第19話 守り人


「これはダムだ、川の上流で水をせき止めて水を貯め、定期的に放流する。安定した水の供給と水の落ちる高低差を利用した発電などをすることができる施設だよ」


ナオキ「?発電?」


「いや……いい」


ナオキ「要するに水が沢山溜まっている施設なのか随分とでかいなー……初めてみたぜ」


「ダムがあることは知らなかったのか?仮にも川が村までつながっているんだぞ!?」


ナオキ「いや……本当に知らなかった……いや木咲の森は何度も山小屋とかに行っているんだが、それもちょうど去年の狩りの時のことだからな…」


「その山小屋はどこにあるんだ?」


ナオキ「この上だ、去年は川が流れていたはずなんだが……この様子だと水没していそうだな」


「ならあの赤髪の髭面の狩人は知っていた可能性があるな…なんとも思わなかったのか??」


ナオキ「赤髪の髭面の狩人?ああ……シカリさんのことか」


「シカリ?そんな名前なのか?」


ナオキ「ああ……この村に狩人はあの人だけだからな、間違いないだろ」


「狩りは普通数人でやるものじゃないのか?なぜ狩人はこの村に一人しかいないんだ?」


ナオキ「質問が多いなーなら歩きながら話そうぜ、とりあえず横から登れそうだぜ」


「ああ、そうするか」


俺とナオキはダムの側面から山を登り始めた


ナオキ「さっきの話だがな、あの人はこの村の人じゃないのさ。あの人の故郷はこの森だ」


「ほー?なぜ森を出たんだ?」


ナオキ「あの人はこの森の霊脈を守る守り人の末裔なのさ。あー、この森は今は霊脈は無いがかなり昔には結構強い霊脈があったんだぜ?」


「なぜ今は無いんだ?」


ナオキ「詳しいことは知らないけど、魔族との大戦の際に何もかも変わってしまったらしいぜ?まあそれで霊脈を失った森は徐々に滅びていったのさ」


「まだ残ってるじゃないか」


ナオキ「まあそうだけど、これでも縮小したのさ。ともあれ霊脈を失ってからはあの人は悲惨だったらしいぜ?結局守り人の生き残りはあの人だけらしいからな」


(・・・あんな豪快そうなおじさんがそんな過去を持っていたとな、人は見かけによらないものだ)


俺は色々と考えていた、この山が元々霊脈を持っていたこと、それを失ったこと、そして何より俺のいたあの森ではないこと、自分はいったい誰なのかなど疑問はいくつもある、しかしナオキの驚きの声で我に返った


ナオキ「なんだあ!?水じゃねーのか??」


急いでナオキに駆け寄り下をのぞくと、そこには黒い水の湖が広がっていた

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