『 有限 』

行平かのん

プロローグ


 人間というのは、どうやって作り出されたのだろうか。

 性格や、感情は、どこからつぎ込まれているのだろうか。

 答えは無限にあり、すべて正解でなければ、間違いでもないのだろう。


ただそれぞれが自身の答えを正しいと信じていれば、それはある意味で答えとなっているのではないだろうか。

 だがそれを時として覆す人がいる。


 例えば、僕だ。


 僕はその全てにおいて、正解の答えしか持たない。理論の上に成り立ち、計算の上で作り出された『人間』だからだ。性格も、感情も、プログラムの中にある一つに過ぎない。生命を持たない色あせたものに思えるだろうか。得体の知れない物体に見えるだろうか。けれど、僕は操作されていようが、実験物であろうが、ずっと並大抵に過ごして来た。


 プログラムにとらわれた世界でも、僕は特に普通の人と変わらない生活を送っていた。それなりに時間を費やし、それなりに充実した状態を手に入れてきた。この充実した状態が続けば、他には何もいらないとすら思っていた。なのに、常にどこか虚しくて、自分の中に穴が空いているのを感じる。どんな物でも埋められなかった穴が。

 人間の欲望とは厄介なもので、望むものが手に入れば次が欲しくなる。手に届かないものを、延々に欲し続ける。


 名誉、学力、地位、金。


 それなりに全てが揃っている僕は、何が欲しいのだろうか。 

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