第10話 めんどくさいログインを果たすという素晴らしき偉業 褒め称えよ(´・ω・`)

『初心者応援スタートダッシュログインボーナス三日目を獲得しました』


さて……来たぞゲームの世界……。


『週間ログインボーナスを獲得しました』


綺麗な青空、風に揺れる草原、遠くじゃ他のプレイヤーらしき人影がちらほらと見える。



さて……帰るか。



「ログアウトっと」

酒の肴に良さそうなツマミと映画を借りてきたんだ、ログポだけ貰ってすたこら帰るぜ。


ん? ログアウトのボタンは何処?


『規定により15分以上プレイされないとログアウトができません』

「なんじゃそりゃ」

『ログイン勢を減らすシステムです』

「…………さーせんした」

どーも、ログイン勢その1です。


『野を駆け回って現代では味わえない大自然を味わいましょう』

「やかましい」

このAI自我持ってない? 気のせい?



「しゃあねえな」

できねえものは仕方がない、言われた通り野を駆け回ってやろうじゃないか。



ー十分後ー


野原を…駆け回る。


「ほーれほれ、こっちですわよ~!」

「グギャア!!」

「ギャア!!」

「グギャ!」

自分。



「おーほほほ! こっちくんじゃねえ雑魚どもが!!」

女の子走りじゃなくて腕シャカシャカ動かすマラソン走りなのはご愛敬。


こらそこ、口が悪いとか言わないの、散歩してたらもれなくモブがついてきただけ、おいこらどういう事だ運営。


こちとら中身おじさんか弱いレベル2の乙女ぞ、メイン武器鞭ぞ。


「いーやぁああああ!!! 」

詰んでましてよお糞がああああ!!


名前は忘れたけど女の子がいたから昨日はどーにかなった訳だしそもそも叩いたときの感触が生々しいから触りたくないんじゃあああ!!


「やだあああ!! 不潔なのやだあああ!!」

「ギャアー!!」

「汚い!!」

ゴブリン三びきに対して乙女走りとは縁遠いガチ逃げをかましてるうら若き乙女レオにゃん(テイマー)自称18才、野を駆け回る。



ー完ー



『逃走に失敗しました、逃走に失敗しました、逃走に失敗しました、逃走に失敗しました』

「うるっっっさい!!」

分かっとるわ!!


『戦闘を開始する事を強くおすすめします』

「できたらやっとるがな!」

だってこのゲームコマンド選択とかリズムじゃなくて純粋な格ゲーだもん!! 肉弾戦とか嫌じゃ!!


『自ら首を差し出す事を推奨致します』

「怖い!」

何て事を言うのこの子!


だあもう!!



「ふんぬぅ!!」

「ギャ!」

振り向き様に鞭を一発!


走った勢いで躓きそうになりながらもなんとか持ちこたえ、怯んだ様子のゴブリン三匹を睨む。


★★★


【ゴブリン】レベル2

HP23

状態 興奮

★★★


★★★


【ゴブリン】レベル2

HP19

状態 怒り

★★★


★★★


【ゴブリン】レベル1

HP21

状態 興奮


★★★

それぞれ少し距離を開けている緑の三匹を前に鞭を構える。


昨日も見た通り若干デフォルト化してるけど無駄に立体なせいで腐った木みたいな見た目をしているゴブリン。


「……真ん中の奴はごめんわざとじゃないの」

「ギシャ……」

ちょうど目玉に鞭が当たっちまったから割りと痛そう……。



「ギシャア……!!」

おっと、リーダー格の子がこん棒を構えた。


……少し切り替えなければ。


「といってもやっぱ感触……というよりも、殺生をするっていう気分がなあ」

殺すとかそこらへんの感情を消せば大丈…夫?



「いける……か?」

何か、この罪悪感を払拭できる理由、大義名分があれば……関係ないけど明日マッサージ予約してるんだった何時からだっけ。



「シャア!」

「おぶ!」

振りかぶってきたこん棒を間一髪後ろに退く事で避ける。


『自死しますか?』

「しません! 倒し……いや、マッサージ、そう、これはマッサージなの」

『……理解不能』

「どっかの国で鞭を使ったマッサージがあるって聞いたことある! それ! それやる!」

今からやるのはあくまで、マッサージ、楽しい楽しいマッサージ、目の前のゴブリンはお客様、OK自分? オーケー!!



「これはマッサージこれはマッサージこれはマッサージ……よし!」

暗示完了! さあいらっしゃいませお客様ぁ!!

BGMは天国と地獄でどうぞ!





『新たなプレイスタイルを確認……記録開始』






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