隊長ジンさんに。

 一人で一個小隊以上の実力を持ち。街一つを焼き払い破壊するドラゴンを一人で狩ったという伝説を持つ剣士に。

 

 まあ、そもそもなんでそんな大物

 

 なんでも母であるユグドラシルが知り合いなのかということだが……。

 いや――そもそもユグドラシルだから知り合いなのだ。

 

 ユグドラシルは過去に世界を支配していた魔王を勇者と倒した賢者。

 そんな大魔法使いがこんな森のなかでどうして暮らしているかは、訊いたことがあるが教えてくれないので知らないが、別に外とのやりとりを遮断している訳ではない。

 もちろん、外とのパイプは持っていてそれなりの権力者。

 ここで言うと、ジンさんのような国のトップ、所謂王を守る国で一番偉い騎士ともこうして知り合いだ。

 しかも、ジンさんに至ってはどういう理由かは知らないが顔なじみで、たまにこうして向こうから非番の日にくるまでだ

 

 俺はそれを利用してというか、たまたま剣士というのを訊き。無理を言ってお願いをした。

 無論、最初は断られたし、ユグドラシルも反対した。

 

 けれども、どうしても譲れなかった。

 だからジンさんがくるたびにしつこくお願いし、最後には剣を自分で作っていることも含め俺のやる気に折れ剣の稽古をつけてくれるようになった。

 

 まさに、役得というのはこういうことだろう。

 剣士に、それも国を代表すぐらいの凄腕の剣士にならうことなんてそう簡単にはできない。

 もちろん、剣の稽古は簡単なものじゃなかった。

 ジンさんも教えるなら教えるで、いくら俺が子供でエルフだろうが実際の大人の兵士の部隊に稽古をつけるように厳しく教えてくれ、俺も、それに答えるようにみるみるウチに剣の腕は上がり、今では互角とは言えないがそれなりにジンさんと渡り合えるぐらいにはなった。

 もちろん、エルフな上に子供である俺は人間のそれも30半ばの現役バリバリの筋肉質な剣士に身体的にかなう訳がないので、身体の強化魔法は使わせてもらっているが、将来的には魔法ありでもこの人を倒したいと思っている。

 

 ああ――魔法なしはどうだ?というのは野暮な話だ。

 正直そこは投げ捨てている。

 というより、あくまでも現段階での目標の話だ。そんなこと誰に言われるまでもなく最後の目標だし、それを達成したいと思う。ただ、生物的にそれは難しいのも事実。

 エルフはヒューマンにも身体能力そもそもが劣る。そこをカバーしてジンさんに勝つというのは正直な話、途方もないと思う。

 それだけ、ジンさんが強く今の俺ではたどり着けない境地に居るからということでもあるが。

 だから、俺は段階的に目標を設けている。

 

 けれど、いつかはきっと。

 

 そう強く俺に、ジンさんは。「ああ」と答え立ち上がり。

 

「いくか」


 笑って誘ってくれた。

 

「いくのはいいがまずはそいつの処理だ。ジン、先の話また後でな」

「おう」


 よしっ。

 母さんに言われ、慌てて俺はソニックバードを持ち捌けるように家の裏に行き血抜きをして羽をむしり、肉だけにする。

 それを数分足らずで、手慣れた手つきで行い、その間、その様子を感心そうに見ていたジンさんと早速稽古場に向かった。

 

 

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