第22話

カウンターの奥の扉から目つきの鋭い男が近づいてきた。

待ち人来たるか?


「またお前か。


新人にちょっかい出すのは辞めろって言ったはずだぞ?」


私に絡んできた男は顔を真っ青にしている。

そんな顔をする位ならば最初からしなければいいと思うのだが。


「貴方はギルドマスターだろうか?」


「ああ、そうだ。


お前は今日入った新入りらしいな」


ギルドマスターは私の事を見ながら、何か考え込む仕草をしている。


「こんなヤツに喧嘩売るなんざ命がいくつあっても足りやしねぇってのに…。


オツムも相手を見る目もないんじゃ今ここにいる冒険者は底が見えた様なもんだぜ」


「買い被るのはやめていただきたい。


私はまだまだ修行中の身なのだから」


魔物との戦いは経験していても対人戦は全くない。

私のいた所には山賊の類は居なかったし、この街に来る道中にも遭遇しなかった。

どこかで対人戦の機会を設けておきたい所だ。


「そういうヤツが一番怖いんだよ」


「私は別に怖くもないのだが…。


それよりも私と彼の処遇はどうなるのだろうか?」


「お前は一切手を出していないみたいだし、絡まれただけだからな。


今回の件に関してはお咎めなしだ。


ただし、ビリー…お前は駄目だ」


私に攻撃してきた青年、ビリーはどうやら前にも同じ様な事をしており、冒険者ランクの降格処分となった。

元はDランクだったがEランクに降格した。

職員に後で聞いた話だが、一度でも降格処分を受けた人間は再度ランクを上げる為には最初に上がった時よりも遥かに難しい道が待っているという。

護衛依頼なども受けにくくなるらしい。


ランクの降格処分や依頼の成否などはギルドカードに記録されるらしいので、どんな街に行っても解る様になっているとの事。

なかなかに便利な機能が付いているものだ。

どのようにすればそんな機能を付けれるのか少し気になるが、私にはあまり使う必要のない知識だろう。

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