第二話 2人きりの夜

朝目が覚めると洗面台に行き顔を洗う。

浴室からはシャワーの音が聞こえてきた。

きっと父さんが入っているのだろう。

僕は気にせずに顔を洗いコンタクトを付ける。

浴室のドアがガチャリと開いたので父さんに「おは…よ…う」

と言ったがそこに居たのは父さんではなく

かすみだった。


「なっ…!変態!なんでここに居るの!」

「ここは僕の家だからだ!とりあえず服を着ろ!」


おいおい…付き合ってる時もこんなイベント無かったぞ。

妹モノは好きだけど三次元の妹に興奮しちゃ僕は犯罪者になってしまう。


僕は急いでリビングに行き椅子に座る。

「おはよ…」

「葉月くん、おはよう」

「おはよう」


ゆずさんと父さんが挨拶を返してくれる。

用意されていた朝ごはんを食べていると

かすみがリビングにやって来た。

髪はまだほんのり濡れている。


「かすみちゃんおはよ」

「かすみ、おはよー」

「お父さん、お母さんおはよ!」


相変わらず上手い具合に擬態してるな…。

さっきの事口滑らせなきゃいいが。


「お兄ちゃんも!おはよ」

その顔は赤くなっており明らかにのぼせた訳ではないのがわかる。


「お…おはよう」

「そうだ!父さんたち今日から新婚旅行に

行こうと思うんだ。2人で大丈夫か?」

「いいんじゃないか?楽しんできなよ」

「私もオッケーよ」


僕達が食事をしていると父さん達は

大きなバッグを持って家から出ていく。


「お土産は期待しとけよ!」

40代のウインクはキツいからやめてくれ…。


かくして僕達は2人きりになってしまった。

ん…?2人きり!?

動揺してるのを悟られたら…。

そう思いながら横に座っているかすに目を移すと顔を赤くしている。


「かす…これは仕方のない事だ。ギャルゲのイベントじゃ無いんだから何も起こらない」

「はーくん?仮にも私は女の子よ?

しかも!さっきは裸を見られたわ」

「…ごめんなさい」

「いやよ!私、初めての身体は彼氏にって決めていたのに…!」


彼氏…か。

「ならまずはその横暴な性格を直したらどうだ?寄るものも寄らないぞ」

「はーくんには言われたくないね。

童貞ロリコンに人権はないの、分かる?」


そのまま僕達はお互いの愚痴をぶつけ合っていた。


「はぁ…拉致が開かない。とりあえず夕飯の買い出しに行ってくる」


葉月はそう言って財布を取って家を出る準備をする。

「待って!私も行く」


そそくさとかすみも準備を始め、

2人は家を出る。


「はーくんは料理できるのかしら?」

「愚問だな…!ト○コなら全巻読んだ」

「甘いわね…私は食○のソ○マよ」


お互い参考にならないレベルの知識をひけらかしあいながらスーパーへと向かう。


「それで?何を食いたい?」

「普通に人並みにはできるから」

「それは私もよ…」


2人とも片親の期間が長かったため料理をする

機会は自然と増えていく。

その結果、腕前的には高校生トップレベルにまでなっていた。


「ガララさんが食べたい」

「美食屋に依頼しろ…僕は手からギャリンギャリン金属音はならないから」


結局カレーになった。

理由は日持ちもするし2日目が美味いからと言うなんとも言えない理由だった。


家に帰るなり2人は台所に立つ。

手際良く具材を刻み、あっという間に完成した。

「隠し味はヨーグルトでしょ!」

「いいや…ここはリンゴだな」


「なんでだよ!王道が好きなんじゃないの?」

「はーくんだってロリコンでしょ!?

マイルドな口当たりが好きなんじゃないの?」


確かに2人とも相手が言っていることが正しい。

しかし、お互いの事をお互いとも考えた結果相手の好きなものを入れようとなった。


結局決まらなかったためリンゴとヨーグルトはデザートになった。


『いただきます』

「うまっ…」


僕が声を漏らすとかすはドヤ顔をして

こっちを見てくる。

いや、僕も作ったんだけど?


「確かに美味しいねこのカレー」


美味しい料理は箸が進むのが早い。

あっという間にカレーを食べ終える。


「私、先にお風呂入るわね」

「分かった、JKの風呂の水を堪能するとしよう」

「…やっぱりあと」


葉月は先にお風呂に入る。


「なんなの…はーくん」

「ちっとも変わってない…。少しくらい…

変わっててよ」

「ズルイよ…もう」


顔はパッとしないし勉強も運動も並。

なのに、はーくんといる時が一番楽しくて

笑っていられる。


「別れない選択肢…あったのかな」


意味深に呟いてTVを眺めていると葉月が上がってくる。

「はや!ちゃんと洗ったの?」

「生憎僕はシャワー派なものでね」

「風呂には浸かってないから安心しろ」

「どうした?入らないのか?」


「…は…入るわよ!」

かすみは慌てた様子で風呂へと向かう。



「全く…忙しないな」

「変わらないな。僕もかすも…」


冷凍庫からアイスを取り出して口に入れる。

付けっぱなしのTVを横目にソシャゲを開く。

「お?今日からロリイベじゃないか」


葉月のやっているソシャゲのイベントは


☆ドキッ!☆

合法ロリなら結婚しても大丈夫だよね!


なんとも狂気に満ち溢れた名前だ。

周回作業をして時間を潰していると風呂が開く音が聞こえた。

「あぁ…上がったのか」


〜かすみside〜

しまった…全部忘れちゃった。

パジャマどころか下着まで…最悪よ。


持ってきてもらう?嫌々…そんなの恥ずかしい。

ならば…!

かすみは意を決してバスタオル1枚でリビングへと出てくる。


「お…う、上がったの…か」

「せめて!パジャマ着て来い!」

「仕方ないでしょ?忘れちゃったの」

「そのくらい持ってってやるから」

「下着も忘れたの!」

「…oh」


言葉に詰まり変な息がこぼれる葉月。

急ぎ足でかすみは自分の部屋へと戻って行く。


「妹の身体に何を興奮してるんだ僕は…」

ドキドキとしている心臓を叩き落ち着かせようとする。

2人は付き合っている際…キスはしたものの

行為には至らなかったため耐性がない。


「ねぇ…私の部屋きてよ」

「え?お誘い?」

「バカじゃないの!違うわよ!」

階段から顔を出しながらかすみが言う。

「分かった…今行く」







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