第4話 紅一点?

 おじさんとの感動的な別れを終えて、一人ベンチに座る。一体何だったんだ?その答えはたとえどれほど考えてもでてこない。ただ、不審者であったということしか分からない。


 まぁ、どちらにせよ、この心の中ともいえる個人的領域が完成したから、結果オーライ。バッチリだ。ただ、明日以降も奴が来て僕の心をざわつかせるなら...きっと、首でもくくるだろうね。


 ふぅ...


 息が白い...そうか、今年はどうやら何日も記憶を飛ばしてる日があるのか。改めて自己認識が進んだ、就活なら敵なしだ。自己PRに自信満々で書ける。


 ...


 はぁ...


 毎日が素晴らしすぎる。理想通りの暮らしだ。なんて、リア充だ。きっと、未来の孫も嫉妬する...。いつか、自伝を出す時にはこの部分を書くことが楽しみでしょうがないだろう。


 ...


 寒さは凄い。寒さは空気中にエナジードリンクをばらまくんだ凄いカフェインいっぱいのやつを...改めてはっとさせられたぜ...。


 一体、なんだというのか。何も生み出してない。ただ、毎日生きているだけだ。それも、すごく惨めに。この現状を変えなくていいのか?いや...わかんないけど...まぁ...さぁ...。もうちょっと、理想に近い暮らしでもよかったんじゃないですか...知らないですけど?もうちょっと...努力すればいいんじゃないですか...?


 でも...だって、楽じゃん。なんだかんだ言って、今の生活に甘んじてるのが楽じゃ...ない...?ギリギリだけど飯は食えてるし...2ch見てたら休日も終わるし。...他は何にもないけど......。ほんとに何にもないなぁ...。


 いつか、この惨めさは誰かを刺す包丁になる。それは、自分かもしれないし、他人かもしれない。見ず知らずの。


 ...


 なんだ?今日。やたらと、思考が巡る。それも、自己批判ばっかり。言葉が星なら1年は24時間だ。普段はこんなんじゃないのに...。どうして、今更こんな...なんだろう...後悔...?後悔ばっかり...。


 あいつか...。あいつは、立ち去る時に特大の山火事を残していったんだ。直接じゃない。だから、木から葉っぱをとっていつでも火事になりやすい状態にしたんだ。どちらにせよ犯罪だ。勝手に伐採するなんて。


 この完璧な結界が崩壊して、また無になれる場所がなくなったんだ。実家が全焼しちゃったんだ。


 あぁ.................................現実なんて...いらないから...甘い夢だけ見ていたい。


 はぁ...。


 昔はどうだったっけ...?もうちょっと、良い暮らしだったし...友達もいたよな。あれ?うん...いた、いたはず。いたよね...?そう、一緒に...あの、唯一の遊び場の川沿いでね...あれ...?なにしたっけ...。そう、あの頃も懐かしいなぁ...初めて恋をしたとき...あれ、そんなことあったっけ?うわ...思い出したくない。そう...あの頃とか...あのときとか.........あの...あの...あの子は...一人で泣いてた。気の毒に思ったけど...でも、見てる事しかできなかった......あれは...なんでだっけ............。


 あの日、あの子は泣いてた。登校してすぐの事だったから、面食らった。話しかける仲でもなかったから、遠巻きに見てたけど、HRが始まってもずっと泣いてた。だから...そうだ、クラスが変な雰囲気になって浦田がHRを切り上げた。そして、あんまり酷く泣くもんだから、話にならなくて、落ち着いて話を聞くために連れてかれた。副担任が来て、そのまま授業に入ったけど...暫くして、浦田が、あの子が早退するからって荷物を取りに来てた。体調不良...って言ってた。


 それ以来、卒業まであの子を見る事は無かった。


 あの子は......学校に............来なくなったんだ..................


 ..............................。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る