第2話 街
「市長様、今日もいい天気ですね」
「様はやめてください。雨が全然降りませんね。」
街の人は、いまだに僕のことを様づけで呼ぶことがある。
普通に市長でいいじゃないか。恥ずかしい。
「たかしはそれだけのことをやったんだ。いいじゃないか。」
「ありがとうよ、副市長」
「うげ、二人の間で副市長はやめろよ。なんかムズムズする」
「だろ?」
2人の仕事は膨大なので、通信でしかここ数日話してない。
「市長、これから狩りに行ってきます。」
3兄妹の末弟ツキはすっかり大人になったなあ。
もう15歳。NPCだからスキルは無い。それなのに毎日狩りなどでこの街に貢献してくれる。
見送る後ろ姿も、がっしりとした身体つきになったもんだ。
猿だったころが懐かしい。
「旦那様、ごきげんよう。」
おっと、レナに見つかった。
「旦那様、執務室にてお待ちしておりましたが、一向に来ないのはどうしてですか?」
いやあ、天気がいいから散歩もいいかなあと思って。
「かしこまりました。では、この私も同行いたします。」
こうなったらテコでも意見を変えないレナは、ひょっとしたらこの街で一番偉い人なんじゃないだろうか。
実際散歩したかったのは本当だ。シュウの様子を見に行きたかったからだ。
シュウの家畜場は街の北側にある。
顔を見かけるやいなやダッシュで駆け寄ってきてくれる。ええ子や。
「市長、今日もサボりですか?」
前言撤回。なんてことをバラしてくれるんだ。
隣のレナは涼しい顔を崩さない。
これは、、、バレてるな。
「家畜の育成は順調かい?」
「はい!特に今年は豚たちがよく育っています。おいしいベーコンやソーセージが作れそうですよ!」
豚さんたちが元気に鳴いている。食料事情もほとんど問題なさそうだ。
必要なものがあったらなんでも言ってね。
「ありがとうございます!市長も、何かあったら何でも言ってくださいね。」
優しい子に育ったなぁ。
レナがこちらをちらりと見て言う。
「私にもなんなりとお命じください。なんならメイド服でお仕事しましょうか?他に好きなコスチュームがあったら言ってくださいね。」
メイド服なんて誰から聞いたんだ…。1人しかいないか。銀杏くんめ、余計なことを吹き込んでくれたな!
「あとはどこに行かれるので?」
コトミの畑を見に行きたい。
コトミの畑は街の東に位置している。
「よくきたわね。市長。もぎたてのキュウリ食べる?」
しゃくしゃく。あまーい。イイ感じに美味しくできてるね。
スイカ食べたくなってきた。
「スイカもあるわよ。切ろうか?」
いやいや、今は仕事中だから。
「ママー!!」
ぱたぱたと駆けてくる二匹の怪獣。
銀杏くんの子ども二人。
楓ちゃんと奏ちゃん。双子なのでよく似ている。まだ3歳なのでカワイイ盛りだ。
「おじさんだー。抱っこして~」
ん~、まだオジサンじゃないぞ~。二人を抱え上げる。重たくなったなあ。あと何年抱っこしてあげられるやら。で、大きくなったら反抗期とか来るのかな?おじちゃん泣いちゃうよ。
「たかしがお父さんみたいな反応するなよ。」
通信で銀杏くんが突っ込みを入れてくる。
状況が状況だからか、シュウ・レナ・ツキの反抗期?はなかった。
レナは反抗期なかったなとレナに言ってみると
「反抗期などありませんわ。私のすべては市長のものでございますわ。」
どこかお嬢様キャラがレナには定着してきていた。
カーン、カーン、カーン!
物見の鐘が鳴る。壁の外にゾンビが押し寄せているときに鳴らすようになっている。
だいぶ多そうだ。武装して迎え撃とう。
鐘に合わせて戦える男どもが街の入口に集合する。
入口以外の壁は相当固く、コンクリートにしてあるので、入口の前に自然とゾンビが集まってくるように外の堀も誘導してある。
物見から、ゾンビの数は約100匹と報告を受ける。
どのみち入口を開けて戦うしかない。
ゴゴゴゴゴとゆっくり跳ね橋が下りる。
ゾンビ100体との戦いが始まる。
続く
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