第6話 廃病院 (ポンコツ撮影日記3)

今日のロケは、再現ドラマの収録です。

朝イチから始まり4ネタ(物語)終えました。


技術スタッフは3名、カメラマンの私・吉野/音声・佐藤/照明・高田

制作サイドは、監督・金沢と助監督・山口(女)・嶋村(女)が2人。

役者が物語によって出入りしてます。


午後6時過ぎに、最後のロケ場所に入りました。


そこは、都内にある廃病院。

地下2階・地上4階の建物。

住宅街に建っています。


正面玄関前の駐車場に車を止め、撮影の機材を中に運び込みながら照明の高田くんが

「ここって出るって、有名ですよね。」

笑顔で話してきた。

そうここは、心霊スポットにもなっていた。


今日の注意として、

"地下には、絶対入らない"

との約束でした。


1階受付での撮影が始まり、診察室の再現

シーンと撮っていきました。

ここにきて作業事態が捗らなく、時間がムダに過ぎていきます。


午後10時過ぎた頃ようやく次のシーンとなる病室の撮影に


3階に移動


スタッフ6名と出演者4名で撮影。

「はい、本番5秒前3・2・1」

少しすると廊下から足音が。

「カット、廊下誰かいるの?」

少し苛立ちながら監督の金沢さんが助監督の嶋村さんに確認を促しました。


1階で出番待ちしていた役者さんが上がってきたとの報告。

監督が、

「どうした?」


「佳奈さんが………なんか……1階にいられないと言ってきてるんですが」


「しょうがない、隣の病室で待機してもらって」

とりあえず撮影再開。



「OK!カット」

病室の撮影は終了しました。

時間は12時なろうとしてます。

それを待っていたかのように


『ガッチャーン』

モノが割れる音が響きわたり、

そこにいる全員がビックっと凍りつきました。


助監督2人が確認に下へ


ドタドタ

っと階段を山口さんがかけ上がってきた。

顔は蒼白になっていた。

「すみません、金沢さん来てもらえますか。」

「何かあったの?」

「鏡が割れちゃってました。」


現場を確認に、

私も付いていきました。


1階の役者さんが待機部屋と使っていた診察室へ


そこでは、嶋村さんが割れた鏡の破片を片付けていました。

その傍らには、鏡の無い姿見が立ってます。


「姿見が倒れたか。」

監督が困り顔で発するや否や

山口さんが

「立ったまま!姿見が立ったまま割れてたんです。」

今にも泣き出しそうな顔で訴えてきました。


私は思った

「えっ!そんな事あるの?

衝撃もなく割れるなんて

1階には誰もいないし」


掃除を終え再び3階へ


先ほどの佳奈さんが

「やっぱり誰かいますよね。

見えない誰かが」


みんなが

「えっ!」

っと顔を見合わせた。

監督が和まそうして笑いながら

「まさか……な~んてね!」

佳奈さんがすかさず

「馬鹿にしちゃだめですよ。下にいる時、ずっと見られてる感じがして怖くて怖くて。」

「そしたら鏡が割れちゃったんでしょ。霊が割ったんですよ。」


皆が、認めたくないものをアッサリと言われてしまい、動揺が隠せない様子です。


監督は

「まぁまぁ、時間も時間だし急いで次いきましょう」

撮影を進めるように促しました。

そこからの助監督2人は少し怯えた様子で、何をするのも2人一緒での作業となりました。


つぎは4階の撮影

私は、渡り廊下の窓開けて外を見てる音声の佐藤君に

「どうしたの」

「気持ち悪いですよね。まさか鏡割れちゃって!」

さらに

「さっき上がってくる途中に御札がはってあるの見ちゃったんです。」

高田君が

「やっぱり出るんですね。こんな事初めてです。」

私は

「鏡が割れただけじゃないか。気のせいだよ。」

と心なしげに答えるのが精一杯でした。


ようやく佳奈さんの出番、

暗い廊下を歩くシーンへ


モニターを見てる監督から

「佳奈さんの後ろに影が動くんだけど。」

カメラを覗いている私には見えてませんでした 。

「もう一回」


「やっぱり動くな!」

「嶋村、確認してきて」

恐る恐る嶋村さんが見に行きました。

走り帰ってきた嶋村さんは

「誰もいませんでした」


助監督の女子2人は、恐怖に飲み込まれそうで絶えずソワソワしています。

撮影が終了したのが夜中の2時過ぎになりました。


ここで再び佳奈さんが

「さっき本番の時に、私の横を誰か通ったの。怖かったけど、収録を上がってくる終らせるため我慢しました。」

それを聞き、山口さんが泣きはじめてしまい

泣きながら

「ごめなさい!さっき誰もいなかったと言ったのですけど、縦じまのパジャマを着たおじいさんを見た気がしたんです。」

それを聞いた私達は、急いで撤収する事に。

戸締まり確認して出口へ向かいました。


最後に忘れ物がないか確認で、1階を見廻り

いたしました。


私が階段の踊場を確認中、地下から物音しています。


"地下には、絶対入らない"


しかも人の歩くような音まで、聞こえてくるではないですか。

私の中の恐怖より好奇心が勝ってしまい、一歩一歩・恐る恐る階段を降りていきました。


階段近くにナニカいる

モノを動かす音がする


真ん中付近まで降りた時、ふと壁に目をやると、

大きなお札が、

はられているではないですか。


私は、その瞬間恐怖が内臓から口へ溢れんばかり昇ってくるのを感じ、

一目散に出口へ向かいました。


収録は無事できましたが、この時いたスタッフ・出演者の方々には不思議な体験と恐怖が残りました。




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