第14話 笑顔を奪ってしまった

 「冥!俺の目を一回潰してくれ!」 

 「急なドM発言?!」 

 「違う!!コンタクトしてるから能力が使えない!!」

 「そうでしたか!!」

 冥は手を地面につけた。そして地面は動き出し俺の目を潰した。再生するのに少し時間がかかるが第一時代はかなり使える能力だから使えるようにしておきたい。再生してる間は冥に耐えてもらう事にした。目の再生にかかる時間は二、三分。そこまで耐えてくれれば俺も戦いに参加できる。光導隊がくるのには十五分から二十分時間がかかるだろう。

 「まだ?」

 「あと少しで治る!」

 「早くしてよ!!」 

 冥は相手の攻撃を避けながら相手に攻撃をする。悪魔は「悪」を操るがその能力はまだ全てわかっていない。だが触れてはいけない事はわかる。冥も悪を飛ばされているが地面でガードしたり避けたりしている。自分の体で受けるのは危険だろう。だからかあの冥も圧倒的に不利な状況になっていた。冥は学年でいや、この高校で一番強いので有名なのに悪魔に防戦一方だった。これに俺が入っても活躍できるか不安だったが冥の苦しんでいる顔を見て悪魔の方へ走った。

   目は治っていた。

 「お前は後方で遠距離攻撃してくれ!!俺は接近戦でボコボコにする!」

 「うん!!」

 悪魔に走る俺。必殺技や技も何もない俺はただ能力をフル活用して殴り合うことしかできなかった。能力を鍛える時間がないからな。悪魔は近づいてくる俺に向かって殴ろうとしてきた。今まで見た中で一番早いパンチだった。てか早すぎて避けれない。そう思ったが勝手に体は動き悪魔の手を避けながら相手の顔面にカウンターを与えた。拳は砕けていた。だが痛みは感じない。気持ちいいまである。やべ変態がバレちゃう。

 快感を感じている中、後ろからの攻撃がきた。俺は避けるが、もろに俺のパンチを顔面に喰らった悪魔は全てを避けることができなかった。悪魔の体に地面が刺さる。

  

    あれ?

   いけそうじゃね?

 地面の刺さった悪魔に追撃しようと走ろうとしたがその必要がないぐらいに冥は攻めていた。てか俺が攻撃しようとしたら俺も絶対喰らうぐらい攻めてる。百、いや二百の針状の地面が悪魔にむかっていく。悪魔の血が飛び散る。俺たちの周りにあった悪がなくなり空が見え始めた。

 俺たちは気づいた。

 自分たちがとてつもなく強い事に。

 この発言は、自意識過剰でもなんでもない。 

       事実だった。

 同世代最強の二人がいればこの世界で頂点に立つ事は出来るかもしれない。そのぐらい、悪魔との戦いは圧勝だった。

 言葉を話す悪魔は強いとされている。その悪魔を倒した。

 そして二人の生活が始まる。

 「勝っちゃったね」

 「そうだな」

 「幸人。一緒に逃げよ」

 「みんなが見えない所に」

 「悪魔を無視して平和に一生一緒にすごそう」

 手を差し伸べられる。やはり助けられたのは俺だったか、、、

 彼女の手を触ろうと手を伸ばす。


       パンッ

  

 静まりかえった夜に一つの銃声音が響いた。彼女は手を差し伸べながら倒れた。倒れた彼女からは血が流れている。なんでだ?おかしいだろ。暗い夜の中彼女の止血をする。頭が回らない。悪魔に打たれたのか?いや悪魔は銃を使わない。じゃあ誰だ?わからない。頭には当たっておらず、まだ息はしていた。

 「痛いなー。へへ、、」

 冥は笑顔でそう言った。今にも死にそうな顔で。


        パンッ

 

 また銃声が鳴り響いた。そして俺の腕には何かが刺さっていた。銃弾ではなかった。なんだこれ?急に前がボヤける。その瞬間麻酔銃と気づいた。ヤバイ倒れる。冥を早く病院に連れて行かないとぉ。そう思った俺は眠っていた。



 

 そして目覚めたのは病室だった。連れ去られたのか?そう思ったが俺の前には園長がいた。園長に話を聞くと眠ってしまった後すぐ光導隊がきたらしく俺と冥を保護して撤退したらしい。誰の仕業か聞こうと思ったが頭が回るようになった俺は自分で理解していた。

 陰(いん)の仕業だろう。

 また俺を拐おうとしたのか。

 まてよ?

 「冥は!!冥は生きているのか!!」

 園長は決して嬉しい顔も悲しい顔も出さないポーカーフェイスの爺さんだった。だが今は悲しい顔を浮かべていた。

 「冥は生きている。だが一生意識が戻る事はないそうだ」

 ふざけるな。園長に病室の番号を聞き走る俺。ドアを勢いよく開けるとそこには呼吸器をつけ数え切れないほどの機械が冥の近くにはあった。これでやっと生きているのか。冥の顔を見ると笑顔ではなく目をつぶっていた。また、あの笑顔を見せて欲しかった。過去に彼女の悲しんでいる顔、怯えている顔にしたのは俺だった。ずっと笑顔だった彼女をだ。そして今彼女は真顔で目をつぶっている。俺は何度彼女の笑顔を奪えば気が済むのだろう。

 みんなが言っていた。その通りだった。俺は悪魔だ。人を殺す。殺してしまう悪魔なんだと気づいた。俺は泣き叫んだ。

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