第20話 リズネーゼ王国の滅亡

「お、お願い致します。


 どうか、祖国へとお戻りください!!


 勇者様…………!!」


「……………………」


 アホらしい…………。


 こんな連中、無視して行くか。


「あ…………!!?


 待って----------------」


『待つが良い』


 あぁ?


 今度は何だ?


 ギルドの近場の屋根へと飛び移った時だった。


 俺を引き留めようとする悲痛な少女の声と共に、やたらと偉そうな女の声が頭に響いた。


 気になって周りを見渡してみたが、やはり何もいない。


 気のせいか?


『上だ。


 この愚か者…………』


「上…………?」


 頭に響く声の通りに顔を上げると、そこには俺を見下ろす一人の女性がいた。


 背中に羽らしきものがあるが…………。


 これは、もしかしなくても…………?


『我が名は守護の女神アウロラ』


 はい、やっぱり女神様でした。


『その娘の言う通り、王国へと戻れ。


 さもなくば、我が神罰を加える』


「やりたきゃやれば…………?」


 ほんと、女神って、何で自分勝手で、馬鹿ばかりなんだろうな…………。


 ひょっとして、頭の中は小学生並とか…………?



『何…………?』



 何で、そんなに意外そうな顔するかね?


「ほんと、女神って馬鹿ばっかだな…………」


『なるほど…………余程、神罰を己が身で受けたいようだな…………』



「そうは言うが、アウロラとやら…………?


 神罰を落としたとして、困るのはあんたじゃねぇのか…………?」


 俺の言葉を聞き、アウロラとやらが、僅かだが眉がピクリと動いた。


「正確には、あんたとそこにいるゴミ屑ども…………ひいては、そのリズネーゼ王国とやら、だ…………。


 まぁ、大方、あのクソ王国に何かしら深刻な危機が起きていて、滅んでは困るあんたがシャシャリ出て来たって所だろ…………?


 そんでもって、どうしても、その問題を解決するには、この俺の力が必要になった。


 けどな…………。


 俺には、この国の連中がどうなろうが知ったこっちゃない。


 というか、さっさと滅びてくれないかね…………」


『き、貴様…………』


 おいおい、何だよ、その慌てよう?


 それじゃあ、図星ですって言ってるようなもんだろうが…………。


 ちょっと、出鱈目な事を言って、探りを入れたら、「はい! 肯定します」って…………。


 ほんと、呆れるわ。


「どうした?


 やるなら、さっさとやれよ…………。


 ちなみに、もし神罰とやらを落とした瞬間----------------俺はあんたもこの連中も敵とみなして、滅ぼすからな…………」


『貴様…………冗談も大概にして--------』



「…………冗談だと思ってんのか…………?」


 俺は静かな怒りと共に、女神を睨み付ける。


 正直、もう俺はあの国の連中を許す気はなかった。


 というか、今すぐにでも、色々と理不尽な事をされた恨みを晴らしたくて仕方がない。


 ていうか、今すぐ滅ぼすべきか?


『……………………』


 俺が本気だという事が伝わったのか、あれほど威勢の良かった女神が押し黙る。


「何もする気がねぇのか…………?


 なら、そろそろ俺は行くぞ…………?


 でないとうっかり------------」


 俺は女神に背を向けると、ダメ元でリボルバーの銃口を空へと向けて、言い放つ。



「その王国とやらを撃っちまいそうになる…………」


 それも、口角を三日月型に歪め、まるで魔王になったかのように、邪悪に微笑みながら…………。


 そして、そのまま、再び跳び立つと、そいつらは何もする事なく、ただ俺の後ろ姿をジッと眺め続けているだけだった。


 それから、後で知った事だが…………。


 その数週間後-------------


 俺を不当に追い出したリズネーゼ王国とやらは魔族の襲撃により滅んだそうだ。


 まあ、自業自得って奴だわな…………。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハズレ勇者の鬼畜スキル 〜ハズレだからと問答無用で追い出されたが、実は規格外の歴代最強勇者だった?〜 ミリス・ナリシア @mirisublack

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ