第9話 巫女とロリの対峙

翌日になり、僕とミチルはお客様が待つ、山の中の小さな集落を訪れる。


小さな川が家の前を流れている。瓦屋には黒いカラスが2匹止まっていて、僕とミチルを軽く睨んでいる。


「なかなか古い家だねえ」


「古い家は、霊が多いかも」


ミツルが不敵に笑った。こいつはただの心霊マニアかもしれない。


「嫌なこと言うなあ」僕は顔をしかめる。


ミチルはお客様の家にまで巫女の格好で、赤い袴を穿いている。早朝なので、村人に見られて騒がれないのが、実にありがたい。


クアアというカラスの声に押されて、僕らはドアの呼び鈴を押した。



5分後、僕は居間の掘りごたつをにらんでいた。あまりにも危険な煉炭ゴタツ。人の命を奪いかねない兇器だ。


「どうぞどうぞ、寒いんで入って下さい」


曽根崎というクライアントのお母さんが、熱心に兇器に足をいれろと勧める。


(掘りごたつで、幼女の前で巫女さんの尻を触る青春か……)


ミチルはためらわずに、暗黒の宇宙を抱えたコタツに色っぽい赤い袴の下半身をさしいれる。


「死んだインコのチュン吉さんを、見て下さい」


 小学生の低学年風に見える優香ちゃん。大きな目を僕に真っ直ぐに向けてきた。動物の霊を見るのは初めてだが、どうなることか。


「そ、そうですか、じゃあインコの霊を探して見るね」


 僕はなんとか彼女の信頼に答えられるように、気合をいれた。


「はあああああああ、っふううういいいい、ぬおおおおおお」


しかし、いつもの通り、霊視能力は発動はつどうしない。


僕は右隣にいるミチルに視線をむけた。ミチルは眉間にシワを寄せて僕を見つめ返す。顔小さいなあと感心する。



「このお兄ちゃん、絶対インコの霊が見えるから安心してね」

「はい、信じてます」


 ミチルはいきなり僕のほうに身体をすり寄せてきた。尻を触らせる気満々だ。


ところが……


「なんで、いきなりお姉さん近づいたの」ロリが騒ぐ。

「打ち合わせですよ」

「打ち合わせってなんですか」


小学生低学年の優香ちゃんには難しい言葉だった。


「お兄ちゃん、お姉さんが近くにいないとインコ見えないの」

「でも、くっつき過ぎですよ。まじめにやって下さい」

「真面目にやってますよ」僕らは抗議した。

「イチャイチャしないで下さい」

ロリが僕とミチルをにらむ。イチャイチャとは高度な表現を使われる。


「我儘娘に付き合っていただいてすいません。とても可愛がっていた雄のインコなんですよ」

付き添いのお母さんは、我々の苦労も知らぬ顔で茶を啜る。


僕とミチルはキスも出来ず、尻のコンタクトもかなわず途方にくれた。欲情できないと霊が見えない。僕はミチルにささやいた。


「トイレにいくふりして、あれしようよ」

「でも、ものすごい見張ってるよ」

「とにかくいこう」


僕はコタツから立ち上がった。ミチルも不満そうに立ち上がる。


「ダメいっちゃ、あやしい」ロリが言い出す。

「ちょっと相談しにいくだけだから」とミチルがいうと

「手品の相談でしょ。ダメですよ」

「霊を見るのは手品じゃない」ミチルがロリを睨んだ。


「じゃあ、一人でトイレいくわ」


にらみ合う、ロリと巫女をおいて僕だけトイレに入った。



















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

巫女の巣 欲情すると霊視できる男子高校生が巫女さんの神社経営を手伝う物語 不燃ごみ @doujjimayu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ