恩恵の使い方

総督琉

序章

第1話 環境の番人

「将軍。近くの動物の森林にて、魔人が侵攻してきた模様。種族は空の魔人。既に第九環境軍が現場に向かっていますが、到着まで時間が掛かるとのこと。ですので、最も近い我々民間環境軍が、現場に向かって魔人を排除しろとのことです」


 女性の甲高い声が辺りに響く。

 それを聞いた女性の将軍は、刀を持って現場へと向かう。


「お前ら、環境アセスメントを開始する。心してかかれ」


「はい」


 長い髪を後ろで束ね、刀を腰に提げた将軍は、数名の部下を率いて、巨大な一隻の気球船に乗り込む。この気球船は二酸化炭素の排出を押さえ、なるべく最小限の力で空を漂う。


 空を走る気球船の中で、将軍は皆に告げる。


「突如として空から現れた空の魔人。彼らによって、森に生息している動物が多数喰われたそうだ。このままでは食物連鎖のバランスが崩れる。指定の領域についた瞬間、飛び降りて空の魔人を一匹足りとも残さずに殲滅せよ」


 彼女の言葉で緊迫感が漂う。


 そして間もなく、気球船は指定の領域の上空についた。

 気球船の真下には動物たちが暮らす森が広がっている。


「ではこれより、空の魔人殲滅作戦を始める。行くぞ」


 気球船は空に浮いたまま。

 地上に着陸もしていないのに、将軍は気球船の出入口である扉を開けた。


 もちろんそこは上空。扉を開けた瞬間に気球船内の空気は一気に外へと向かって放出される。

 だが、将軍は勢いよく放出される風に体を動かさず、下に広がっている森を眺めている。


「まさか……飛び降りるんですか!?」


 新入りの兵士は将軍に聞いた。

 すると将軍は笑って彼に言った。


「当たり前だろ。それが環境アセスメントなんだから」


 将軍は、上空に浮いている気球船から飛び降りた。

 彼女に続き、多くの兵士が気球船から飛び降りる。だが、新入りの兵士は腰を抜かして立つことさえままならなくなっている。


「新入り君。飛び降りるよ」


 一人の女性に体を持ち上げられ、そのまま気球船から飛び降りさせられた。

 悲鳴を挙げ飛び降りる彼を見て、彼を抱えている女性は声高らかに笑う。


「安心しろ、新入り君。本当に怖いのは、だからな」


 既に、彼らは戦場に降り立っている。

 ここからの戦いこそ、命の有無を争う最前線である。


 全員地上に着地した後、彼らに向かって将軍は宣言する。


「環境アセスメント、開始」

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