第10話 邪教

 ......ちょっと...寒くなってきた...。でも~~~~頑張るぞぉ~~~~だって玲子ちゃんに電話したいも~~ん!でも、なんていって電話すればいいんだろう...。びっくりするよね...。用無くても電話して良いっていってたけど...そんなの申し訳ないよ~~~。それに、あの子の為になってあげたいもん////////


 それにしても...今日...本当に誰も公園に来ないな...暗くなってきたっていうのもあるけど...ランナーの1人ぐらいはたまに見るんだけど...。う~~ん...


 まぁ...それより、はやくあの不審者来ないかな...。


 ...............


 ......ふぅ...


 そういえば...結局、中田さんは......なんだったんだろ...。......僕のせいじゃない...らしいけど...いや...もう、考えるのはやめるか...。でもな...そうは言っても...。


 あらら...落ち着いちゃった...


 あぁ…このままでいいのかな。人生どうなるんだ?先が見えないなぁ。好きなことをしろって言われても、好きなことなんて無いし…それに、昔やろうとしたんだけど…その一つのことをするためにさらにやらなくちゃいけないことがあって、結局何をしたかったか忘れちゃったんよなぁ…。


 …ただ、毎日楽しく過ごせたらいいんだけど…なぁ…。


 この人生に何か…こう、意味があるのか…?


 うんうん…違う、今日からまた新しく始まるんだ。きっと何かが始まる。そう、今日新しく人と知り合ったし!もう、友達だよね!友達…?


 そして…また、新しく知り合って…そして…関係を切られちゃった…?


 あ…あ…なんにも始まらない…


 いや、違う!なんか、よくわかんないけど、あの人たちと今日知り合えた!玲子さんの番号も貰った!何かが今までと変わってるんだ!今までの静かな絶望とは違う!何か、何かが変わってきてるんだ!


 今日から変わるんだ!この人生は今日から何かに変わる!どんな変化かはわからない!でも、自分では変化できないんだから…どんな変化であってもそれが欲しいんだ!


 だから、なんであろうと…この携帯であの人に報告しなくちゃいけない。僕が僕で無くなるために。これはチャンスだ。人と関係を持てるチャンスなんだ。


 「やぁ、また会ったね」


 横…少し離れたところにおじさん。おぢさん。この前と同じ様にくたびれたシャツを着ている。今日はこの間みたいに回ってない。


 「こんな所で、また一人で座り込んでどうしたんだい?もう、ここら辺は暗い、危ないじゃないか」


 この間も思ったが、おじさんはどうして話しかけてくるんだ。普通知らない人間に話しかけてくるか?やっぱり、不審者であることに変わりないじゃないか。やっぱり、本当にあの人たちが言っていた様に迷惑する存在なんだ。厄介な不審人物なんだ。やっぱり、そうだ。そもそも他人に急に話しかける人間が周囲からして気持ちよく思われるわけがない。それが親しければ止めたくなるはずだ。あの人たちの言う通りなんだ。これは善意なんだ。電話しよう。あの子に連絡しよう。


 「君、少なくとも今日はここからは離れた方がいい、いつからいるんだい?この公園の周りに白いスモーク張りのバンが何台かあることに気づいていなかったかい?」


 何を言っているんだ。いや、このおじさんは不審者なんだ。僕は進まなきゃいけない。


 「君…あんまり会話が好きじゃないのは知ってるけど、ここはどうか聞いて欲しいな」


 でも、それは本当か。いや、そんなことはどうでもいい。いや…どうでも良い?あの人たちだって十分怪しかった。いや、あの人たちの方が怪しい。集団だ。怪しい集団だった。でも、そんなことはわかってる。わかってるんだよ。でも、進みたい。今とは違う何かになりたいんだ。でも、これで連絡して、このおじさんは…。いや、でも不審者には変わりない。僕がやらなくてもいつか警察の世話になる。なら、身内、事情を知ってそうな人間を呼んで穏便に収めた方がこの人の為にもなるんじゃないか!そうだ、そうに決まっている。さぁ!連絡しよう!連絡しよう!


 「あの……あ…やめた方がいいですよ…し…知り合いって人が…迷惑してるって言ってて」


 確認が取りたい。罪悪感が。いや、それより、この見ず知らずのおじさんを傷つける…?よく分からないけど、中田さんも傷ついて…そして…誰なんだ…あの見ず知らずの子もなんか傷ついて…。なんで、なんだ、罪悪感…?開放されたい…?この罪悪感…を抱えたまま、行動に移せない。確信が欲しい。不審だけど。だけど…

 

 「あ、なるほど、君、電話してくれないかな、今目の前にいるって言って」


 おじさん…?


 「それとも、君だとかけにくいかな?だったら、僕がやるよ、電話かけて僕に貸して?」


 「え…え?え?あ…」


 「それはね、ま、知り合いなんだけどさ、ちょっと話すと長くなるから、巻き込んじゃってごめんね」

 

 電話かける…?いいのか?かけていいのか?電話を…携帯を取り出して…。え…?どう言うこと?何?なに?普通にいいぶんがあっていうみたいなこと…?え?


 かけてくれって言われた。え…?え…?かける…?かける…かける?番号を打ち込んで…コール音。おじさんに携帯を渡そう。よくわかんない。そして、何より確信がない。でも、こうなったらかけるしかない。両方からかけろと言われてる以上。そうだよ。しょうがないんだよ。両方から言われてるから。


 「久しぶりだね、まだこんなことやってんの?楽しそうだね?どういうつもりかな?何にも知らない女の子を巻き込んで...そろそろ諦めてくれないかな?」


 え?何を話してるんだ?どういうこと?...え??


 「急だし巻き込んじゃって悪いんだけど、一緒に来て、そうしないと君は死ぬ」


 おじさん?その手は?そんな風に手を差し伸べても、とれるわけなくない?おじさん?なんで、その手を取れると思うんだ?おかしくない?僕はこのままの人生が嫌だった。でも、選ぶ自由はあるよね?何を言ってるんだ?おじさんとあの人たち、どっちを信じたら...いや、どっちについていったらいいほうに代わるか。


 あの人たちについていったら楽しいかもしれない。よくしてしれるかもしれない。なんで、それを振り切って、おじさんの手を...。


 「早く!早くしろ!死にたいなら良い!3つ以内にこの手をとれ!おいていくぞ!」


 ひっ...

 手をとっちゃった...

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おじさん 蛇いちご @type66

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