うぉーおあうぉー!~war or war~

つきみなも

第1話 激戦区にっき

「知性を持った生物は、争いを好む。 -2020- 不明人物」


時間、未来、現在、運。それらは、いつでも残酷で、冷酷で、ときに微笑んだり、ときに牙をむいたりする。


ドガォォォン!!


相手は鈍足重戦車だと言うのに今の主力中戦車で相手できないとはどういうことだ?

「装甲貫徹可能箇所を撃て。」

「むりー!抜けなーい!」

「そうね。相手は最低でも900mm(戦中の戦車の装甲は大体80mm)の正面装甲を持ち合わせてると思うわ。逃げることに集中しない?吹雪」

「逃げてたららちが明かない。追いかけてくるだろうし。」

「だが相手の装甲は抜けるわけがない。それにあの砲古いものだけど多く見積もって210mm(戦中の戦車の砲は75mm)はあるわ。それもライフル砲よ?当たれば一撃であの世行きになる。」

「・・・真由利、砲塔をAASAI(照準補助Aim assist systemAI)に切り替えて。美琴、全速力で蛇行運転。」

『りょーかい!』

私は射撃をAIの判断に委ねることにした。

制御許可をもらったAIは砲身を車体本体ではなく履帯に向けた。

そうか。動きを止めるんだ。

ドギャゴォン!

120mmの滑腔砲かっこうほうが轟音と共に火を吹く。

真由利が砲手用ハッチから顔をだしたので履帯に集中的に機銃射撃を行うように命令をした。

「パタタタタタタタタタン!パタタタタタタタタタン!」

主砲4発20mm機銃100発で遂に相手の履帯を切断することに成功した。

「美琴、この廃墟を回って後ろを狙えるように。真由利、AASAIを切って常時狙えるようにしろ。」

相手からの攻撃をかわしながら廃墟を回って超重戦車の後ろに回ってみると、案の定砲身はこちらを向いていた。

「美琴、少し車体を出したあとすぐに下がれ。相手に撃たせるんだ。」

「了解」

ドガォォォン!!

「今だ。前進しろ。」

「APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)いってらっしゃーい!」

ドゴォォォン!!!

その超重戦車は大きな爆発とともに動きを止めた。弾薬庫にクリーンヒットしたらしい。

「やったー!」

「うるさい。」

「でもこれ撃破できたのは凄いことだよ。少しは素直になれば?」

「・・・遅刻になる。出発よ。」

あと15kmでAクラス(※Aクラスはレベルの高い戦場のこと)52番戦に到着する。

「吹雪~」

「なに。」

「AP弾(徹甲弾)とAPHE弾(対戦車徹甲弾)どっちがいいかな~?」

相手の装甲はおそらく中程度なのでAPHE弾でいいだろう。

「APHEを入れて。」

この戦車「ZeroReapper 2」は120mmオートローダー(自動装填装置)式。おかげで高いレートで連発することができる。私が何度かオートローダーを改造しているので3秒に1発撃てるようになっている。

「吹雪」

「・・・」

「予定時刻にはつけそうだ。残り燃料72%」

「・・・武器の点検をしておけ。」

「はーい!」

「吹雪、戦闘にこいつが使えるのは最低でも6日間だ。戦闘に・・・」

「少し使う。」

私はPCのセッティングと愛銃のRemington M700の動作の点検と弾の準備をした。

一応無線で知らせておこう。

「こちらHAWK。応答せよ。どうぞ。」

無線から帰ってきた声はかすれた声で

「ハア・・・ハア・・・こちら・・Aクラス・・・52番・・・戦・・(ノイズ)く・・・!(ノイズ)くれ・・・!」

ZeroReapper 2のオペレーションシステムが警告音を出し、

「システム、サーチ。妨害電波ヲ検知シマシタ。」

「妨害電波だ。すまないがもう一度。どうぞ。」

「早くっ・・・来いッ・・・(ノイズ)もうッ(ノイズ)漏れるッ(ノイズ)」

無線は切られてしまった。

「なんて言ってた?吹雪」

「早く来い。」

・・・呆れた。先に用を足してこい。

「Aクラス52番戦まであと・・・80.3kmだ。あと1時間12分で着く」

「レーダー起動、タイマー3分」

私は戦況確認のため正面装甲レーダーを起動した。この装甲レーダーは大量の電力を消費するため、タイマーが付いている。

「システムレーダー。敵ナシ。3Dマッピングヲ行イマス。」

車長用システムデバイスに3Dマップモデルがゆっくりと現れ始めた。私はレーダーを切り、一息ついた。その時、戦争に行ったっきりの父のことを思い出した。父がいた頃の私はまだ気が弱く、よく泣いていた。

「吹雪。いいか?父さんは、戦争に行くことになった。」

「!?」

「しばらくの間、父さんは帰ってこない。」

「・・・」

「ほら、泣くな。お前も軍人のタマゴなんだ。泣いてばっかりじゃやっていけないぞ。」

「・・・泣いたら父さん心配になるんだ。だから、父さんを心配させないように強くなるんだぞ。」

今の自分は父を心配させていないのだろうか。

「吹雪、着いたよ」

「了解。一旦こいつで戦う。」

「えへへ・・・てんさいだなんて・・・」

ガゴンッ

「起 き ろ。」

「ふ、吹雪、何もレンチで殴らなくても・・・」

「頭の中空っぽだしいいだろ。」

「いてて・・・」

「すぐ戦うぞ。」

「あーい!」

「システムレーダー、起動。タイマー3分。残リ、2分59秒。」

「行動、開始。」

「ギア6、全力前進!」

「うわっ」

1300馬力のエンジンがうなりを上げ、急な坂を一気に上った。

「右42°中戦車をロック。」

「あい!」

「APHE、はっしゃー!」

ドゴォォン!!

「右旋回。」

「了解!」

狙いが一気にこちらへ向いた。雨のように飛んでくる砲弾の中、一発ずつ的確に撃破していった。

その時だった。

対戦車ミサイルが5発、こちらへ飛んできた。

「全員脱出!」

「ふぇ!?」

その指示は遅かったと後悔した。

だが、大爆発を起こしたのは私たちの戦車ではなく、ミサイルだった。

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