〜戦学時代〜社会的弱者な自分が現実世界なVRで天下統一はじめました。

0248

1限目 長い坂の上にある校門を抜けるとそこは戦乱であった①

春のうららかな昼下がり、図書室でネット


掲示板のまとめサイトを見ていた。


他の陽キャたちは校庭で飽きもせず


はしゃいでいる。もうすぐ戦争が始まるのに……


「さてそろそろ準備するか。」


席を立とうとした時、自分の背後に1人の


女の子が立っていた。


「昨日はありがとうヤンさん♪」


その女の子は150センチくらいの身長で


白銀色のショートカットに、吸い込まれ


そうな青い瞳。長岡校専用のブレザーの


制服を、っていろいろ説明したところで


百聞は一見にしかず、見た目は端的に言うと


この間、実写ドラマ化した原作ラノベの


『たんもしシリーズのシエスタ』を


思いっきり意識してキャラデザした女の子が


自分に話しかけてきた。そしてこの女の子は


先週の席替えで同じ53班なった科学部所属の


篠宮である。


「どうも。」


その場から離れようとした時だった。


「待って、あなたに聞きたいことがあるの♪」


「ん?この後用事があるから手短に頼むよ。」


「あの時私を助けたのは計算だったのか


それとも偶然だったのか。返答次第では


私の仲間にしてあげるわ♪」



昨日の昼、戦闘中に鴻巣山回廊で一人怪我で


動けなくなった篠宮が敵の弓道部に狙われて


いたので、篠宮と弓道部の間に大樹を切り


倒し、射線を遮る形で救助したのである。


 まあ助けたのは同じグループのメンバー


として当然のことをしたから別にいいとして


今、篠宮が言った仲間にしてあげるって


もう既に同じ班なのに仲間とはどういう


意味?えっもしかして、もう仲間はずれに


なってたのか?あれか、昔のラノベでいう


ところの追放系モノが展開しているのか?


いや自分が知らない間に追放系が始まって、


たった今堂々のフィナーレを飾ろうとして


いるのか?とりあえず質問の意図を聞かなければ


「今の質問はどう言う意味?」


「まずは私の質問に答えてくれるかしら♪」


とりあえず答えないと話しは進まないらしい。


「いや、偶然だよ」


そんな自分を篠宮は一瞬怪訝そうな目で


見たがすぐに普段のおちゃらけた雰囲気で答えた。


「そう、ならいいわ。あと、あなたが頼んでたモノ出来たわよ♪」


そう言い、僕に渡した後彼女は立ち去った。


正直言って計算して助けました!なんて


自分から言うのは尋常じゃないくらいダサい!

そしてなにより仲間になったらなったで


絶対面倒くさいことに巻き込まれるのが


手に取るように分かる。そう自分に言い訳した。

はぁ、さっさと支度をしよう。






pm.9:00鴻巣山の山頂付近で戦闘開始。

我が長岡校は真後ろに鴻巣山があり、その山の反対には平尾校がある。半年前くらいに不可侵条約を結んで一時期平和で戦争なんて起きるわけがないと思っていたんだが……


この鴻巣山には山頂を挟んで南西側に1箇所、北東側に1箇所展望台があり、その山の間に山道が1本通っている。この回廊付近で今月で2回戦闘が発生。そして今回で3回目の戦闘に突入したのである。


どんどん緊急通知のSOS信号が届く。

第一防衛ラインが突破され、さらに第二防衛ラインの中央部隊が押されてる。特に下級生が死地に出されバタバタやられている。また敗戦確定か、流石に展望台まで陣地取られたらこの戦争の勝敗が決まる場面。こっちの第二防衛ライン右翼部隊は膠着状態に陥り、そろそろ動かないとこの戦争自体決着がつきかねない事態でもあった。もう誰もが敗戦濃厚だとそう思った刹那、あり得ないものを目にした。自分の背後から大量のドローンが編隊を組んで前線へ滑空していったのである。今日ネットでは攻略サイトがあるから有効な作戦はもちろん武器や乗り物など軍事技術はだいたい出回っている。したがって軍事ドローンを戦場に導入する機会が増えた一方だいたいの学校はその対策としてドローンガンの応用つまり妨害電波を展開している。

なのになんで当然ドローンなんてこの山の中妨害電波だらけなのに飛んでいるんだ……

そう戸惑っていたところ聞き覚えのある声がまた背後から聞こえた。

「あら、まだこんなに手をこまねいているのかしら♪」

軽装備の篠宮がしたり顔で仁王立ちしていた。

アホだ。そんな堂々と戦場のど真ん中にいたら集中砲火食うぞ。

そう思っていたのに敵は篠宮を正確に撃てず、頓珍漢な方へ撃っていた。相手は暗視ゴーグルを着けているのだから容易に攻撃ができるはずなのに。敵の隙が生じてる間に篠宮はマスケット銃で連続キルしていき、それに乗じて味方の剣道部や弓道部も突撃して行った。

今まで何も打つ手がないこの均衡を破ってくれるのは助かる。まあ助かるのだが、班行動してくれ。自分はどちらかと言うと武官ではなく文官寄りなタイプなのでつまるところ運動音痴だからもうちょっとゆっくり行ってくれー!そんな思いは届かず篠宮は猪突猛進で戦場を駆け抜けて行った。正直あんな軽装備ですぐに返り討ちに遭うかと思いきや相手をどんどん撃破し前線を押し上げていた。あいつも科学部だから文官寄りじゃないのか。天はあいつに二物を与えてキャラ濃くしてどうするんだ。




 しかし残念ながら篠宮の奮闘も虚しく当然返り討ちに遭う。善戦はしているが徐々に後退していく。あんなに大立ち回りしていた篠宮も苦戦し後退。最初のいた前線より50m後退した。ここまで平尾校が磐石なまでに強いのはやはり一人ひとりの圧倒的な戦闘力の高さである。兵力、武器や装備の性能、物資も恐らく全て互角だと思われるが、やはり相手の学区には現実世界の市内で唯一の警察学校があり、そのチームが組んだ“白虎隊”の戦闘力は折り紙付きというのは聞いている。その白虎隊ではない一般兵ですら、こちらの猛攻に怯まず、恐ろしいくらい冷静で、なかなか倒せない現状である。今回の戦闘で白虎隊は出てないと報告で聞いていたが、自力の差が出たのか篠宮の奇襲もなんなく対応して撃破。そこからズルズルと前線を押し返されてしまった。



 ここ最近平尾校の生徒会が変わってから軍事開発に多額の投資しており、暗視ゴーグルしかり軍事ドローンの導入を積極的に行なっているらしい。まあ実戦で試したいのはよく分かるが、宣戦布告なしに奇襲とは本当に卑怯極まりないなと思う。他の学校がそれを良く思わないし、敵に回してしまう可能性も大いにあるのに、まあそれだけ平尾校はこの一帯の学校を潰せる自信があるのかと思うと末恐ろしい学校である。まあ、実際あの“白虎隊”はかなり脅威であるのは事実、我が長岡校は開戦からずっとあの山を越えて攻められず、ずっと防戦一方のままである。こちらの生徒会もいろいろ試行錯誤して対応はしているみたいだが。。。先ほども説明した通り各学校の戦力はそんなに変わらないが、戦力に差をつける方法として兵力、軍事技術の基礎研究、そして物資である。この3つのうちどれか一つでも秀でてるものがあれば、それは大きなアドバンテージであり、また戦時中でなくても外交カードとして利用できるのだが、うちの学校はあの“白虎隊”に対抗できるカードがないのである。そりゃあまあ負けるよね。



いろいろ市内の学校情勢を語ったが、今現在の戦況は第二防衛ライン右翼部隊も物資が尽きかけており、一旦後退して体勢を改めている状況である。図書委員の自分の見地から言わせてもらうと人員も物資も不足しているためさらに後退して第三防衛ラインと合流するのがベストだと思われる。したがってさっきから学級委員長に後退の合図を右翼全部隊に送るよう打診すると、さすが前時代の名残りが垣間見える返信

『ピンチこそチャンス!必ずこの前線を維持しろ!絶対無理ってことはない!士気があれば何でもできる!』

ブラックパワハラ学級委員長に打診したこと自体そもそも間違いだってことを後悔した。物理的に厳しいからセオリー通りでいくと物資の配給、増援を打診した結果、士気で盛り返せって図書委員の存在意義ないじゃん。だいたいなんで図書委員である自分が最前線立ってるんだよ!他の班の図書委員全員は全体を見渡せる後方担当でクラスの学級委員長に戦況の報告とその対応策の提案をしているのに……あぁ、まさかここでも自分の嫌われ者のスキルを発動するとは自分にもっと学級委員長を説得させる交渉力とか普段から親交があって信頼される力があれば……

でもまあ昼間の準備が無駄にならないだけでもマシか。




篠宮の最初の前線から20m後方に位置していた。近くに味方がいない孤立無縁の状態。誰か応急処置してもらわないと、、、肋骨が数カ所、左腕も折れてる、右足はもう動かない。大木の洞穴に身を隠して救援を待っていた。アイテムからマップを広げ味方の前線の位置を確認したが、10分、20分と時間が経つにつれどんどん味方の前線が後退していった。もう救助に来てもらうのは絶望的と悟った。そしてさらに、絶望的な状況になった。敵に発見された。

「おい姉ちゃん、さっきはずいぶんやってくれたねえ。」平尾校の部隊15人が篠宮を囲んだ。そして敵の班長らしき人が篠宮に話しかけた。

「俺たちの暗視ゴーグルの視界に白いモヤが映り込んでいるんだけど、どうやったの?」

不敵な笑みで彼女は口を開いた。

「なんでドローンが飛んだのかは聞かないんだ♪」

「ああ、ドローンは俺たちの専売特許だから飛んできたのは驚いたが、まさか原始的な有線を繋いでいるなんて逆に思いもしなかったよ。しかも途中有線が限界で立ち往生して返り討ちにあうってもう少しどうにか出来なかったのかよ笑!まあ本題に戻ってあのモヤの方を答えてもらおうか。」

「白いモヤの方は企業秘密♪」

敵の班長もやれやれといった様子で言った。

「まあこの件に関しては多分この女は口を開かんだろうな。捕虜にするぞ。」

もうこれ以上時間稼ぎはできないみたいね……一点突破は難しいし、もうすでに手足が損傷し、回復アイテムを持ち合わせていない。もう負けるのは確定してるわけだからせめて、数を減らしてやる。最後の力を振り絞り、アイテムから自爆用の爆弾グレネードを出した瞬間だった。

 激しい閃光が目の前に光った。その時気づいたのであった。昨日の昼なぜ彼が早く大樹を切り倒すことが出来たのか、そしてこの閃光も…私は気絶スタンされ、後のことはよく覚えていない。

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