私、勇気を出して押しちゃった!

今は8月。


日差しが強く、気温も上がる一方だ。


買い物などの短時間のの外出でも、汗が噴き出す。


ニュースでは

高齢の方々が熱中症でなくなる事件をよく耳にする。


(クーラーなど部屋の温度を下げる家電を使えば大丈夫なのでは?)

と、思うけど...


実は、家電が揃っていなかったり、家が古くなっている為、クーラーが設置出来なかったり。


それ以前に、新しくなり続ける家電についていけず、最終的に面倒くさくなり家電を使わない高齢者が多いそうだ。


扇風機や窓を開けて、自然の風のみで過ごす方も少なくないらしい。


運良く、施設に入れたり

デイサービスに通えたり

ホームヘルパーが定期的に来てくれれば

命の危険性は下がるそうだ。


福祉サービスが充実している日本は本当にありがたいと思う。


でも、現場で働く職員さんは常に苦労が絶えないらしい。


人の命を守る仕事。


カッコいいけど、なかなか出来ない仕事なのかなぁ。


とも思ってしまう。


全て、おじちゃんから話を聞いて思ったことだった。


そう、おじちゃんは福祉現場で仕事をしている。


複合施設と呼ばれる、とても大きな所で運転手として仕事をしているのだ。


様々な現場の職員との交流もあるそうだ。


今年の夏も、ご利用の方々の体調が常に心配らしく、運転しながらも関わる方々の体調の変化がないか常に目を光らせているそうだ。


(利用する人の心配が出来るなら、自分にもしっかり気を配ればいいのに)


そう、昨夜のことだ。


夕食の準備をしていた、おじちゃんは

「今日はフライドポテトを揚げよう」といいだした。


久しぶりに私も食べたくなったので

「いいね!いいね!」と賛同した。


鍋に油をひいて、ポテトを揚げる準備をする、おじちゃん。


私は冷凍庫からフライドポテトを取り出した。


袋が開いていて、半分は以前に食べていたようだ。


私は気にせず、おじちゃんに渡した。


次の瞬間

フワッとおじちゃんの右手あたりに、小さなザワザワ影が現れた。


「あっ、おじちゃん!影だ!気をつけて!」と私は伝えた。


おじちゃんは

「えっ?今?火事にでもなるの?」

と、消化器を取りにいった。


戻ってきた、おじちゃん。

「これで大丈夫!」と、自信満々。


なんと、日焼け予防にそのまま着ていた長袖を半袖にも着替えてきていた。


「夏はやっぱり半袖だね。長袖だと火が服にうつる可能性もあるから念の為」とのことだった。


なるほど。

ここまでやっていれば大丈夫だろう。

と、私は思った。


おじちゃんは温度の上がった油にポテトを入れ始めた。


が、大胆にも一気にポテトを入れたのだ。


性格的に大胆なおじちゃん。

気持ちは分かるけど...

それはやり過ぎでは...


と思った途端


「うわぁ!熱い!」と大声を上げた。


かなりの勢いで油がはねていた。


どうやら、ポテトの袋の封をしっかりしていなかったから霜がポテトについてしまったらしい。


そのポテトを勢いよく入れたら...


熱いよね。


おじちゃんは右手付近に軽い火傷をおおってしまった。


「なんだよぅ...さっきの影ってやつは...この火傷のことか...」と流水に右手を当てながら肩を落とすおじちゃん。


本当に肝心な所がドジよね...


フライドポテトは後半は私が揚げることにした。


その後、無事にフライドポテトは完成し美味しくいただきました。



******************



相変わらず、暑い。


とけてしまいそうだ。


(早く買うものを買って帰ろう)


早歩きで移動していると

見るからに不機嫌そうな

お爺さんが歩いてきた。


こだわりが強くて頑固者。

絶対に一人暮らし。


そんなイメージを過持ち出していた。


(わぁ...怖いなぁ。なるべく関わらないように...)と思っていると、頑固そうなお爺さんの肩付近にザワザワ影が。


さらに、薄く赤に変わっていった。


(赤い影?何だろう。とても嫌な感じがする)


すぐにでも声をかけたかった。

でも怖くて何も出来なかった。


どうしていいか分からず、私はその場に立ち尽くした。


頑固そうなお爺さんは、しっかりとした足取りでズンズンとまっすぐ進む。


私がここからギリギリ見える範囲にある、ちょっと古い家の前で立ち止まった。


そして、お爺さんは家に入っていった。


(間違いない。あそこがお爺さんの家だ)

私は確信した。


赤い影。

心配だ。


見たことがない影の色。


でも...どうしよう...。


しばらくその場に立ち尽くす私を心配したのか、おばさんが、

「ねえ、アナタ大丈夫?何かあったの?」と声をかけてくれた。


「あっ、いえ、あの家に住むお爺さんが気になりまして...」

と正直に伝えた。


「あのお爺さん。ほとんど近所と交流を取らないからねぇ...。何か物作りをする仕事らしいけど分からなくて」と話してくれた。


さらに

しっかり食事を取ってないかもしれないこと。


家族、親戚がいないかもしれないこと。

を教えてくれた。


「ただ、あのお爺さん、無愛想だからねぇ」とおばさんは言い残しさっていった。


さて、困った。

このまま帰ろうか?


でも赤い影が

とても気になる。


(ええぃ!ままよ!)


勢いに任せて、お爺さんの家に向かった。


家の前に着き、チャイムを押そうと...

ええぃ!


私はチャイムを押した!


「どなたかね?」とさっきのお爺さんがインターフォン越しに出た。


「あっ、突然すみません。先程すれ違った時に、お爺さんの顔色が悪く見えて...来てしまいました」


(顔色が悪かったなんてウソだ!)

と私は心で呟いた。


お爺さんは

「ふん。ワシの顔色が悪いか?何を言っているのか。まぁ...面白い。ちょっと待っとれ」と、言い残しインターフォンを切った。


しばらくしてお爺さんが出てきて

「さて、ワシの顔色が悪いのか良く見てもらおうか?」

と私の顔を睨んできた。


(うわ~。やっぱり怖い。来なければよかった)

と本気で思った。


「いえ...ぇ。わ、私の勘違いでした...」

とビクビクしながら伝えると


「ふん。無駄な時間を過ごしたわい。これだから最近の若者は...」と私に背を向け玄関に歩き出した。


(怖い、怖い、怖い)

恐怖でしかなかった。


お爺さんがふと、足を止めた。


どこからか猫が2匹やってきて、お爺さんに近づいたのだ。


「何だ、腹が減ったのか?ちょっと待ってろ」と家に入るお爺さん。


次に家から出てきた時には猫の餌を持っていた。


「さぁ、食べろ」と猫に餌を差し出した。


「何だ、お前。まだいたのか?用がないなら、さっさと帰れ!」


私は「びくっ」として

慌てて、自宅に向かった。


ただ、お爺さんには

赤い影は見えなかった。


さっき見えたのは、気のせいだったのだろうか?

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