1-4 解決策
数分後。
「死ぬかと思った」
「そうだな。もしテメエの体がもう少し脆かったら確実にそうなってたな」
あれから少女の圧倒的暴力に身を曝されていたジンだったが、間に入ったライトとエミリアのお陰でどうにか解放された。二人が間に入るのがあと少しでも遅ければ危なかった。
ジンは全身痣だらけで疲労困憊といった感じだが、どうやらあの少女の猛攻を受けてその程度で済んだのは奇跡らしい。
恐らく何本か肋骨に皹が入っていて、度重なる打撃で内臓も軽くないダメージを受けているが、それでも奇跡らしい。
「まあ、オレの体は特別製だからな。逆にそっちの子は手を痛めたりしてないか?」
「…………黙れ、変質者」
ジンは気遣うように、ライトの隣に座る紅い少女に声を掛けるが、どうやら同僚としてのファーストコンタクトは完全に失敗に終わったようだ。どう見ても、少女がジンを見る目は仲間に向けていいものではない。
しかし、手を痛めているのは事実なのか、両手の痛みを声に出さないよう必死に押し殺しているようだった。
「こいつはアリサ。アリサ・ブラッドだ。竜撃隊の中では最古参に分類される。そして歳は十八だ。よかったな、ジン。テメエの大好きな歳下だぞ」
「おいやめろ。その言い方だとオレがロリコンみたいだろ」
ライトの発言を真に受けたのか、紅髪の少女――アリサはもうゴミを見るような目でジンを睨んでいる。元々ゼロだった好感度がマイナスの領域に達した瞬間だった。
「ほら〜、アリサ〜。ちゃんと新人さんに挨拶しなきゃいけないでしょ〜」
今までアリサを宥めていたエミリアが、我が子を相手にする母親のように言い聞かせる。
アリサは最初は心底嫌そうな顔をしていたが、それでも渋々とジンの目を見て、
「……お菓子の味はよかった。他は死ね」
「だ、そうだ。菓子折り持って来ててよかったな。早速好感度アップだ」
「今『他は死ね』って罵倒されたんだが……」
唖然としながらも、ジンがお返しに自己紹介しようとするが、
「オレの名前は……」
「喋るな、クズ」
それ以前に喋ることを許されない。どうやらジンがアリサから買った反感は相当に根が深いらしい。
「珍しいね〜、アリサがあそこまであからさまに感情を剥き出しにするなんて〜」
「相性がいい証拠だろ」
「そうなんだけど〜、ここまで来ちゃうとちょっとまずくな〜い?」
竜撃隊が抱えているメンバーは決して多くない。全員揃ったところで、精々分隊程度が関の山だ。
故に、任務に複数人が動員される場合、必然的に通常の騎士軍よりも特定の人物との出動の機会が多くなる。
任務というのは命懸けになる場面も多い。そんなときは隊員同士のちょっとした不和が命取りになりかねない。
「どうすんのさ、そーなったらー」と尋ねるエミリアに、ライトは「問題ない」と笑って、
「丁度いい解決法があるだろ? 俺らの間で揉め事が起きたときの、とっておきのが」
「……いやいやー! そればっかりは駄目だってー! あの新人さん死んじゃうよー!?」
「安心しろよ。あれの生命力はゴキブリ以上だ」
それに、とライトは付け加えて、
「今のあいつにはいい刺激になる」
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