第7話 夏合宿での体験1

私は、S大学のテニスサークルに所属している。

毎年恒例の夏合宿の時期になった。

今年は、S県I市の施設に一週間やっかいになる事に決まった。

海が近く遊ぶのには、もってこいの場所だ。


サークルなので、合宿といっても弛く、レクリエーションを盛り込んだテニス旅行と思っている。


男子7人・女子5人のフレンドリーなグループだ。

皆はアダ名で呼びあっている。


今回真っ先に被害にあったのがチサだ。

前々から霊が見えると、私達を怖がらせては喜んでいた。

笑顔の可愛い妹タイプの娘だ。


1日目は、宿舎に着くなり夕飯の時間。

その後ミーティングを行い自由時間へ。

一階の広間で宴会が始まった。

我々以外に客は泊まっていないので、騒ぎすぎたかもしれない。


時間が経つにつれ、一人抜け、一人抜けと二階にある寝室へと消えていった。


翌朝、チサが私のところに来て

「昨夜、何時まで起きてたの?」

「1時前には、皆部屋に戻ったと思うよ」

チサが同室のモモを呼んで

「夜中の3時頃、廊下バタバタ走り回る音がしてたんだよね」

モモも

「そうそう!うるさくって!!」

私は

「えっ!誰か暴れていたの。

しょうがないな、酔っぱらいが。

でも俺気がつかなかった」


「その後モモの部屋ノックっていうか、ドアを叩いてたのドンドン・ドンドン」

二人が揃えて

「びっくりしたよ~」


「誰がやったかわかる?」

と聞いてみたが

「ドアを開けてみた時には、誰もいなかったの。

誰?男の子の誰かでしょ」


朝食時、何気なく昨夜の就寝時間を確認したが、3時にはグッスリ寝ていたみたいだ。


その事を二人に伝えると

「まっ!今回は大目にみるとしよう」

笑顔で答えてくれた。


朝、屋外コートでの練習が始まった。

陽炎のたつコートで、汗だくになりながら、ひたすらボールを打ち返す。

結構真面目にテニスに打ち込んでいる。


そんな折、チサが騒いでいる。

足を掴まれたと

私達は、半信半疑でチサの話を聞いていた。


「コート外に飛んだボールを拾っていたら、

いきなり左のふくらはぎ辺りを掴まれたの」

「ちょうどあの辺り」

と指をさした。

そこは、雑草が膝位置ぐらいまで生い茂っていた。

お調子者のタクヤが

「チサ、いつものように驚かすつもり?

雑草の硬い部分にでも触れたんだよ。

ハイ、解散!解散!」

チサの顔は、納得してない様子でしが、それ以上騒ぐことはしなかった。


その夜、寝静まっていた私達の部屋のドアを毛畳ますく叩く音で眼が覚めた。

まだ眠い眼を擦りながら、起き上がりドアを開けると、

チサとモモが立っていた。

その後ろには、隣の部屋の男子タクヤ・ノブがいるではないか。

「どうしたの?こんな時間に」

チサが早口で

「また、ドアを叩かれたの!

だから誰がイタズラしてるのか、

開けてみたけど誰もいなくて。

タクヤ達の部屋訪ねたら皆寝ていたので、

徳ちゃん(私)の部屋かなと思ったの」


うちの部屋もドアをノックされるまで、全員寝ていた。

残ったのは女子3人。

まさか、彼女達がイタズラするとは思えない。

誰か、私達以外にいるのか?

とりわけモモが、すごく怯えてしまっている。

夜も遅いので、私達の部屋で雑魚寝だが休んでもらうようにした。


夜が静かに明けていった。





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