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送ってくれる 帰りの車は

朴訥ぼくとつとして 申し訳なく思えた

緩やかにのぼる 平和な風景を眺めて


介護士は 僕たちを置いて 帰って行った

不思議な余韻を残して

思いもかけない 人との出会い


もう直ぐ 村の慰霊祭だ

そろそろ調律をしよう

未だ 青年の夢を見ている ピアノの


「坊主 面白いかい?」

少年は 余すことなく 目を輝かす

「こいつの面倒 見てくれるかい?」


少年は 分かっているのか 頷いた

僕は これが 最後かもしれない

来年の自分は ここにはいないかもしれない


名残惜しく 残念にも思うけど

いつかは 去らねばならないのだから

ここまでいられたことに 感謝しよう

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