絶望

昨日の悪夢もあったし、友人を誘拐した”希望の門”が何をしてくるか分からない。


それでも僕は、教会に行こうと思う。ようやく友人を助けられるチャンスが来たんだ、無駄にするわけにはいかない。


『いいのかい?依頼された仕事だし、こっちでなんとかする予定だけど。』


「大丈夫です。それに”希望の門”が若い男達を集めてるなら、僕は無警戒で入れるはずですから。」


それから僕はなんとか探偵さんを説得し、今は”希望の門”の教会前にいる。


これから入る協会は、いつも学校からの帰り道で見慣れたはずなのに奇妙に見える。見た目も、匂いもだ。


開けっ放しの教会の扉からは、遠くからも感じられるぐらい甘ったるい匂いがする。儀式の為のお香だろうか?


頭が匂いでフワッとするのを堪え、「それじゃあ、調査してきますね。」と中に入る。


『気を付けて、十分後には連絡を頼むよ。』その言葉を後にしながら。


~~~~~


中に入って見えたのは、沢山の信者に囲まれて演説している男。そして、男の前にいる友人。


友人はベットに乗せられて横たわっていた、ひどく痩せこけた姿で。可哀想に、今助けてやるからな。


信者の間を通り抜け、僕は友人の元へ駆ける。僕の行動を信者共が邪魔するかと思い警戒したが、全くそんな気配はない。


全員、謎の言葉を呟いているだけ。しかもその言葉を僕は何故か理解できる。『復活せよ、希望の門から』


だけど僕には関係ない。今やるべき事は友人と帰り、”希望の門”を警察に通報するだけだ。


その為にベットで横たわってる友人を起こそうとし、その瞬間、友人が裂けた。


何が起きたか理解できない。突然、頭の中に悪夢が蘇る。そして友人から、大いなるモノが現れていく。


周りは歓喜に包まれて、皆、口々に願いを言っている。そんな中、僕は戸惑い震えるだけ。


そんな中、大いなるモノが叫んだ。『なぜ眠りの邪魔をする!』その言葉は繰り返す、信者の身体を裂きながら。


歓喜は悲鳴に、願いは助けを求める叫びに変わり、ここにいる僕を含めた全員が逃げ出そうとする。


だけどそれは叶わない。あっという間に全員の身体が叫びで引き裂かれ、残ったのは僕一人。


その状況で僕はただ、震えていた。


~~~~~


あの後、僕は血と死体まみれの教会に一人、横たわっているのを警察官に発見された。


起こされ、教会で何があったか聞かれているけど、僕は何も答えないと決めている。


アレが、大いなるモノが僕を、『お前が希望の門だ』と言った事も何もかも全部だ。


そもそも、何もかも知らない方が良かったんだ。知らない方が幸せだったんだ。

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無知故の幸福~街角にある教会を、決して覗いてはいけない~【クトゥルフ短編コンテスト参加虫】 アイララ @AIRARASNOW

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