第9話 不完全な能力

長老「いやはやすまんな放っておいてしまって。それよりその植物の件のことじゃが、恐らくレイトよ主の能力だがおそらく植物内のホルモンを操作する力だろう。」


「ホルモン?」


長老「まあなんと言うか……植物内の色々な命令を伝達するための物質のことだ。それは植物の成長をコントロールすることさえできる」


「そのホルモンとやらを俺が操るのがどう関係があるんだ?」


長老「主が植物を成長させられるのは、植物ホルモンにより植物に繊維の結びつきを弱め、そこに水分が入ることで植物の細胞が大きくなるからじゃ。そしてそれをお主の能力で強化しただけじゃ、つまり植物そのものの性能を上げたにすぎん。」


「なるほど……ではなぜ実は上手くいかない?」


長老「受精などしなくても植物ホルモンを操れば種はできんが実を作ることはできる。じゃが…それは植物の道理に反する作用を起こす必要がある。今、主にそれができないのは意図的にホルモンを操ることがまだできないからじゃ。ただ力を与え続ければ植物の受け入れが整う前に力が蓄積し続け、結果実に溜まってしまうのだろう…」


「つまり、力の緻密なコントロールが必要とでも?」


長老「然り……いまのお主では難しいじゃろうな」


すると黙っていたナオキが急に間に割って入ってくる


ナオキ「なら俺と修行でもするか?」


「お前と?」


ナオキ「なんだよその目は!俺もお前ほどじゃないが不思議な力が使えんだよ!見てろ」


そういうと近くの小枝を拾い力を込め始めた。すると小枝は青く鈍く光り始めた。


ナオキ「さああーーて見てろ!!」


そういうとナオキは小枝を柵に振り下ろした。


ザク!


なんと小枝が折れることなく10センチほど柵に食い込んだのだ。


「なんだ!?何をした!?」


ナオキ「何って、力を小枝に込めただけさ。ただし、枝が壊れないようにコントロールしてるけどな。」


「コントロールか……」


俺は柵に食い込んだ小枝に触れ軽く力を込めてみる。少なめにすれば大丈夫だと思った俺だが


メキメキ!バキ!!


小枝は急に伸び柵の木を割ってしまった


(……そう簡単にはいかないか)


それを見たナオキがどや顔で言ってくる


ナオキ「できないなら教えてやっても良いぜ~?ただし畑の復興は手伝ってもらうけどな!」


「昨日は俺の力で縛られて何もできなかったくせに自分の方が上だとわかるとこうも早くマウントをとってくるとはな」


ナオキ「んだとお?てめえあれが俺の本気だとでも思ってんのか?あれは油断しただけだ!本当なら俺の方が強い!!」


長老「二人とも強がりはよさんか、儂からしたらまだまだじゃ!……それでお主はどうする?大変だが役には立つ力じゃぞ、儂が保証しよう」


(本当は早く色々なところに行きたいが、こんな不完全な力では身を守ることは難しい……何よりこの力が何なのかはまだはっきりとはわからない以上、師がいたほうが熟達も早いか、仕方ない今は投資の時期だ)


「分かった、それでいい。」


ナオキ「へへっ オーケー、ようこそ湊村へ。よろしくなえっと……」


「レイトだ 」


ナオキ「おう!俺はナオキだ よろしくな!!」


そうして俺の特訓が始まった。

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