9限目 学校から自転車で五分足らずのところに、戦争の終わりが見える場所がある①

幽霊部員ゴーストこと清水健太を仲間に迎え入れ2週間が経った。その間業務タスクしたくてもお尋ね者だから出来ず、ただ御子神社みこじんじゃを魔改造して誰にもバレない拠点を作っていた。

「ねえ、他に仲間になってくれそうな人はいるのかしら?」

意地悪な質問だなー。預言者ギフター殺人鬼ジョーカー戦闘狂バーサーカーは行方が分からない。狩人ハンターは愛染の手駒で表立って接触はできない。こっちは魔法使いウィザード幽霊部員ゴーストの3人で挑まないといけない。常識的に考えて平尾校を攻略するのは不可能だ。

ふと清水は言った。

「そういえば今日祝賀会セレモニーですね。。。あはは……」

乾いた笑い声が寂しく部屋に響いた。数秒の間、篠宮は遅れて反応した。

「ん?どういうこと?」

すると清水は篠宮に土下座しながら

「すみません、でしゃばったことを言って申し訳ございません。」

清水は小学校から中学にかけていじめを受けそれ以降引きこもりニートになったため対人コミュニケーションがかなり苦手だと言っていた。

そんなに自分達にへりくだらなくてもいいのに……

「いやいや、そうじゃなくて何の祝賀会セレモニーなの?」

「えっと、生徒会から通知がありまして、庶務の愛染さんが副会長に当選とのことです。明日新生徒会発足の任命式と明後日新生徒会による大規模侵攻だそうです。」

「じゃあ今の生徒会長さんは退陣になるってことかしら?」

いつも思うが篠宮は化学以外興味がない勉強バカのため何もゲームの仕組みや校則を理解してない。

「違うよ篠宮、今の生徒会長は既に今期の生徒会長でちょっと前に任命式は終えている。明日あるのは他の生徒会役員だよ。というか、この話し前にも話しただろ。」

ヤンは呆れながら言うと篠宮は怒って言った。

「あの時私いなかったわよ!」

「てか、なんで早く生徒会長になってんのあの人♪」

「生徒会長だけ特別でね、前生徒会副会長は自動的に生徒会長になれるんだ。」

「えー、ずるい!じゃあ私たちはなれないの?」

ヤンはやれやれと思い答えた。

「副会長にならない限り無理だね。そもそも素人がいきなり全校生徒を束ねて、外校をやって、全権を得て学校の舵を握るなんてそうとうな覚悟がないと務まらないし、速攻討ち取られたら大バッシング大炎上間違いなしだね。」

「副会長じゃなくても他に候補ていうか選択肢はないのかしら?」

「副会長の仕事が会長業務のサポート兼生徒会長になる為の修行だから。他の生徒会役員とか部長連合とかよりノウハウがあるから多分自然と副会長に票が集まるよ。」

続けてヤンは言った。

「だから次期生徒会長として素質があるか全校生徒が注目するって訳!」

篠宮は今までの話を聞いて仏頂面で言った。

「部下をボロ雑巾にする人が到底生徒会長になれる器は持ってないと思うのだけれども#」

ごもっともである。だがしかし……

「誰も祝賀会セレモニーを止めることはできない。愛染が副会長になるのは既定路線だ。」

だから自分達は自分達のできることをやらなくては……




式は滞りなく行われ、そして翌日の任命式も何事もなく閉式した。夜中、生徒会室にて愛染は生徒会長専用の机に乗り、外を眺めていた。そして図書委員長、剣道部部長が机をはさんで並んでいた。

図書委員長はいつも通り、普段通りに仰々しく言った。

「愛染様明日いよいよ新生徒会の初仕事です。」

ゆっくり愛染は答えた。

「あぁそうだな、ここまで来るのにいろんな人の手を借りようやく辿り着いた。あとは恩を返すだけだ。」

剣道部部長も神妙な面持ちで言った。

「はい。愛染様の大義と忠義のため我々5人が必ず全うします。」

「ふん、頼んだぞ。」



以下5月21日に起きた長岡校の大規模侵攻の記録ログである。



5月21日 18時未明 鴻巣山頂上付近

長岡校は12000人という異例の大規模侵攻に対し平尾校は6000人を動員された。一見長岡校が優位のように見えたが、この戦いの結果、お互い大きな痛手となったが、特にこちらは愛染の失踪という全校生徒に大きく士気の低下に繋がる大惨事であった。


・詳細

18時20分

長岡校の総大将愛染が陣頭指揮を執る一方、平尾校はリョーマ生徒会長を守護する四騎士の1人“絶対零度の剃刀”と謳われた赤司が総大将を務めた。

数で圧倒している長岡校は最終目標である平尾校の展望台攻略に向けて幅広く陣形を伸ばし、そしてあの第二次世界大戦の独ソ戦で有名になった未だ人類、攻略法を確立していない大戦略 縦深攻撃を仕掛けようとしていた。対する平尾校はランチェスターの法則に基づき各個撃破の一点集中突破の陣形を敷いていた。


18時23分

愛染の攻撃を合図に戦闘が開始。鴻巣山の頂上付近では一点突破重視の平尾校が優勢であるが、幅広く展開していた長岡校の両翼は方向転換し、敵の中央部隊に向かった。これは展望台攻略でも平尾校校舎攻略する訳でもなく最初から平尾校主攻を攻略することが目的であった。そのまま両翼部隊が敵の中央部隊に向かうことで半包囲が完成した。その後、平尾校の総大将赤司が主攻部隊を100メートル後退を命令。平尾校を殲滅できると思われた。


19時01分

鴻巣山長岡校方面の斜面、南東、南西側に巨大な洞穴が発生。2つの洞穴から平尾校伏兵4000名ずつ計8000名が出現した可能性。この時点では本校また展望台、本隊も確認できておらず、8000人の伏兵が長岡校主攻に襲撃。結果平尾校は逆襲包囲を完成させた。またこの時点ですでに愛染副会長は行方不明なったと側近の図書委員長が証言している。



19時26分

平尾校の奇襲から25分経過。平尾校の損害は7%に対し長岡校の主攻部隊45%損害を出しており、実質壊滅状態でほぼ敗北が確定していた。



19時30分頃

平尾校の圧勝で終わるかと思われたが、なんと平尾校の全部隊の遊兵(戦闘に配置しているのに戦闘員として機能していない兵)している割合が7割を超えており、指示系統が麻痺していた。捕虜にした兵たちから自白させると以下の内容だった。

・物資補給のため平尾校まで集合

・本校舎に待機している別働隊と交代のため撤退

・リョーマ生徒会長から特命があるためその場で待機

・一旦攻撃を中断。完全包囲を完成させるため50メートル後退etc

このように各々平尾校展望台から送られた指示が異なり、現場が混乱したことが原因だと考えられる。



19時40分頃

長岡校の中央部隊、両翼部隊にそれぞれ差出人預言者ギフターから通知。内容は両翼部隊は中央部隊と合流し、各個撃破せよとのことだった。



20時03分

平尾校の指揮系統の乱れと愛染の代わりに預言者ギフターが指揮を取ってくれたことが幸いして、無事勝利したが、本来の目的である展望台の攻略まで軍を維持することは不可能であったため、撤退を余儀なくされた。こうして幕を閉じたのである。



ここまでが生徒会書記に記された記録ログであるが、データに残されていない軌跡を知る者は神と英雄のみだった。

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