ひどすぎるサメ映画

 後日、東京西部にあるメイスン宅に、時雨とその息子のたすくが招かれた。輔は以前からメイスンの甥っ子のジョンと親しく、何度かメイスンの住まいにお邪魔しているが、時雨の方は初めてであった。

 メイスンの住まいは、貸与された社宅の一軒家であった。比較的新しい家屋のようで、内部は綺麗である。

 待っていたメイスンによって居間に通されると、そこにはジョンと、それからマークが待っていた。


「輔、待ってたよ」

「新作サメ映画出たんでしょ? ジョンと一緒に見たいと思っていたんだ」


 ジョンと輔は、すっかり親友同士になっていた。麗しい国際交流である。最近は輔もジョンの影響を受けて、すっかりサメ映画ファンになっている。


「さて、じゃあ見ますよ」


 メイスンはDVDを取り出すと、それをプレーヤーに挿入した。始まったのは、サメ映画の鑑賞会だった。


「え、何なんだこれ……」


 サメ映画というものに縁がなかった時雨にとって、この映画は退屈そのものであった。破綻したシナリオ、雑すぎる合成、レベルの低い役者の演技、申し訳程度にしか映らないサメの捕食シーン……想像を絶する酷さである。


「いやー、マウンテンシャークもヒドかったぜ……」

「全くです。学生の自主制作ビデオとそう変わりません」

 

 終わった後、メイスンとマークは口々に映画への悪口雑言を言い放った。輔とジョンはさっきの映画のことを忘れたかのように二人でゲームをおっ始めている。


「何だか盛大に時間を無駄にした気がするぞ……」

「そうなんです。そこがいいんですよねそこが」

「ガハハ、その通りなんだよな」

「お前たちおかしいよ!」


 時雨は、気が滅入って動転してしまいそうになった。

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