9日目

ギルの遺した3人を、このままにはしていけない。


コトミの住処では手狭なので、こちらの教会に引っ越すことにした。


引っ越しの作業中、3匹の恐竜を見るのは僕の役割になった。


一番上がシュウ。たぶん7歳の男児。茶髪に黒い目。普段の聞き分けはいいが、少し気が弱いところがあるようだ。

二番目がレナ。たぶん6歳の女児。金髪に燃えるような赤い目だ。3人のリーダーのように気を強く持っている。そしてよく喋る。

三番目がツキ。たぶん5歳の男児。赤髪に緑の目。これが言うことを聞かない。フリーダムだ。


「なあ、たかしにいちゃん。コトミと付き合ってるのは二人のうちどっちだ?」


レナめ!なんてマセたことを。

まだコトミと出会って1週間も経ってねえっつの。


「にいちゃん、コトミに惚れてんだろ?言っちまえよ。ぜってェ、まんざらじゃねえって。」


そ、そうかな?いやいや、そういう気持ち持ってないから!


「ヒュー、お兄さん、赤くなってるね。」


シュウも面白がって乗ってきた。


「イエーイ!赤くなってる!赤くなってる!ウエーイ」


ツキは猿だ!さっきから奇声ばっかり上げている。


うるさいよ!3人とも!はやく缶詰食べちゃってよ!片付かないじゃん!


「しょうがねえなあ、にいちゃん、アタシが貰ってやるよ。」


何をだよ。


「察しが悪いなア。アタシの旦那にしてやるって言ってんだよ。」


わお、プロポーズされちゃった。


「死ぬまでこき使ってやるから覚悟しろよ?旦那。」


違うこれ。奴隷契約だ。

こらシュウ、隠れて笑ってるんじゃありません。


「ぎぃえええええええ!」


やめろツキ!ゾンビの声真似なんてするんじゃありません!


「ずいぶん懐かれてるじゃないか。」


銀杏の通信だ。

いや、これ、懐かれてんじゃなくて、おもちゃにされてるだけだよ…。で、どうしたの?


「朗報だ。コトミの畑をどうするか考えてたら、スキルがあった。道具なしに畑が作れて、種があれば埋めるだけで成長するみたいだ。水もいらん。」


種はあるの?


「じゃがいもと、とうもろこし、キュウリにキャベツ。これで3日ごとに収穫できるみたいだ」


なんじゃそりゃ!ほんとにゲームみたいだな。3日て!コトミの努力の畑が一瞬にして出来てしまうなんて!


「コトミは、便利ならいいってよ。」


3日で収穫かあ。ちゃんと食えるのかなぁ?味としてはどうなんだろうなぁ?


これで食料問題は解決したと言ってもいい。缶詰ばかりの毎日にサヨナラだ。


「あとは、料理スキルがあれば完璧なんだが、どうも俺じゃとれないらしい。スキルポイントは余ってるけど、料理アイコンは暗いままだ」


ふむ。取れる人が限定されてるのか…?

あれ?僕取れるみたいだよ。とっちゃうね。


これでコーヒーや茶、果実ジュース、ステーキ、肉や野菜の水炊きなどができるようになった。

便利って素晴らしい。


「料理ができる夫って良いじゃないか。」


こら、銀杏くんまでレナの話に乗るんじゃない!


「ははは、元気そうでよかった。ギルを殺したこと、気にしてると思ってたぜ。」


…。気にしてるよ。

でも、三人のお世話はそれ以上に忙しいよ!?

3人とも、死んだらゾンビになることだって心配してる。

ギルが出来なかったこいつらの成長を見守ってやんないと。


夜になると、三人が僕の寝所に潜り込んできた。

こいつらだって不安なんだろう。


「なぁ、旦那。ギルはかえってくるかな?」


レナ…。ごめん、言えない。


「旦那が代わりになってくれんのかよ。」


うん。できるだけ頑張るよ。


だから今日はおやすみ。

きっと君たちは僕が守ってみせる。


おやすみなさい



続く

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