第13話 消えよう

 カメラが俺に向かってきた瞬間冥が俺を抱え寮に入っていった。寮には立ち入り禁止なのでカメラも来れなかった。

 「なにしてんの!!!さっさと立ちなよ」

 頭を冥に叩かれるがまだボーとしている。

 頭が回らない。どうしよう。学校に通えなくなる。てかここに住めなくなる。冥と離れる。

 「大丈夫か?」

 冥は俺の顔を覗く。無視しないと。彼女と仲良くしてたら冥もネットで攻撃されてしまう。無視しろ無視。

 「大丈夫。ちょっと一人にさせて」

 無理だ。冥を無視する事ができない。冥に嫌われたくない。冥ともう別れたくない。まだ話したい事だっていっぱいあるんだ。彼女を悲しませたくない。

 部屋に戻り物をまとめる。さっき園長から電話で引越しすることになった。鹿児島県与論島の田舎の島だ。園長には感謝してる。俺を引き取ってくれたし、引越し先まで用意してくれてる。本当に感謝しなくちゃ。テレビをつけると俺の顔がニュースで取り上げられていた。

 ネットではまたボロクソ言われていた。いろんな推測もされているし、しょうもない暴言、殺害予告、園長も少し責められていた。   

     またこうなるのか。

 俺はこの世界から消えてほしい存在なんだとわかる。みんなはありもしない表だけの事を見て信じてしまう。本当ではないのに。そこから正義という鎧を使いながらネットという武器で攻めてくる。こんなの勝てるわけがない。俺の心はどんどん折れていく。もういいや。死にたい。みんなからもバレた。

    冥のチョコを食べる。

 とても甘く美味しい。少しココアパウダー

のかかったチョコは丸く一口サイズだった。クッキーは全て食べてしまった。チョコも残り一つだった。最後の一つを口に放り込む。


      あまぃ、、、     

      なんだこれ!!! 

      めっちゃ辛い!!

 ワサビ入ってるじゃん!!!なんだよあいつしょうもない事しやがって。涙が溢れ出てくる。辛いのもあると思う。でも恋しい。わかってるんだ。冥お前が好きなんだ。だから言えない。引っ越そう。一緒に与論に行こう。俺についてきてくれ。こんなカッコいいセリフを言えるほどカッコよくなかった。

 荷物を持ちドアを開ける。園長がロビーで待っていてくれた。

 「行くぞ。裏のドアから裏道を使って飛行機に乗る。変装しとけよ」

 はい。そう言ってカツラを被りサングラスをつけ、カラコンをつけるロビーを出ようとした瞬間

 「まって!!!」

 後ろから抱きつかれた。冥だった。

 「どこ行くの?なんで言ってくれなかったの?」俺は冥の方向を向き答えた

 「引っ越しをすることになって、与論島に行くことになった。そんなに遠くないからこのニュースが収まったらまたくるよ」

 「収まるってそんなに早く収まるわけないじゃん!!!会えなくなるんだよ?悲しいよ、、それは」

 「また帰ってくるから。あとチョコのお返しもあるんだし。ワサビ入れやがって」

 「絶対だよ?ダメだからね?」

 「何がだよ」

 「ううん、なんでもない。またね」

 「あぁ、またな」

 そう言って手を振る彼女は浮かない顔をしていた。最後ぐらい笑顔が見たかった。園長は空港で降ろしてくれた。

 「今までありがとうございました」

 感謝を伝えたが園長は何も言わなかった。車で園長はかえって行った。相変わらず無愛想な人だなと思いながら空港を後にした。

 夜になり人気ののないところにいく。ここは一回冥と遊んだところだ。鬼ごっこしてすぐ捕まって悔しかった思い出がある。

 はぁ、、、そろそろくると思うけど。

   ガサガサと草の音がなる。  

       きたか

悪魔が現れた。知っていた。俺の居場所が明るみになったら夜に連れ去りにくるだろう。そこで夜に一人でお散歩中。絶好のチャンスだろう。

 「なんで一人で散歩してたんだ?」

 おっ?この悪魔人の言葉話せるんだ。ならめちゃくちゃ強いじゃん。もう後にひけないな。バイバイ冥

 「悪魔に連れてかれて死のうと思ったからだよ」

 「そうがぁ!!」

 悪魔が急に血を吐き出した。なんでだ?悪魔には岩が突き刺さっていた。

 「幸人!!逃げて!!!」

 冥?ふざけんななんでここに、、

 「一緒に逃げよ!!!誰もいないところに!!!」

 冥は呆然としてる俺に手を差し伸べてくれた。俺は迷った。このまま手を握れば冥を不幸にしてしまうかもしれない。いや、俺は自己中でいいんだ。少しは幸せを追ってみよう。冥の手を握り逃げる。

 「逃すか!!!!」

 悪魔は自分たちの悪を操り俺たちを閉じ込めた。

 「二人とも殺してやる!!!」

 「光導隊は呼んでおいたから、耐えるよ!!」

 

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