第4話 渡部くん登場

 そんなある日の事、ゆっこが廊下から「渡辺席」に走ってきた。

「ヤバスヤバス。隣のクラスにイケメン男子入って来たって。」

「マジ?」

「なんか、すごいよ。渡辺さんも、見に行こうよ。」

「あんまり興味ないけどな~。」

 と、言いつつも、廊下の前のドアから覗いてみる。人垣でよく見えないなぁ。

「何、話してるかわかる?」

「いや、よくわかんないけど。人垣できてるよ。」

「みりゃわかるし。」

「いや、それがすごいって話。」

「そう?わたしあんまり興味ないから、戻るわ。」

「あっ、あっちの方に手~振ってる~。」

「「渡辺席」の恩恵じゃない。山本君あたりでしょ。」

「金髪だよ、金髪。」

「不良じゃん。ますます、腹立ってきた。」

「渡辺さん。はい、生徒手帳。」

「わかってるわよ。髪形は自由、色もね。」

「そうなんですよね~。」

「テレビでやってるから、みたいなものでしょう。次に、席替えがあった時にでも教えて頂戴。まさか、委員会では会わないだろうから。」

 それにしても、金髪の不良だなんて許せないわね。どうせ、足でも机に挙げてるんでしょうね。その日から、渡辺さんは変わった。


 隣の教室を休み時間の度に覗きに行く女生徒に交じって廊下から、こまめに観察するようになった。相変わらずの人垣をいいことに、

「えーっ、全然噂と違う~、残念。」

「どうしたの渡辺さん。」

「七色の頭してるって聞いたのに、なんか期待はずれっぽい。残念なやつね。」

「なんだと~」

 と、人垣を割って出ようとする渡部くん、他の生徒になだめられる。

「ケンカ売ってんのか?」

「ただ、聞いた噂と違うなって言っただけですけど。私、ミーハーなのよね。」

「チッ。」

意外と短気、メモメモ。渡辺さんの様子がおかしい。

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