無人島

ロボ太郎

第1話

新しい無人島が発見された。


島国のA国と大陸のB国の間に浮かぶ無人島は、どちらの領土にも今のところなっていない。


一般に、新しい島が発見されると、最初に占有した国が領有権を得る。


南極近くの無人島がノルウェー領土となっていることもあるのは、そういうことだ。


今回発見された島の領有権がどこにあるかというと、発見されて1カ月、誰にもわからなかった。


国よりも先に、少し変わった男、F氏が無人島を見つけてしまったのだ。


F氏はいくつかの国の国籍を有していた過去のある人物だが、今は無国籍である。


つまり、F氏が占有している島が、どの国に属するのかを決める手段がないのだ。


F氏はまともな船も持っていないはずなのだが、海を漂流し、この島にたどり着いたらしい。


F氏はこの無人島に辿り着くなり、この島を領土として、新国家、Fの樹立を主張していた。


ひと昔前に、少し知名度のあるyoutuberだったF氏の主張は世界を驚かせはしたが、そんな荒唐無稽なことは、当然、認められない。


国家として無人島を早く見つけたB国が、島の発見を公表し、軍事的な占有を行おうとした。


その無人島がB国領土になろうかというその時、F氏とF国の保護を名目にA国が占有を阻止した。


A国にとって、B国領土がA国近くに増えることは、強い懸念事項だったのだ。


そんな流れでF国は、A国の支援を受ける形で独立を事実上承認されてしまった。


気に食わないB国は、F氏に経済支援を申し出た。


無人島では得られない、インターネット環境や、通販網が整備された。


B国の同盟国、あるいは属国とし、軍事拠点の設置や海底資源採掘を行いたいのだ。


B国とF国が近づくと困るA国は、F氏が要求した、人と動物への医療支援物資の他に、人的、文化的サポートを強化、国家をあげてF氏を英雄扱いをした。


それも全てF氏の心が離れないようにするためだ。


F氏は、ただの無国籍の漂流者から、一国の王、それも先進国2カ国に絶賛される王になった。


しかし、F氏は幸せそうには見えず、何かに焦ってるかのような表情に見てとれた。




「カメすけ、やっぱりダメか。ずっと一緒だからな。」




ある日、F氏とF国が消滅した。


島が噴火や地殻変動の兆候なく消えることなどありえない、と学者は言っていた。


あの島は人工物か、巨大な生命体だったのではないか。


二人の行方は、誰も知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

無人島 ロボ太郎 @robotaro_SF

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ