第十転-コロコロールドラゴンVSハングリーグリズリー【中編】。

【TURN2】



「そして俺のターン! コロコロール!」



 コロコロコロコロ!



 ③ストーム(相手に20ダメージ)。



「さらに追撃のストーム!」



『ストォォォォム!』



『グォォォォォォォォ!』


 【ハングリーグリズリー】

 HP50−20HP30。



 再びコロコロールドラゴンが尻尾で竜巻を起こしハングリーグリズリーに追撃した。

 これでハングリーグリズリーの残りHPは30。状況によっては次の俺のターンで勝利も狙える。


 ミスコマンドを引くことなどまるで頭の中にはなかった。


 絶対に引き当てられる、今の自分になら何でも出来るという自惚れ染みた確信があった。



「ちぃっ……!  一体なんなんだあの人間は! さっきまであんなに狼狽えていたのにまるで人が変わったように冷静になりやがって!」



「……」



「……っ! ムカつく野郎だ! スカしていられるのも今のうちだぞ! コロコロール!」



 コロコロコロコロ!



 ①神化。



「ククク……神化コマンドを引いた! これでハングリーグリズリーはグラトニービーストへ神化する! もうお遊びはここまでだ人間!」






【グラトニービースト】

 HP30+50HP80 (神化するとHPが+50される)。


 ①超神化(対応するバトルキャップがある場合、超神化が出来る)。

 ②ミス。

 ③グローアンドスラッシャー(相手に40ダメージを与え、次のターンから与えるダメージが20増える)

 ④暴食ノ咆哮(⁇?)

 ⑤ アーマードビースト(自分のHPを30回復し次のターンから受けるダメージが20減る)

 ⑥ グラトニーパージ(自分のHPを20減らし相手に80ダメージ)。




『グルルルルル……』



 ハングリーグリズリーが四足歩行の獣の姿だったが神化したグラトニービーストは二足歩行になった事で人型に近づいている。



 それに人間なんて容易く引き裂けるであろう刃物のような爪に大顎が禍々しい外見に拍車をかけていた。

 


『グォォォォォォォォ!』




「……」


 

 それなのに不思議な感覚だ……負けたら死ぬような状況下にも関わらず俺はすこぶる冷静だ。むしろどんどん集中力が増してくる。


 こんな化け物を目の前にすれば普通は卒倒するはずだろうに。



【TURN3】








『平気か、アラ太?』



「あぁ」

 


 あまりの恐怖に感覚が麻痺しちまってるのかと思ったがどうやら違う。


 頭がどんどん冴えてくるのだ。


 俺の脳内で『この状況を切り抜けるために自分に出来ることは何か?』という思考が永遠と渦巻き続けている。

 のようなものだろうか……いや神様の言葉を借りるならこうも呼べるかもしれない。



「神様」



『うむ』



「俺にも出来たよ……ってヤツが」



『そうか……つまり君を選んだワシの判断は正しかったということだな』



「どうだろう? それは今の俺にも分からん……分からんから俺は」



 一際強く鉛筆を握る……胸の奥から湧き上がる思いが伝わるようにと。



鉛筆コイツに聞いてみることにする! 行くぞ!」



『来い!』



「コロコロール!」







 コロコロコロコロ!










 ①神化。



「なっ、神化!?」



「神化コマンドに止まったことでコロコロールドラゴンもグラトニービースト同様、次のターンから下のコマンドを使用出来るようになる! 神化せよ! コロコロールドラゴン!」



『ハァァァァァァァァァァァァ!』



 俺の神化の宣言の共に周囲に大竜巻が発生し周囲の雲を巻き込みながらコロコロールドラゴンの身体を包み込み尚も勢いを加速させていた。



 やがて竜巻の中から雄々しくも美しい青色の龍が現れた。



 それは可愛らしくデフォルメされた姿をしていたコロコロールドラゴンとは違い数多くの伝承に残っている青龍の姿そのものだった。



「これがコロコロールドラゴンが神化した姿! 転生龍てんせいりゅう・クロニクルドラゴンだ!」




転生龍てんせいりゅう・クロニクルドラゴン】


 HP100+50HP150(神化するとHPが+50される)。


 ①超神化(対応するバトルキャップがある場合、超神化が出来る)

 ②ミス。

 ③トワイライトストリーム(相手に50ダメージ)

 ④ ゲートオブクロニクル(???)

 ⑤ドラゴンラッシュⅡ(相手に30ダメージを与えた後に鉛筆を振り3の倍数が出た場合もう一度行動出来る)

 ⑥ホーリーギフト(HPを30回復し次のターンに相手から受けるダメージを50ダメージ少なくすることが出来る)




『ふぅ……やはりこの姿が一番体に馴染むわい』



「その姿……昔の貴様を思い出すようで腹が立つ……っ! 300年前、霊媒うつわとして選んだ巫女と共にこの俺様を封じたあの時の貴様を……っ!」



東門とうもん青龍神せいりゅうじんのみことの名において、餓鬼がき武者むしゃ……お主を再び封印させてもらうぞ!』



「やれるものならやってみろ! 最後に勝つのはこの餓鬼がき武者むしゃだ! コロコロール!」



 コロコロコロコロ!




 ③グローアンドスラッシャー(相手に40ダメージを与え、次のターンから与えるダメージが20増える)



「喰らえ! グローアンドスラッシャー!」



『グォォォォォォォォォ!』




「青の消しゴムの能力は解放しない! このまま耐えてくれクロニクルドラゴン!」  



【転生龍・クロニクルドラゴン】

 HP150−40HP110。



『グッッ……これくらい耐えてみせるぞ……っ!』



 グローアンドスラッシャーの追加効果で、次のターン以降、相手の技によるダメージ量は更にHP20分上乗せされる。


 現状はまだ俺が優勢だが火力が上がっている分、一度のミスだけで逆転されちまう。



 青ケシの能力は強力だが発動は1/2だから安定しないのが欠点。過信は禁物だ。



 それに奴の鉛筆に仕込まれた黒い消しゴム……能力は不明だ。



 だがいずれにしてもここが勝敗の別れ目! 一瞬たりとも気は抜けない!



 最後までこの優勢を保ちながら勝つんだ!



「次は俺の番だ! コロコロール!」




 コロコロコロコロ!



 ③トワイライトストリーム(相手に50ダメージ)



「出目は③! よってトワイライトストリームが発動する! 転生てんせいりゅう・クロニクルドラゴンの攻撃!」



『聖なる神風で吹き飛ばしてくれる! トワイライトストリーム!』






「ククク……」



「……っ!?」



『グゴォォォォォォォォ!』


 【グラトニービースト】

 HP80−50HP30。



 クロニクルドラゴンの尻尾から発生した旋風が大竜巻になりグラトニービーストを攻撃した。




『これで神化したことで増加したHPは帳消しじゃ! ついに射程圏に捉えたぞ!』



「……」



『どうしたアラ太?』



「妙なんだよ……いくらなんでも簡単すぎるぜ。今の攻撃を受ければクロニクルドラゴンの如何なる攻撃もフィニッシャーになり得る。餓鬼がき武者むしゃからすれば絶対喰らいたくなかったはずだ」



『それになんの懸念がある? 君がすこぶる絶好調なだけじゃろう』



「あの局面でケシゴムの能力を使わなかったということはあの黒いケシゴムはこっちが装備している青いケシゴムのような相手の攻撃に反応する防御型、あるいはカウンター型の能力ではないと考えられるわけだ」



『つまり



「恐らくな」



 トワイライトストリームを喰らった時の餓鬼がき武者むしゃの薄ら笑いが脳裏から離れない。



 何か奥の手があることは明白だ。



「ククク……どうやらこの黒いケシゴムの能力が気になっているらしいな」



「……」



「随分といい勘と強運をしている……どうやら貴様は危機的状況に追い込まれるほど能力が目覚める種類の人間らしい……俺様が一番嫌いな種類の人間だ」



『グルルルル……』



 グラトニービーストが唸っている……?



 その様子はまるで喜びに打ち震えているようにも俺は感じた。



「光栄に思え! 貴様の実力を認め! 300年ぶりに全力をぶつけてやる! 黒のケシゴムの能力解放!」






【黒ケシ】

 解放条件:TURN2以降でかつ自分のターンであること。

 特殊能力:残りHPを半分にし自分のターンの行動を放棄することで①から⑥までの出目の中から好きな数字を選びその出目の効果を一度だけ適用できる。

 使用制限:一度のバトルで一度だけ使用可能。



「黒のケシゴムの能力はこのターンの行動を放棄し! 残りHPを半分にすることで①から⑥までの出目の中から好きな数字を選びその出目の効果を一度だけ適用できる! 俺様が選択するのは①の超神化!」



【グラトニービースト】

 HP30÷2HP15。


【黒ケシ使用制限】

 1−10。



『鉛筆を転がす事なく好きな出目を選択する特殊能力じゃと……っ!』



 如何に強力な効果を持った出目でも鉛筆を転がすという都合上、発動は確定ではなく偶然だ。


 黒のケシゴムの能力を使えばそれすらも必然になるというのか?



 しかもよりにも超神化とは……な。



「バトルキャップセット! グラトニービースト超神化!」



『グロロロロロロロロ!』



「さぁ! 我が分身たるグラトニービーストよ! 俺様と一つとなりその絶大な力を示せ! 化神けしん降霊術こうれいじゅつ!」



 餓鬼がき武者むしゃは手の甲に描かれた逆五芒星の魔法陣の中心に鉛筆で点を描き入れた。



『け、化神けしん降霊術こうれいじゅつ……っ!? まさか化神けしん召喚術しょうかんじゅつの更に上の神術まで会得しておったのか……っ!」



「男の子とグラトニービーストの体が鉛筆の中に吸い込まれた……っ!?」



 やがて鉛筆は神化しんか結界けっかいとも一つに交わり禍々しく邪悪な光を放ちながら巨大な体躯をした鎧武者が姿を現した。



『グゴォォォォォォォォ!』



 そいつは底冷えするような太くドスの効いた声を響かせる。



『これが超神化した俺様の姿! 暴食の魔妖芯まようしん餓鬼がき武者むしゃだ! アッハッハッハッハ!』



「こ、これは……っ! 神化しんか結界けっかいの幻で見た餓鬼がき武者むしゃの姿と同じ……っ!?」



『気後れるな! これが奴の…… いくつもの人里を壊滅させた暴食の妖芯ようしん餓鬼がき武者むしゃの真の姿じゃ! ここからが正念場じゃぞ!』



「分かってる!」

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超神化鉛筆コロコロール!〜転売目的でコロコロ鉛筆買ったけどうっかり本物の神様の宿ったコロコロ鉛筆を手に入れてしまったせいで神様から一緒に世界を救ってくれってせがまれた件〜 鳳菊之介 @soleilbrilliant

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